日本テキサス・インスツルメンツ(株)(以下日本TI)は3日、インターネットオーディオ製品(※1)向けに、同社のDSPを核とした次世代のチップセット『TMS320DA250』を発表した。この製品の特徴や今後の展開について、日本TIのASP事業部 ネットワークオーディオ部の唐木志延夫部長にお話をうかがった。
※1 日本TIでは、いわゆるMP3プレーヤーやシリコンオーディオ製品を“インターネットオーディオ製品”と呼んでいる。日本TI ASP事業部 ネットワークオーディオ部の唐木部長 |
インターネットオーディオはDSPの良さが最も生かせる分野だと考えています。将来絶対に伸びると言うことで、会社としてもかなりの人材と投資を行なっています。日本のお客様では今回発表されたDA250の前野製品である、TM320 5000シリーズの採用実績があります。これは単4乾電池1本でも十分に動作できるということと、CODEC(コーデック)(※2)の部分がソフトウェアソリューションなので、MP3とかATRAC3(※3)とかAAC(※4)とかWMA(※5)だとかさまざまなフォーマットにすべてソフトウェアで対応できるというのが売りになっています。
※3 ATRAC3:ソニーが開発した圧縮方式。MDで使われている圧縮方式の圧縮率を高めたもの。
※4 AAC(Advanced Audio Codec):独フラウンフォーファー社が開発した圧縮方式で、MPEG-4の音声部分として使われている。
※5 WMA(Windows Media Audio):マイクロソフトが開発した圧縮方式。
TIのDSP向けに提供されているCODEC。現在、エンコードについてもAAC、MP3、ドルビーデジタルについては可能 |
DA250にはUSBのインターフェースも持たせてありますので、USBコネクタに直結可能です。ディスプレーとLCDもコントロールできます。コア電圧は1.1Vで、200MIPSの性能です。メモリーカードはSDカード2枚かメモリースティック2枚まで対応できます。それぞれの認証アルゴリズムも内部に持っています。もちろんマジックゲートなど認証システムにも対応しています。
DA250内部のブロック図。“将来のシステム”とあるのは発表前に作成された資料であるため |
この17mWという数値は今世の中に出ている製品では最低です。一番低消費電力といわれている三洋電機さんのMP3用チップでも22mWあります。
コンペティターとしては米シーラス・ロジック社と独Micronasグループの製品がありますが、それらの製品と比べても70パーセント低消費電力です。
単に低消費電力といっても、TIの場合は単にプロセスを改善するのではありません。内部はいろいろなモジュールが組み合わさっているわけですが、使うところだけ動かす、使わないところは停めるという仕組みです。クロックの供給も細かく制御し、常にたくさんのモジュールが休んでいるという状況になるようにしています。電源の配線もモジュール単位でカットできるようになっています。これは携帯電話で培った技術です。TIオリジナルの部分もあり、たくさん関連特許を出しています。プロセスそのものももちろん改善します。
128kbpsの典型的なMP3ファイルを再生させた場合の各システムの消費電力比較グラフ |
セットメーカーに聞いてもなかなかどういったものを作ったらいいと言う意見は出ないのでこういったフォーカス・グループからの意見を基に設計を行ないました。
インターネットオーディオだけ見ますと、今年は世界で年間300万台、2003年には2300万台が出荷され、いずれいまのCDとアナログカセットを合わせた1億5000万台まで伸びると言われています。成長カーブは今までのデジタル機器の中で最も急速です。このマーケットで主導権を撮りたいと考えています。
現在発表されている、TIのDSPを使用したインターネットオーディオの製品例 |
世界の民生用のインターネットオーディオ機器メーカー上位10社のうち、8社まではTIのものを使っています。マルチフォーマット対応でセキュリティーにも対応している製品なら、TIのDSPが使われていると思ってほぼ間違いないです。
DA250は、コア電圧1.1V時で200MIPSの性能を持っていますが、さらにDA250の先の製品と言うことでは、800MIPSのものまで予定されています。なぜこれほどの性能が必要かというと、なにが要求されるかわからないからです。例えばBluetooth機能を入れてくれとか、IP通信機能を入れてくれとか。モデムを入れてくれとか。そういうものに対応するためにDSPの能力を上げる必要があります。
TIのDSPを使ったインターネットオーディオ製品に表示してもらう予定という、DSPのロゴ |
価格もDA250まで機能を入れ込んでいながら10ドル(約1090円、25万個ロット時)は自信があります。今まではDSPだけで周辺を含まず10ドルでしたから。メモリーカードを使うものでしたらいろいろなことに使えます。インターネットオーディオだけではもったいないですよ。このDSPは。
(10月4日、日本TI本社にて)