このページの本文へ

【WORLD PC EXPO 2000 Vol.21】インテルのゲルシンガー副社長がピア・ツー・ピアコンピューティングをテーマに基調講演

2000年10月20日 19時42分更新

文● 編集部 佐々木千之

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

東京・有明のビッグサイトで開催中の“WORLD PC EXPO 2000”において20日、米インテル社のパット・ゲルシンガー(Patt Gelsinger)副社長が同社の構想する分散コンピューティング環境“ピア・ツー・ピア コンピューティング”をテーマに基調講演を行なった。基調講演は、8月に米国で開催されたインテル開発者会議(IDF)でクレイグ・バレット(Craig Barrett)社長兼CEOが行なったものとほぼ同じ内容だった。

米インテルのゲルシンガー副社長

インテルの言うピア・ツー・ピア コンピューティングは、8月のIDFで公にしたもので、主に企業内のコンピューター資源を有効に活用するための手段として、個々のコンピューター同士が直接データやサービスを相互に交換できるようにするというもの。これにより、ディスクドライブなどのストレージを仮想的に1つにまとめて扱えたり、あるコンピューターのディスク上のファイルを共有したり、複雑なデータ処理をネットワークで接続された多数のコンピューターに分散させて処理できるようになるというもの。

「将来は多数のスーパーコンピューターに匹敵するだけのストレージやプロセッサー処理能力が世界中で余るようになる。ピア・ツー・ピアのコンピューティングモデルなら有効に活用できる」という

ゲルシンガー副社長は、「ピア・ツー・ピアのコンピューティングモデルは将来必ず普及する。インターネットが爆発的に普及する引き金となったウェブブラウザー『Mosaic』と同じ働きを、音楽ファイル共有システム『Napster』『Gnutella』、ファイル転送システム『Freenet』がはたす」「クライアント/サーバーモデルとピア・ツー・ピアモデルは共存し、補完しあう存在だ。今は思いつかないようなすばらしいアプリケーションが2、3年後には登場するだろう」という。

講演では、現在研究されているているピア・ツー・ピアシステムとしてピア・ツー・ピア接続されたエージェントが互いに情報を交換し、ウイルスの識別を行なうという研究が紹介されたほか、2つのデモンストレーションが行なわれた。

1つはバージニア大学の研究から生まれた『LEGION』というシステム。現在は米Applied Meta Computing社という会社を設立して、そこが扱っているという。これは複数のOSが混在する異機種環境で利用でき、接続されたコンピューターのストレージやファイルを共有できる。米ボーイング社や東京工業大学で利用されている。

米Applied Meta Computing社の分散コンピューティングシステム『LEGION』を使い、複数台のコンピューターのストレージを一元的にアクセスするというデモ

もう1つは米United Device社の分散データ処理システム。処理したいデータを、分散処理を管理するコンピューターに送ると、その管理コンピューターが処理するデータをいくつかの小さな“ジョブ”として、接続された複数のワークステーションに送り、それぞれのワークステーションからの処理結果を統合して、最終的な結果を得るというもの。ヒトゲノムの解析を行なっている米Insight Genomics社は、スーパーコンピューターシステムの代わりとしてこのシステムを利用しているという。

米United Device社が開発した、分散データ処理環境によるヒトゲノム解析のデモ。左が1台のパソコン、右が複数台のパソコンで分散処理を行なっているもの。画面ではわかりづらいが、右側の方が処理がずっと速い

またインテル社内でも、新世代のマイクロプロセッサー開発のため、'80年代に用いていたメインフレームシステムの代わりに『NetBatch』という分散処理システムを10年前に開発して利用しているという。このシステムによって、最新のメインフレームにアップグレードし続ける必要が無くなり、10年間で10億ドル(約1080億円)が節約できたという。

インテルのピア・ツー・ピア コンピューティングモデルは、いくつかの実例はあるものの、まだ広く利用されるまでには至っていない。広く使えるピア・ツー・ピアシステムを構成するのに必要なプロトコルの共通化を目指して、インテルは他社と共同で“Peer-to-Peer Working Group”を結成している。この12日に初の会合を開いたが、70社以上の企業から参加があったとしている。

ゲルシンガー副社長は、「革命は現在進行中だ。インテルはピア・ツー・ピアを次世代のコンピューティング環境として育てていきたい」と締めくくった。

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン