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【INTERVIEW】過剰なディスカウントは危険――HMV(前編)

2000年09月19日 21時48分更新

文● アスキーWeb企画室 根岸智幸/伊藤咲子

この夏、年商10億円宣言(※1)をしたHMVジャパン(株)のEコマース事業。“www.hmv.co.jp”のサービス開始から約1年、約70万アイテムを網羅した巨大な商品データベースと送料無料サービスで、数あるオンラインCDショップの中でも人気を集めている。今回編集部では、デイビット・テリル(David Terrill)Eコマース本部長に同社のEC事業の概況を訊いた。

※1 *2000年度(2000年5月~2001年4月)

デイビット・テリル氏。'73年にHMVに入社し、HMV1号店のオックスフォード・ストリート店などで勤務。英本社マーケティングマネージャーなどを経て、'96年に商品部ディレクターとしてHMVジャパンに異動。Eコマース本部長に就任したのは約半年前のこと

「店舗並みのサービスを実現する手段ではない」

HMVジャパンがオンラインショップを開設したのは、昨年9月30日のこと。「週あたり5パーセントの売上げ増」(広報)という成長には、アイテム数の増強をはじめ、今年6月の大幅リニューアルが大きく貢献したという。この10月にも再リニューアルを行なうとのことだが、そもそも、どのような哲学を持ってオンラインショップ運営しているのだろうか。

[編集部] 最近の物販サイトでは、リコメンデーション(※2)やパーソナライゼーションが1つの潮流となっていますが、それらの機能を盛り込む計画はありますか?
※2 一般に、顧客の行動や購買履歴などから顧客の好みを推測し、商品データベースの中から顧客の嗜好に合った商品を推薦する機能

[テリル氏] 「その計画はあります。どちらも来年初頭の予定ですが、リコメンデーションは、パーソナライゼーションよりも先に導入するつもりです。この機能によって、例えばレッド・ツェッペリンに興味がある方に対して関連アーティストの商品を推薦--といったように、顧客の嗜好に合った情報を提供します。パーソナライゼーションでは、自分の興味のあるアーティストや、それに関連するリンクだけが、“My HMV”のようなページで見える形にしたいと考えています」

「パーソナライゼーションについて、米国のサイトで2~3年前からやっていますが、まだまだ不十分です。顧客とのインタラクティビティを、“人”対“機械”ではなく、“人”対“人”の水準にまで高めたいと考えています」
[編集部] オックスフォード・ストリート店に勤務していた経験がおありと伺いました。リコメンデーションやパーソナライゼーションの機能は、あなたがかつて店頭で提供したサービスを、インターネットで実現するということですか?
[テリル氏] 「顧客が店舗同様のサービスを求めているとしたら、それに答えなければならないでしょう。しかし、オンラインショップと街の店舗における顧客の行動様式を比較すると、そうと限らないようです」
[編集部] リコメンドなどの機能は、インターネット上で店舗並みのサービスを実現するためのソリューションにはならないとお考えですか
[テリル氏] 「それらの機能は、店舗並みのサービスを実現する手段ではなく、サイト開発の一環であると考えています。もっとも、機械とのインタラクティビティは、ユーザーにとって最善のものではないと思いますが」

「Eコマースは、むしろ小売店の追加ビジネス」

[編集部] 音楽分野ではありませんが、コスト削減のため、実際の店舗を閉じて、インターネットに完全に移行した小売店の例もあります。HMVジャパンにおいて、少なくとも今後10年、こういう動きはあり得ませんか
[テリル氏] 「絶対にないと思います」

「オンラインショップと店舗販売では、営業時間と品揃えが異なります。店舗の標準的な営業時間は10時~20時ですが、インターネットにおける売り上げのピークタイムは深夜23時~翌2時です。品揃えについて見ると、弊社の渋谷店は約30万タイトルのアイテムを揃えています。これは、世界各国のHMVストアの中で、品数が最も多い店舗です。これと比較して、オンラインショップのデータベースは約70万タイトルですから、店舗販売と全く違うビジネスと考えています」

「続いて購買層について、通常、若い人たちの方が音楽に対する情熱を持っていると言われていますが、店舗は特にその傾向が顕著に出ています。逆に、オンラインショップのユーザーの年齢層を見ると、28才前後の男性の層が厚く、店舗と比べて少し高めです」

「店舗販売において、チャート商品が売上げの多くを占めているのに対し、オンラインショップにおいてその大半は旧譜です。例えば浜崎あゆみのように、発売と同時に街の小売店に並ぶ商品をインターネットで購入するユーザーもいます。しかし、彼女のような商品をインターネットで購入する場合、発売日に届くよう事前に予約するといった利用が多いでしょう」

「一方で、音楽には様々な楽しみ方があります。BGMとして利用する方もいれば、ライブが一番好きという方もいるし、コレクションをして楽しむ方もいるでしょう。こういった方々が、インターネットで買い物をしています」

「さらに、この10月、オンラインショップにギフト購入の機能を設ける予定ですが、このビジネスに限っては、小売店よりもインターネットの方が成功すると、私は考えています。このように、違うところで勝負しますので、この2つは共存することができます。Eコマースが店舗販売に取って代わるということはありません」
HMVジャパンが2000年7月に発表した、売上げに対する商品購入ジャンルの比較データ。上図がオンラインショッピングサイト(www.hmv.co.jp)、下図がHMV店舗平均。ジャンル別シェアを見ると、どちらも“ジャパニーズポップス”や“ロック&ポップス”が優勢であるが、ここで注目したいのは、オンラインCDショップの“ジャズ”および“クラッシック”。2ジャンルは、店舗のそれと比べて約1.5~2倍に伸びている
[編集部] 商品の情報のみをインターネットでチェックして、CDを購入するのは小売店、というユーザーも沢山います。こうしたユーザーをEコマースに引き込むことは考えていますか
[テリル氏] 「HMVアメリカでもそうですが、小売店の顧客を奪うというようなことは考えていません。Eコマースは、むしろ小売店の追加ビジネスと考えられています。Eコマースの一番の役割は、ユーザーに情報を提供していくということでしょう。情報を見た上で、そこで買うかどうかは別の問題です。実際、オンラインショップが始まってから小売店の売上げも伸びています」

アマゾンのディスカウントは行き過ぎ?

[編集部] 送料無料サービスはいつまで続くのですか
[テリル氏] 「計画の見直しを毎月行なっていますが、顧客にも好評ですし、現在のところ止める予定はありません」
[編集部] 送料無料でも利益は出ている、ということですか
[テリル氏] 「1回の買い物で複数枚オーダーするユーザーが多いので、配送コストは、当初予想していたより低く抑えられているようです。もっとも、このビジネスは多額の先行投資を行なっていますので、利益が出るのは、2001年度(2001年5月~2002年4月)末かと予測しています」
[編集部] 投資ということでは、米アマゾン・ドット・コム社は、巨額の先行投資によって、赤字を抱え込んでいます。御社のビジネスに、その危険性はありませんか
[テリル氏] 「アマゾンは、インターネット物販の最先端を行く企業ですし、業界のリーダーと言っても過言ではないでしょう。アマゾンのビジネスで疑問を感じとしたら、ほとんどの商品をディスカウントするという手法です。アマゾンのビジネスが危うくなっているのは、先行投資というよりも過剰なディスカウントに原因があるのではと、私は推測します」
[編集部] アマゾンのディスカウントは行き過ぎでしょうか
[テリル氏] 「もし、本当にそれで利益が出せないのなら、行き過ぎと思います」

「ディスカウント販売は、なにもオンラインショップの専売特許ではありません。街の小売店もできます。では、街の小売店が、なぜそうした手法を採用しないか。これは、利益が出ないとビジネスがやっていけないという経験則からです。マージンやコストを計算して、それでも利益が出せるよう価格を設定するのです。マージンからコストを差し引いた時に利益が出ないようでは、ビジネスが成立しません」

「従って、過剰なディスカウントは、一時的に顧客の数は増えるかもしれませんが、まちがったアプローチだと言えます。適切なディスカウントをすればいいのではないでしょうか」

後編に続く。

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