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【NAB東京セッションレポート】BSデジタル放送各社の戦略が明らかに

2000年10月23日 10時07分更新

文● 浅野純也

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18日と19日の2日間、都内の早稲田大学総合情報センター国際会議場において“第4回NAB東京セッション”が開催された。NAB(National Association of Broadcasters)は全米放送事業者協会のことで、毎年4月に世界最大の放送機器展を開催している団体。この東京セッションは日米からゲストを招いて行なわれるセミナーであり、今年で4回目の開催となる。

NAB東京セッション1日目

今回のテーマは“デジタル放送とネットビジネス-インターネットはテレビの敵か!?-”。放送開始目前に迫ったデジタル放送の話題を中心に、講演とパネルディスカッションが開催された。

初日の18日午前中は米国からゲストを招いて、米国におけるデジタルテレビの現状についての講演が行なわれた。この中で、米国ではすでにセットトップボックスを用いてテレビ画面にオリジナルの情報レイヤーを被せることで、EPG(電子番組表)や電子メール、ウェブブラウジング、ゲーム、ショッピングなどのサービス提供が始まっており、米アメリカオンライン(AOL)社の“AOLTV”、米ウェブ・ティービー・ネットワークス社の“WebTV”米WorldGate Communications社の“TVGateway”、米OpenTV社の“OpenTV”、米リベレート・テクノロジーズ社米Wink Communications社の“Wink”、米マイクロソフト社、米TiVo社米ReplayTV社などが参入していることなどが報告された。

これらはDTV(Digital TV)やiTV(Interactive TV)などと呼ばれているという。またAOLTVでサービスを開始しているAOLは、AOLジャパン(株)の北原氏が講演を行ない、AOLが手掛けるものはすべてコンシューマに向けたオンラインサービスであること、ハードウェアは問わないこと、そしてシニア層もしっかりフォローしていくことなどを話した。

午後はBSデジタル放送を担当する民放各局と(社)日本放送協会(NHK)が参加したパネルディスカッションが行なわれた((株)フジテレビジョン(株)東京放送(TBS)は欠席)。この席上で各社トップから具体的な放送コンテンツについて言及があった。NHKが“ベストオブNHK”と言うべき選りすぐった番組を並べると宣言したのに対し、日本テレビ放送網(株)(日テレ)は巨人戦の弾力的な活用を前提にした総合編成、全国朝日放送(株)(テレビ朝日)は情報番組をメインに据えて毎晩ドキュメンタリーを並べるといい、(株)テレビ東京(株)日本経済新聞社との関係を前提に経済ニュースやアニメーションを中心に編成することを明らかにした。米国ゲストのNAB技術評価部長のデソン氏は普及の行方を決めるのはコンテンツ次第と意見を述べるとともに、本格的に立ち上がろうとしている日本市場に注目しているとも語った。

BSデジタル放送業者によるパネルディスカッションにフジテレビとTBSが欠席したことはすでに競争が始まっていることを意味している

NAB東京セッション2日目

NAB東京セッションの2日目は、BSデジタル放送で独立系データ放送を事業化する7社の代表が集まってパネルディスカッションが行なわれた。いまだ全容がよく見えない独立系データ放送について意見交換が行なわれた。

独立系データ放送会社のトップが顔を揃えたパネルディスカッションの様子

天気予報専門の(株)ウェザーニュース、2.4Mbpsの豊富な帯域を400kbpsと600kbpsに分割して販売、すべてクライアントに任せるという(株)デジタル・キャスト・インターナショナル(デジキャス)、ショッピングなどをメインにした日本ビーエス放送(株)(株)時事通信社などの株主を持ちニュースに注力する日本メディアーク(株)(株)角川書店(株)毎日新聞社のコンテンツを活用する(株)メガポート、女性をターゲットにインタラクティブ性を重視する(株)メディアサーブなど各社の特徴が紹介された。また収益を生み出すための各社のビジネスモデルについて、将来のデータ放送のあり方などの話題も取り上げられた。民放やNHKなどテレビ放送を行なう事業者はテレビ放送と連動したデータ放送を行なうため、クライアントの獲得など有利な点もあるが、独立系の場合はそれが難しいこと。広告に頼るだけではペイしないことなど厳しい状況にあることなどが指摘されていた。

確かに56kbpsでダイアルアップしているパソコンユーザーから見れば、データ放送に使われる1Mbpsという帯域は広く見えるかもしれないが、実際にはデータの送り方やコンテンツの作り方によって、データがキャッシュに入るまでに数十秒待たされることもあるらしいし、ビデオゲームのようにハードウェアの特性を活かしたコンテンツが出てくるには時間がかかることを考えると、放送開始当初から魅力的なデータ放送が行なわれるかどうかは微妙なところだ。現時点ではあれもこれもできると謳ってはいても実際にできないケースもあるかもしれない。たとえば2400bpsのモデムによるアップリンクの接続などだ。サーバ側でどれほどのアクセスを想定しているのか不明だが、アクセスが殺到したときの処理などにも不安は残る。そして将来的にはHDDを搭載したチューナーの開発も見えているいま、現行チューナーでのデータ放送が中途半端なものに終わらないことを願いたい。

アットホームジャパンの廣瀬氏。CATV接続の優位性を強調した。

このあとCATV戦略についてアットホームジャパン(株)社長の廣瀬氏、テレビとPCとゲームの融合についてソニー(株)執行役員の鶴見氏、ネット家電とインターネットというテーマで(株)東芝の社内カンパニーであるiバリュー クリエーション社社長の香山氏、松下電器産業(株)マルチメディア技術担当取締役の櫛木氏などの講演が行なわれた。

ソニーの鶴見氏は、ソニーが持つアセット(資産)の価値を最大限に高めることがターゲットと語った

廣瀬氏はCATV経由のインターネットがコスト的にもパフォーマンス的にも最適な解であることを強調、今後一般家庭だけでなく企業などへも手を広げる戦略を表明した。鶴見氏はソニーが手掛けるプラットフォームであるPCとゲーム機、携帯機器、テレビ間の統合を提唱、これまではPCとゲーム機のように2つの組み合わせだったものが、3つあるいは4つと複合化して、新しいバリューを生み出すようになると語った。また東芝の香山氏は、BSデジタル放送におけるビジネスの概要について詳細に紹介。特にデータ放送用の機器について東芝が高いシェアを保持していることを強調した。櫛木氏は松下電器の総合的なマルチメディアへの取り組みを紹介したほか、先日米国で発表した“Internet Home Alliance”についても紹介していた。

MPEG-4技術で先行する東芝の香山氏。MPEG-4による双方向技術などを紹介した

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