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キヤノン、撮影レンズ用の積層型回折光学素子を開発

2000年09月05日 21時54分更新

文● 編集部

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キヤノン(株)は4日、撮影レンズ用の積層型回折光学素子を開発したと発表した。併せて、同技術を採用した超望遠レンズの試作モデル『キヤノンレンズ EF400mm F4 DO IS USM (試作モデル)』を発表した。同製品は2001年上期の商品化を目指すという。

積層型回折光学素子(右)と『キヤノンレンズ EF400mm F4 DO IS USM (試作モデル)』(左)

回折光学素子は、格子構造(回折格子)を持つ光学素子で、回折格子により発生する回折現象(光の波動が障害物の端を通過して伝播する時に、障害物の後ろにまわり込む物理現象)を利用し、光の進む方向を変化させられる。これまで、分光器などの産業機器や、CD/DVDプレーヤーなどのレーザー光を使用した信号読み取り用の光学系などに採用されてきた。しかし、入射光が自然光(白色光)などの場合、一部の光が不要な回折光として発生し、フレア光となって結像性能の低下を引き起こすことから、撮影レンズへの応用は困難と考えられていた。

積層型回折光学素子
積層型回折光学素子構造(概念図)

同社が開発した積層型回折光学素子は、同心円状の格子を持つ2枚の単層型回折光学素子を向き合わせて配置した独自の積層構造を持つ。これにより、積層型回折光学素子に入射した光を、不要な回折光を発生させずに、ほぼ全て撮影光として利用することに成功し、従来の回折光学素子では不可能であった撮影レンズへの応用を可能にしたという。

回折光学素子は、波長ごとの結像位置が従来の屈折光学素子と逆になるという特徴があり、積層型回折光学素子と屈折光学素子を組み合わせて光学系を構成することで、撮影レンズの画質低下の大きな要因である色収差(色のにじみ)を蛍石レンズ以上に補正できる。さらに、回折格子のピッチ(間隔)を調整することで、非球面レンズと同様の光学特性を得ることができ、球面収差なども良好に補正できるという。

今後、この積層型回折光学素子を一眼レフカメラ用交換レンズや、CCDの小型・高密度化に対応したデジタルカメラ用光学系、眼鏡型ディスプレー(HMD:Head Mounted Display)、液晶プロジェクターの投射用レンズなど、映像情報機器への実用を目指し、研究・開発を積極的に進めていくとしている。

積層型回折光学素子搭載の試作機『EF400mm F4 DO IS USM』(上)と、従来の屈折光学素子のみで設計した 400mm F4レンズ(下)

『キヤノンレンズ EF400mm F4 DO IS USM(試作モデル)』は、光学系に積層型回折光学素子を効果的に配置することで、従来の屈折光学素子のみで設計した場合と比べ、同等の画質で大幅な小型・軽量化を達成したという。従来の手法で設計した場合と比べ、全長で約26パーセント減の233mm、重量で約36パーセント減の1930gを実現したという。

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