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紀伊國屋書店と米マイクロソフトが電子書籍で提携、紀伊國屋のサイトで販売

2000年11月01日 20時57分更新

文● 編集部 桑本美鈴

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(株)紀伊國屋書店と米マイクロソフト社は1日、電子書籍(eBook)事業で提携したと発表した。紀伊國屋書店はマイクロソフトの『Microsoft Reader』に対応した電子書籍を、同社のインターネット書籍販売サイト“BookWeb”上で販売する。

(株)紀伊國屋書店の高井省吉副社長(右)と、米マイクロソフト社の古川享バイスプレジデント

紀伊國屋書店が電子書籍を来春販売

今回の提携により、紀伊國屋書店はマイクロソフトよりデジタルコンテンツ技術である『Digital Asset Server(DAS)』の提供を受け、BookWebにDASを組み込む。DASはXMLの拡張言語で、知的所有権を管理するための言語“XrML(Extensible Rights Management Language)”を搭載している。これによりBookWeb上に電子書籍用店舗“eBook店舗”を新たに構築、2001年春英語版の電子書籍を、2001年中ごろには日本語版の電子書籍を販売する。

電子書籍の配信と課金処理は、同じくマイクロソフトの著作権保護技術『Digital Rights Manager(DRM)』を利用する。電子書籍を購入したいユーザーは、暗号化による鍵のかかった電子書籍をBookWebのサーバー上から購入/ダウンロードする。その後、ダウンロード用サーバーとは別に設けられているライセンスサーバーにアクセスし、ライセンス鍵を取得することで、電子書籍が読めるようになる。紀伊國屋書店は、同社の各店舗にキオスク端末を置き、店舗でも電子書籍を購入できるようにするという。

電子書籍の価格の詳細は未定だが、在庫管理や固定経費が必要ないため、ユーザーにメリットがある価格帯になるだろうとしている。紀伊國屋書店は、多くの電子書籍を集めるため出版社に協力を要請、すでに角川書店から申し出があったほか、そのほかの大手出版社とも調整を行なっているという。

『Microsoft Reader』日本語版は2001年中ごろに提供

ユーザーが購入した電子書籍は、Microsoft Readerで閲覧できる。Microsoft Readerは、フォント技術“Microsoft ClearType”を採用しており、液晶画面の解像度を改善し、画面上の文字をなめらかに表示できるのが特徴。読書専用のユーザーインターフェースを搭載しており、ツールバーやボタン、メニューバーがなく、画面上には通常、電子書籍しか表示されない。操作コマンドは必要時にポップアップ表示して利用する。電子書籍の表示のほかに、検索機能や注釈の挿入、目印用のマーカー表示といった機能を搭載している。
Microsoft Readerの英語版は、マイクロソフトのウェブサイトから無料でダウンロードできる。日本語版は現在開発中で、提供時期は2001年中ごろ。また、PocketPCでも利用できるようになるほか、将来的にはMicrosoft Readerを搭載した専用ビューワーも登場するという。

紀伊國屋書店のBookWebは、'96年10月に開設された書籍販売サイト。会員制の個人向け販売サービス、大学/企業向け販売サービス、店頭在庫の取り寄せサービス、海外向け販売サービスを行なっている。書籍データベースは、和書が150万タイトル、洋書が210万タイトル。今回の提携により、これらのデータベースに電子書籍コンテンツが追加されることになる。現在の会員数は20万人で、1日のアクセスは40~50万ページビュー、実際に書籍を検索/注文するユーザー数は1日で3~4万人にのぼる。受注高は月間3億6000万円。紀伊國屋書店は今回の提携により、総合コンテンツ販売サイトとしての事業拡大を図るとしている。

「“Amazon”の登場は歓迎」と紀伊國屋書店副社長

本日都内ホテルで行なわれた発表会で、紀伊國屋書店の副社長である高井省吉氏は、電子書籍事業への取り組みについて、「われわれは転換期事業をやろうとしている。現在収益の見通しはたっていないが将来確実に電子書籍の流れは出てくる。遅れると技術やノウハウが蓄積できないため、他に先んじてやっていく。書店が事業を行なうので、出版社もコンテンツを提供してくれる。文化に貢献するという意味でも価値のある事業だ」と説明。また、マイクロソフトと提携した理由について、「Microsoft Readerは従来のシステムに比べインターネット上での扱いが非常によく、ライセンス管理も徹底しているため」と述べた。

本日、米アマゾン・ドット・コム社が日本版ウェブサイト“Amazon.co.jp”を開設すると発表したことに対しては、「日本の書籍についてはわれわれのほうが先行している。インターネットで売れる書籍と店頭で売れる書籍は同じであり、書籍販売サイトを作るのは書店を作るのと同じだ。膨大な投資がかかるだろう。大変だろうと思うが、市場が拡大するという意味でAmazonに出てきてもらうことは歓迎する。敵対的に排除する考えは持っていない」とコメントした。

試作機の専用ビューアーを手にする米マイクロソフト社バイスプレジデントの古川享氏。「次世代の書籍流通の在りかたを考え、事業提携するというのが今日の発表。商売につながる確実な事業にしたい」
電子書籍専用ビューアーの試作機(英語版)。「電子書籍を液晶画面で読むには、フォントをきれいにするだけではだめだ。Microsoft ClearTypeは、カラー液晶技術を使って白色をきれいに出し、滑らかな文字によるやわらかな表現を可能にしている」(古川氏)

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