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英CSR、1チップ構成のBluetoothシステムを来月から量産出荷

2000年09月26日 23時52分更新

文● 編集部 佐々木千之

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英国の半導体メーカー、ケンブリッジ・シリコン・レディオ社(※1)は26日、CEOの来日に合わせて記者会見を行ない、同社の1チップ構成のBluetooth(※2)製品『BlueCore01(ブルーコアゼロワン)』を来月に量産出荷開始すると発表した。同時に100パーセント出資による日本法人“シーエスアール株式会社”(※3)を9月19日付で設立したと発表した。

※1 ケンブリッジ・シリコン・レディオ社(Cambridge Silicon Radio、略称CSR)は、無線データ通信のアプリケーションやサービス、半導体製品を行なっている英ケンブリッジ・コンサルタンツ(Cambridge Consultants)社から、Bluetooth半導体チップの開発・設計を専門に行なう会社として'98年に分離した半導体のファブレスメーカー。

※2 Bluetooth(ブルートゥース)は、無線LAN規格であるIEEE802.11bと同じ、2.4GHz帯域の電波を使用する近距離データ通信技術の名称。米スリーコム社、スウェーデンのエリクソン社、米IBM社、米インテル社、米ルーセント・テクノロジー社、米マイクロソフト社、米モトローラ社、フィンランドのノキア社、(株)東芝が中心となって普及を進めている。主に半径10m程度の距離内での利用が想定されており、データ通信速度は723.2kbpsで、802.11bなど他の無線通信技術に比べ処理が軽く、低消費電力のシステムが可能とされる。

※3 本社東京都三鷹市、資本金は1000万円、代表塚越明義氏。

BlueCore01は、'99年秋のコンピューター関連のトレードショー米Comdexにおいて発表された製品で、CMOSの0.35μmプロセスによって製造されているという。今回記者会見で挨拶した英CSRの社長兼CEOであるジョン・ホジスン(John Hodgson)氏によると、「BuleCore01の特徴は、1チップソリューションであることとローパワーであること。他社が現在提供しているBluetooth製品は3ないし4チップ構成となっているものばかりだが、BlueCore01は1チップで提供する。特に他社はRF部で苦労しているようだが、当社はケンブリッジ・コンサルタンツ時代から手がけており、IP(知的資産)も多く保持していることが強み。RF部が1つのシリコン上にあることは、開発者の労力も大幅に軽減できるメリットもある」

英ケンブリッジ・シリコン・レディオ社のジョン・ホジスン社長兼CEO

「現在はUSBやシリアルインターフェースと、プロトコルスタック部分(フラッシュメモリー)が外付けとなっているが、来年出荷予定のBlueCore02ではそれらも内蔵する。このBlueCore02においては、プロトコルスタックをマスクROM化することで数十万個レベルでの受注に対しては、1つ5ドル(約530円)程度で提供できる見込みだ。この5ドルはチップだけの値段ではなく、システムとしての価格だ。5ドルは業界ではBluetooth普及のための“マジックナンバー”といわれているが、当社はCMOS半導体により構成していることから実現できる価格だと考えている」と、BlueCoreファミリー製品に対する自信を見せた。

BlueCoreファミリーは、まもなく量産出荷にはいるBlueCore01の後、2001年6月の出荷予定のBlueCore02、2001年11月の出荷予定のBlueCore03と続く。BlueCore02では、01の0.35μmプロセスから一気に0.18μmプロセスに、さらに03では0.12μmプロセスへの移行が予定されている。現在のBlueCore01では345平方mm(23×15mm)必要な実装面積が、02では64平方mm(8×8mm)で済むとしている。

シーエスアール(株)代表取締役社長の塚越明義氏

同社は、2001年にBlueCore01とBlueCore02合わせて数百万ユニットの出荷を予定している。日本はBluetooth関連では世界で最も先を進んでおり、「数百万ユニットのうち半数くらいが日本になるのではないか」(ホジスン氏)という。日本市場では、コーンズ・アンド・リミテッド社と(株)マクニカの2社を代理店として営業を行なってきたが、これら代理店や顧客へのサポートや提携の強化を目指し、日本法人を設立したという。具体的な社名は明らかにされなかったが、日本企業向けに大口の商談も進んでいる模様だ。

Bluetoothは、もうすぐ製品が登場し携帯電話やPDA、ノートパソコンがつながるようになるといわれながら、普及がもうひとつ進んでいなかった。やっと最近になって東芝やIBM富士通などがPCカードベースの製品を発表したが、さまざまな機器に内蔵されてこないと、Bluetoothの利点は見えてこない。普及が進まなかった理由の多くは、各社が開発しているBluetoothチップの開発の遅れが指摘されている。ケンブリッジ・シリコン・レディオが順調に量産出荷をする事ができれば、来年春ないし夏に発表されるパソコンや携帯電話で、一気にBluetoothのサポートが進むことも考えられる。

『BlueCore01』チップ(上)と、それを使ったBluetoothモジュールサンプル
Bluetoothモジュール/アプリケーション開発者向けのプラットフォーム製品『CASIRA(カシラ)』日本でも数十社から引き合いがあるという
BlueCore01を使った、栃木ミツミ(株)のBluetoothモジュール。栃木ミツミ以外にアルプス電気(株)、富士通メディアデバイス(株)にもチップを供給している

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