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真実のおでん缶(前編)

2000年11月24日 12時01分更新

文● 矢部直治

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いま明かされる、衝撃の事実!!

天狗缶詰・企画課きっての伊達男、伊藤氏。彼はおでん缶にまつわる、ある重要なプロジェクトに深く携わっているのだ。詳しくは次回の後編をチェック!

――「おでん缶」はいつ発売したのですか?

「意外に古くてですね、15年ほど前になります。缶コーヒーやジュースなど、普通とは違う独自の製品を作ることで有名な某大手飲料メーカーさん(なんとなくワカるよね)から、「なにかこう、インパクトがあって、食べられるもの」というリクエストを受けましてね。いろいろ試作した結果、この商品が誕生したんです。
 本来はそのメーカーさんの自販機で専売するハズだったのですが、そのメーカーさんがコンビニ向けに出した某アイテムの売上げが伸びず、そちらの広告費を拡大することになり、きゅうきょ発売を無期限延期に(泣)。でも、ウチとしてはもう開発して、すでに缶を何万ケースも用意してあるワケですよ。こら、出さなシャレにならんと、業務用のルートでなんとか販売したイワクつきなんです」

――つまり、最初からドリンク自販機で発売することを念頭に開発された?

「はい、そのとおりです。ところが、我々は缶詰業者ですから自販機のルートに弱いし、大手の飲料メーカーさんは、自社のブランドで展開してるから自販機に「おでん缶」を入れてくれないワケです。そこでしかたないので、酒問屋さんや酒屋さんへ頼みにいきました。関西のほうの酒屋さんって、店内に立飲みコーナーがあって、缶詰をつまみに酒が飲めるんですよ。だから、サバの水煮やイワシの蒲焼と同じく、缶詰保存食的な感じで販売してもらってました」

――では、下手をすると、そのまま販売終了してしまう危険性大だったと。

「ええ。ただ、用意した数がとにかく膨大でしてね、幸いそう簡単には完売しなかったんです。そんな折、たまたまある自販機業者さん(自販機だけを貸し出して、中身は店主が好きなドリンクを入れられるというもの)が「おでん缶」の商品性を見込んでくれましてね。販売ルートを作ってくれたんです。で、そこの自販機に入れてもらってたんですけど、夏はさすがに売れないだろうと「おでん」を外したら「なんで「おでん缶」がねーんだよ!」と自販機が壊れるほどケリ入れられたとか、ものすごい反響があった。コレはイケる(かも)!と我々が手応えを感じた瞬間でしたね」

――初期ロットの「おでん缶」は、現行のものとは違うんですか?

「現行の極太缶になったのは4、5年前からですね。はじめはショート缶(缶コーヒーサイズ!)でした。中身はまったく同じなんですけど、こんにゃくが1本、ちくわが1本、さつまあげが2つで1本、つみれ2個の間にうずらの卵が入ってる1本と、計4本すべてに串がささってました。余談ですが、缶のサイズが小さいぶん、おでん種がぎっしりと詰まっており、こんにゃくを最初に食べないと、おでんが取り出せなかったそうです」

――ということは、おでん種のセレクトははじめから決まっていた?

「そうです。ただ、おでんの人気ベスト3はヒトによってまったく違うでしょ。いろいろリサーチして最大公約数を出したつもりなんですが、「ちくわぶ入れてくれ」とか「牛すじがないと売れない」とか、バイヤーさんや小売店の方からはいろいろ言われましてね。今のように知名度があがるまでには、ホント長い時間がかかりましたよ」

――秋葉原名物になってしまった感想をひとつ。

「なんていっていいのか、……正直当惑しております。イヤ、もちろん非常にありがたいことなんですけど、地元の大須や、大阪の日本橋では「おでん缶」は未確認なんですよ。何故?……というキモチはちょっとあります」

――あの……未確認って、自社製品を販売している場所を把握していないんですか!?

「「おでん缶」の販売ルートはきわめて特殊なんですよ~。扱っていただいている小売店はもちろんわかりますけど、どこの自販機に入っているかは我々でさえもつかめきれていないんです。日本全国、北海道から九州、沖縄にも売りましたけど」

――えっ、沖縄にも「おでん缶」上陸したのですか!?

「はい。ウチの九州営業所が働きかけて、那覇近郊の海沿いの町にあるコンビニで販売させていただきました。……今は取引がなくなってしまいましたが。ともあれ、自販機販売については不明ですが、現在では多くの都道府県に出荷してはおります」

――「アナタの町にもおでん缶」状態ですね。反響はいかがですか?

「おかげさまで上々です。山口県の某パソコンショップさんなど、わざわざご連絡して下さり、パソコンと一緒に店頭で販売していただいてますし。メーカー冥利に尽きるご愛顧をいただき、ホントうれしく思っています。……でも、今回あなたにはじめて打ち明けるのですが……実は「うす味 おでん缶」の生産は、もうストップしているんです……」

――えぇっ!?

<……以下、超緊迫の次号へ続く!>

矢部直治氏プロフィール
某小料理屋4代目若旦那 兼 バカ系体力派ライター。文章力はともかく、料理に関する知識だけは豊富(本人談)。



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