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紛争処理の開始を1ヵ月後に控え、JPドメイン名紛争に関する講演会が開催

2000年09月22日 18時14分更新

文● 若菜麻里

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日本弁護士連合会(日弁連)と弁理士会とが共同運営する工業所有権仲裁センターおよび、(社)日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)は20日、都内で“ドメイン名紛争に関する講演会”を開催した。

JPNICでJPドメイン名担当理事、坪俊宏氏

JPNICでは、JPドメイン名に係わる紛争処理を10月19日に開始する。その際に、工業所有権仲裁センターは実際の紛争処理機関として機能する。

同処理は、ドメイン名を先取りして、商標権を持つ人に対して高額で転売しようとするなど、不正な目的によるドメイン名の登録や使用を防ぐためのもの。権利者の申立に基づき、工業所有権仲裁センターは裁定を行なう。結果がドメイン名の取消や移転の場合は、JPNICがその処理をする。講演会では、処理の開始に先立ち、弁護士や弁理士、一般の人を対象に、紛争処理方針および手続規則について、具体的な説明が行なわれた。

商標にからんだドメイン名のトラブルが増える可能性

まず、JPNICでJPドメイン名担当理事を務める坪俊宏氏は、ドメイン名について解説した。

JPNICでJPドメイン名担当理事、坪俊宏氏

ドメイン名は、メールアドレスでは例えばascii24@ascii.co.jpの中のascii.co.jpの部分を指す。またhttp://www.ascii.co.jp/というホームページのURLでは、www.ascii.co.jpの部分を指す。現在、国内では、企業を表わすco.jpや、政府関連を表すgo.jpなどのドメインがある。漢字やカタカナ、ひらがなを含む日本語ドメイン名や、これまで1組織に1ドメイン名としていた登録数の制限をなくすなど、汎用JPドメインをJPNICでは検討中だ。国際的にも、“.NEWS”や“.MUSIC”といった新しいTLD(トップレベルドメイン)の採用がICANNで検討されている。そのような背景から、今後、商標にからんだドメイン名のトラブルが増える可能性があることを示唆した。

統一ドメイン名紛争処理の申し立ては2892件

JPNICの運営委員、久保次三氏は、統一ドメイン名紛争処理方針(UDRP:Uniform Domain Name Dispute Resolution Policy)の現状を紹介した。

JPNICの運営委員、久保次三氏

UDRPは、国際的な非営利民間団体のICANNが2000年1月から本格的に開始した制度で、対象になるのは、“.com”、“.org”、“.net”。認定紛争処理機関は、世界知的所有権機関(※1)のWIPO(World Intellectual Property Organization)、全米仲裁協会(NAF)など、今のところ4団体だ。9月1日時点で、2892件の申し立てがあり、すでに1760件について裁定が下っている。このうちの約8割について、移転または取り消しという裁定結果になっている。移転の裁定が下りたもので、日本企業に関連するものは、bungeishunju.com、gameboy.com、hitachi2000.net、postpet.net。pokemon2000.comなどがある。

また、fuji.com、fujiservice.comなどは、「ありふれている」(久保氏)ため、申立理由なしという裁定結果だったという。最後に久保氏は、「これらの情報は、サイトで全てオープンにされている」と説明した。

※1 世界知的所有権機関(WIPO):'67年に設立されたジュネーブに本拠をおく国連の専門機関。175ヵ国が加盟。特許、著作権などの知的所有権に関するルール作り、情報普及、国際登録制度の管理などを扱う

JPドメイン名紛争処理方針で適用対象となる紛争

弁護士の松尾和子氏は、今回のメインである、“JPドメイン名紛争処理方針及び手続規則”について説明した。同方針と規則は、JPNICが7月19日に公開したもの。策定にあたっては、UDRPに基礎を置き、これに忠実である一方、日本の法概念及び法感覚に適合するように調整、努力した。

弁護士の松尾和子氏

JPドメイン名紛争処理方針では、適用対象となる紛争として、次の3項目全てにあてはまることと定めている(第4条a)。

(i)登録者のドメイン名が、申立人が権利または正当な利益を有する商標その他表示と同一または混同を引き起こすほど類似していること

(ii)登録者が、当該ドメイン名の登録についての権利または正当な利益を有していないこと

(iii)登録者の当該ドメイン名が、不正の目的で登録または使用されていること

紛争の処理は、“パネリスト”と呼ばれる専門家によって、“裁定”される。裁定とは、仲裁とは異なり、裁判所の判決と同一の効力はない。しかし裁定結果により、JPNICは、ドメイン名の移転や取り消しなどの手続きに入ることができるとしている。

処理手続きは、迅速と廉価が特徴という。当事者が紛争処理機関に出向くことなく書類審査を原則としており、申立から裁定の結果が通知されるまでの期間は、原則的には最長で55日だ。パネリストは、申立に基づいて、1名または3名。処理手数料は、パネリスト1名の場合18万円、3名の場合36万円としている。松尾氏は、元になっているUDRPでは、英文でどのように定めているのか、日本語化したときに、たとえば、「商標その他表示」とは何を指すのかなど、主な項目について、丁寧に説明した。

その他、講演では、具体的な申立の方法や、料金の納付、パネリストの指名などについても紹介された。

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