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EU、ヨーロッパの中小企業の技術を紹介するイベントを開催

2000年10月24日 20時56分更新

文● 編集部 佐々木千之

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欧州連合(EU)の代表で構成される欧州委員会の駐日代表部は24日、都内のホテルにおいてEU加盟国の対日輸出促進を目的とした企業向けの展示商談会“EU Gateway to Japan”を開催した。EU加盟12ヵ国(※1)から28社が来日して、自社の製品やサービスを日本企業に売り込んだ。

※1 オーストリア、ベルギー、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、アイルランド、イタリア、ルクセンブルグ、オランダ、スウェーデンの12ヵ国。

広間に各社のブースが散らばっており、来場者は自由に説明を聞いたり、商談に入ったりしていた。基本的には英語によるコミュニケーションだが、通訳もほとんどのブースについていた

EU Gateway to Japanは、'97年から2000年まで4年間にわたり行なわれる第2次対日輸出促進キャンペーン(第1次は'94年~'96年)で、情報通信技術、食品・飲料、アウトドアライフ・娯楽設備、医療福祉機器など、9つの業種に分かれそれぞれ数10社ずつ“使節団”の形で来日している。これらの企業は日本進出についての戦略を持ち、長期的な計画を表明していることなどを選考基準として選ばれる。今回来日したのは情報通信技術使節団で1年ぶり。第2次キャンペーンの4年間全体では34回の商談会やセミナーが予定されている。

情報通信技術といっても、出展企業の内容は児童向けソフトから企業のeコマースシステムまで多岐にわたる。そのうちいくつかを紹介する。

農業向け自動気象記録装置

オーストリアのPessl Instruments(ペッスル・インストゥルメンツ)社が紹介するのは、農場・農園やゴルフ場などに設置して、気象データを自動的に収集するモニター装置『μMETOS』。風速、降雨量、気温、湿度、日照量、土壌の温度、土壌の湿度などを記録できる。装着するセンサーによりいくつかの製品があるが、いずれも乾電池でおよそ1年間動作するという。データは液晶ディスプレーに表示することもできる。また、オプションで赤外線ポートを装着して、PDAにデータを送ったり、セルラーホンアダプターを経由して、無線でデータ収集が行なえるという。特定の場所、特定の作物の気象データが得られるため、病害虫の予測に役立つとしている。日本では、青森県でリンゴ農家が導入しているほか、一部のゴルフ場でも利用されているという。

『μMETOS』画面中央右手の上部が白、下部が透明のプラスチック円筒が本体。風速センサー、降雨量センサーも付けたフルバージョン。1台あたりの価格はシステムによるが200ドル(約2万1000円)から
本体の透明部分には小型の液晶ディスプレーがあり、記録情報をそのまま読むこともできる

ホスティングサービスと組み合わせたeコマースサーバーシステム

デンマークのADB Power社は、インターネット上にショップを開くためのソフトウェア『shopServer』を展示。小型のシンプルなショップから、チェーンを持つ大きなeコマースサイトまでを、プログラミングの知識をほとんど必要とせずに構築できるという。Windows NT上で動作するこのソフトウェアの価格は20万円(予定価格、ユーザー数無制限)、オプションのクレジットカード決済システムも7万5000円(予定価格)で、この種のソフトウェアとしては低価格。これには理由があり、このショップシステムはバックエンドデータベースとして同社が提供する、データベースサーバーのホスティングサービスを利用する必要がある。このサービスの料金は3ヵ月分で5万円(予定価格。データベースサーバーであるSQL Serverのライセンス料は別途必要)となっている。イギリスの石油元売り会社ブリティッシュ・ペトロリアム社などが顧客で、大規模なシステムにも十分対応できるという。

『shopServer』の管理者用画面。すでに日本語化作業を開始しているという
ADB Power、マネージングディレクターのオーレ・ファノー(Ole Fanoe)氏

軍も使用するHDDデータ消去プログラム

フィンランドのBlancco(ブランコ)社は、『data cleaner』という、HDDデータの消去プログラムを展示。フィンランドで、患者データがHDDに入ったままのパソコンが中古として売られるという事件が起きたのをきっかけに開発したという。同社オリジナルのOSを利用し、フロッピーディスクから直接起動してHDDにローレベルコマンドによりアクセス、メニューに従っていくだけでHDDにランダムなデータを書き込む。書き込みの回数も軍の仕様に従っており、米国防総省の推奨する7回の上書きにも対応している。フィンランド軍で大量に採用されているほか、米証券会社のゴールドマン・サックス証券が世界各国で使用しているという。

『data cleaner』の起動画面。メニューは数ヵ国語に対応しているが、日本語対応はまだ。米国では数量にもよるが30ドル強(約3100円)程度で販売されている

音楽スタジオをエミュレートする音楽ソフト

フランスのArturia(アルチュリア)社が展示していたのは、音楽スタジオをエミュレーションする作曲ソフト『STORM』。アナログシンセサイザー、リズムマシン、ミキサー、シーケンサー、エフェクターなど、20数種類の機器の中から好きなものを選んで“スタジオ”を構築し、そのスタジオを使って作曲を行なうというソフト。一度もそうした機器での作曲経験が無くても、ゲーム感覚で作曲が行なえるという。欧米の音楽雑誌で非常に高い評価を得たとしている。現在ソフトウェアの日本語化とディストリビューターを探しているという。日本円では2万円程度を予定している。

『STORM』のスタジオ画面。アナログディスクの“スクラッチ”もエミュレートする
異なる機器を選択することで、まったく違ったスタジオが構築できる

ウェブサイト向け3D画像スキャニングシステム

ドイツのDimension 3D-Systems社は、デジタルカメラを使って立体物をスキャンし、ウェブで自由に回転させて表示できる3DのCGデータに変換するシステム『Got 3D?』を展示。ソフトウェア、デジタルカメラ、回転するスキャニングステージ、ライトのシステムでおよそ45万円程度という。3Dデータ化したい立体物をスキャニングステージに置いて、ソフトを起動すると、自動的にステージが回転して、様々な角度から目標を撮影、その後ソフトウェア処理によって、テクスチャーを貼り付けた3D CGがほぼ自動的に完成する。プラグインソフトを利用するか、あるいはJavaアプレットを利用することで、Internet ExplorerやNetscape Navigatorで見ることができるとしている。

自動的に回転させてデータを撮影しているところ
取り込まれた画像はソフトウェア画像処理によって、3D CG化される

3D CGによるエージェントを提供

ドイツのvista* new media社が展示していたのは、eコマースサイト向けのバーチャルエージェント『VirtualFriend』。ISPや企業向けのシステムで、ウェブ上で3D CGによるエージェントが、ウェブを見に来たユーザーと音声とアニメーションにより対話することができるというもの。このエージェントはあらかじめ作成したデータベースに基づく、人工知能技術によって、顧客の問い合わせに対応することができるとしている。“VisualEmotions”という機能により、“感情”を備えた対話が可能という。価格は1万2000ドル(約120万円)同社は日本で3D CGキャラクターの作成に人気があることを知り、3D CGキャラクター作成ソフトの展開も考えているとしている。

同社により作成されたバーチャルエージェントの例
vista* new media社長であるアレクサンドラ・フジンスキー(Alexandra Fuzinski)氏。背景にあるのは同社が提供しているVirtualFriendのキャラクター

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