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シーラス・ロジック、AACで多チャンネルのデコードに対応したDSPデコーダーを発表

2000年08月29日 21時53分更新

文● 編集部 小磯大介

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米シーラス・ロジック社は29日、AACの多チャンネル音声デコードに対応したDSP(Digital Signal Processor)チップ『CS49310/CS49311』と『CS49329』を発表した。同社では次世代デジタル放送の標準オーディオコーデックに採用されたAACをサポートするDSPチップを日本国内市場へ積極的にアピールしていく意向だ。

CS49329を搭載したオーディオボード。写真中央部の小さなチップがCS49329

“AAC”は、MPEG-2/4で採用されている音声圧縮形式で、独Fraunhofer Institute社、米AT&T社、米Dolby Laboratories社、ソニー(株)の4社(頭文字を取って“FADSグループ”という)の多チャンネル音声符号化技術を組み合わせて誕生した。'97年にISOの認定を受けた国際標準規格だ。最大96kHzのサンプリング周波数と、最大48の音声出力チャンネルに対応、MP3と同等の音質を約30~40パーセント小さいサイズで実現できる。日本では郵政省がこのAACを、サンプリング周波数48/44.1/32kHz、ビットレート144kbps/2チャンネル(1チャンネルあたり288kbpsまでは許可)に限定したうえでデジタル放送システムの標準オーディオコーデックとして採用した。最大5.1チャンネルのモノラル、ステレオ、多チャンネル再生に対応する。標準テレビ(SDTV)、高解像度テレビ(HDTV)、デジタルオーディオなどで使われる予定だ。

今回発表された製品は、『CS49301/CS49311』が放送機器用、『CS49329』がAVアンプ用という位置付け。対応コーデックは、CS49301がAAC、MPEG-2マルチチャンネル(8/5.1/仮想5.1ch)、Dolby Digital。CS49329がMPEG-2マルチチャンネル、Dolby Digital DTSなどとなっている(CS49311はAACのみ)。コーデックの違いを除けば、ほぼ同一のチップ。チップはプログラム可能で、CS493xxシリーズを登載するオーディオシステムのベンダーは、音場などのエフェクトを処理できるようにファームウェアを書き換えられる。なお、パッケージをCS493xxシリーズに共通の44pinPLCC(Plastic Leaded Chip Carrier)とすることで、システム間の互換性を高めている。

DSPコアはデュアル構成で、負荷分散が可能。通常はフロントエンドプロセッサー(DSP A)がホフマン変換やiDCT(逆離散コサイン変換)などの演算部分、サブプロセッサー(DSP B)がバッファーの管理やホストとの通信などを担当する。プロセスルールは0.24μmで、動作電圧は2.5V、処理能力は86MIPS程度となっている。

発表会では、米シーラス・ロジック社のDSP技術戦略マーケティング担当副社長のテリー・リッチー(Terry Ritchie)氏が「CS493xxシリーズはデジタル放送やセット・トップ・ボックス(STB)にフォーカスしたチップである」と説明。同氏によると、開発は1年前に始まっており、「日本のデジタルテレビ放送をAAC最初の試金石としたい」という。終始熱意ある口調で、同社の意気込みが感じられた。

リッチー副社長。熱い口調でCS493xxシリーズについて語っていた

同社ではすでにCS49310/CS49311、CS49329を量産出荷中。OEM単価は20ドル(約2130円)で、同チップを搭載したAV機器などが9月以降に順次登場する予定となっている。

ACC出力のデモシステム。ノートパソコンのHDDに保存されたACCデータを、USB→光とコンバートしてCS49329搭載ボードに入れ、デコードして写真左奥のAVアンプから出力している

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