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【INTERVIEW】極右政権の誕生によって困難に直面しているオーストリアのパブリック・サイバースペース――コンラッド・ベッカー氏にきく

2000年08月31日 22時38分更新

文● 岡田智博 coolstates.com

コンラッド・ベッカー氏は、オーストリアの首都にあるメディア文化センター“パブリック・ネットベース”の創設者であり、現在その代表を務めている人物。全欧州メディア文化センターのアライアンスである“ヨーロピアン・カルチャル・バックボーン”の企画者としても知られている。その活動はオーストリア国内にとどまらず、ヨーロッパのニューメディア文化全体に関する政策提案まで及ぶ。

先ごろ“ブリュッセル2000”において開催された“World-Information.Org”も、ベッカー氏がプロデュースしたものである。このイベントはベルギー・ブリュッセルで開催されたメディアアートによるアプローチであり、ヨーロッパのデジタルメディア文化や社会をレビューする展覧会だ。http://www.ascii24.com/ascii24/news/topi/article/2000/08/04/610674-000.htmlを参照していただきたい。

新しいかたちのプレゼンテーション"World-Information.Org" の背景と成果、オーストリアの極右政権の誕生によって困難に直面しているパブリック・サイバースペースの動向、そしてメディア文化に関するコーディネーターとしての仕事について聞いてみた。

“パブリック・ネットベース”の創設者であり、現在その代表を務めているコンラッド・ベッカー氏
――World-Information.Org 開催の意図を教えてください

「デジタルメディアが社会に入り込むにつれて、様々な変化や問題が起こっている。それをパブリックにどうやって伝えていくか? ということが、このプロジェクトの意図しているところだ。そのために2年間にわたり、世界規模でのエキスパートグループを作ってデジタルメディア社会についての調査を実施、トピックを集めてきた。特にコンテクストに重きを置いた。それぞれの変化や問題が複雑に関係しあいながら、私たちに突き刺さっている大きな変化を認識してもらえるように、調査の結果をオーバーラップさせてみた」

――なぜ“World-Information.Org”をブリュッセルで開催したのですか?

「“パブリック・ネットベース”というメディア文化センターを展開していくなかで、アメリカ中心の立場ではない、ヨーロッパとしてのメディア文化を表明する必要があると思うようになった。そこで、ヨーロッパの首都といってもいいブリュッセルで実現できる機会を、ユネスコなどの欧州ベースの国際機関に働きかけてきた」

――主催者としてどのような成果が現われたと思いますか?

「欧州全域からスペシャリストがよく集まり、オフラインの相互交流の場として機能できた。ブリュッセルという街から考えると、今までテクノロジーと社会との関係について、情報提供の機会が地元として存在していなかった。この地域での事例づくりという意味で“キックオフ”できたことを評価してもらいたい」

「しかし、ブリュッセルという街は(こういった活動を展開していくには)難しい。なぜなら、フランス系とオランダ系の民族に分かれているからだ。ブリュッセルはこの国の首都であり、欧州の首都でもあるのだが、それぞれの民族コミュニティーと、国際官僚コミュニティー、それに移民コミュニティーが完全に分断されていて、街全体の話題にすることがすごく難しかった」

――オーストリアの極右政権誕生によって、今回のオリジネーターである“パブリック・ネットベース”の状態に変化はありましたか?

「私たちはインターネットを文化的手段として活用できるように、アーティストや学生、非営利機関に、廉価な接続の機会とホスティングを提供してきた。そして、極右政権誕生時には、多くのユーザーが私たちのインフラを使って、対抗的な活動をWebサイトで始めた(※1)。新しい連邦政府はそういったWebサイトを削除するように求めてきたが、私たちの基本的な目的と反することなので断ってきた。結果的に、私たち自身も(政府に対して)問題のある機関としてブラックリストにのり、運営資金の大部分を占めていた連邦予算がカットされてしまった」

※1 今年2月、極右政党“自由党”と、保守の国民党による連立政権がオーストリアで発足したのを受けて、欧州連合(EU)14ヵ国が同国に対して外交制裁措置を発動したのは記憶に新しい。外国人排斥やナチス擁護を主張する“自由党”の党首ハイダー氏に対する、ネットワーカーやアーティストたちの抗議はさまざまな形で続いている

「連邦政府からは、今入居している文化機関が集まる複合ビルからも出て行けといわれ、また、私たち自身の前科も洗っているようだ。しかし、ウィーン市自体はまだ中道による政権なので、市からの支援を高められるように交渉中である。市長が私たちに対する支援を公式表明したのでうまくいくと思う」

「いずれにせよ、今回のこと無かったら、World-Information.Orgにかけられる予算をもっと注ぎ込むことができて、アートショー的な部分を強めることができたのだが……」

――あなたはヨーロッパのメディア文化の振興のため精力的に動いている代表的なコーディネーターの一人とも言えますが、なぜ World-Information.Org を含め、国際的なメディア文化イベントを御自身でオーガナイズすることになったのか?

「もともとウィーンというクラシックの街で現代音楽家として活動し、新しいユースカルチャーを何とか盛り上げていこうとしてきた。それが、カルチャー、テクノロジー、文化や科学技術政策のフィールドに徐々に広がり、活動しなければならなくなっただけのこと。そして、地域コミュニティーベースの文化的インテリジェンスを考え、形にする場が必要だと地域社会や行政、政治家に説いて作ったのが“パブリック・ネットベース”だ」

「大きく変わる経済や政治に、文化として人々が対峙し、参加していくためには、こういった文化的なインテリジェンスの存在が必要だと思う。特定のローカルという狭い枠組みだけのものではなくて、ワーキングモデルを全ヨーロッパ規模で作ろうとして動き続けているだけのことだよ」

――World-Information.Org をこれからどのように展開するのでしょうか?

「この秋にウィーンで引き続き開催することになっている。そして、これらのリサーチの結果をインターネット上にデータベースとして公開し、文化的インテリジェンスによるサーチエージェントを構築していく予定だ」

筆者の手によるヨーロッパのパブリックなサイバースペースとメディアアートに関するレポートがこのURLでも読めます

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