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【Seybold San Francisco 2000 Vol.2】2017年には紙での印刷物はなくなる!? MSが予測するE-Publishingの世界(オープニングキーノートスピーチより)

2000年08月29日 14時17分更新

文● 水無月 実

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“Design Building Communicate 2000”と銘打たれたSeybold Seminars San Franciscoが8月28日に開幕した。今回はセミナーが8月28日~9月2日まで、そのうち展示会は8月30日~9月1日の3日間で開催される。今日は28日、Seybold Web Conferenceの冒頭に行なわれたKeynoteを紹介する。

Seybold Seminars S.F.の会場となっているMoscone Center入り口とSeybold Seminars S.F.のバナー広告

このKeynoteで“Visions of the Future”を語ったのは、Microsoft社のVP for Technology DevelopmentであるDick Brass氏、Macromedia社のPresidentであるNorm Meyrowitz氏、Akamai Technologies社のVice PresidentをつとめるJonathan Seeling氏である。

Openning Keynoteを司会するCraig Cline氏

2017年には紙での印刷物はなくなる!? “新しい電子ブック・ストア”の創造を呼びかけてるMS

Microsoft社のDick Brass氏は最初に情報伝達技術、出版技術の歴史を振り返るビデオ“We begin……”を紹介した。このビデオは紀元前3000年頃に描かれたと思われる洞窟に残る絵と図形を組み合わせた壁画に始まり、象形文字、楔(くさび)形文字と文字による情報伝達の進化過程が示された。その後、印刷機の発明、印刷物の進化、ランダムハウス辞書の登場を経て、PDA、パームトップとなり、現在のハンドヘルド・コンピュータにまで到達する。

E-Publishing、E-Bookの世界を語ったMicrosoft社Dick Brass氏

ここでビデオ・スクリーンには“We begin Again”の文字が映し出され、2000年以降に起こるであろう情報伝達の進化過程が紹介された。このビデオでは2005年にはTabletPC、2008年にはE-Bookの登場が予言され、ついに2017年には“今日、最後の紙での出版”と題した新聞記事が登場する。ここでは2017年には紙での印刷物はなくなると予言している。その後、数年すると人々は、印刷物を懐古の手段として扱うようになる。

このような進化過程を予測するMicrosoft社はPCで電子出版物を読むためのソフトウェア『Microsoft Reader』(以降、MS Reader)を発売するとともに、今後の電子出版史上に期待を寄せている。

Dick Brass氏は「E-Bookは今後成長する市場である。ここには巨大企業が参画している」とElectronic Publishingの可能性を強調していた。Microsoft社では、「従来の著作物は電子出版のコンテンツとして、現在先行しているビデオ、音楽と同じようにインターネット上で販売されるだろう。今後はビデオ、音楽と同じように、コンテンツを軸とした“新しい本づくり”が大きな産業として成り立っていくだろう」と予測している。

さらに、この傾向を加速するために、同社は“新しい電子ブック・ストア”の創造を呼びかけている。今後、ソフトウェア『MS Reader』はさまざまなPC上で使えるようになる。さらに、ユーザーが自由にカスタマイズできるようになる。これからは、E-Bookのフォーマットで出版されたコンテンツはMS Readerでも読める。この環境は一層、E-Bookのフォーマットでの出版を加速するだろう。

最後にDick Brass氏は掌に収まるサイズのハードウェア『E-Reader』を公開した。このハードウェアは従来のPDAサイズで表示には液晶が使われている。筐体の幅も薄いので、持ち運びが簡単でどこでも電子出版物が読める。

ショルダーバックをデザインしてオーダー。新しいタイプのE-Commerceサイト

2番目に登場したMacromediaのNorm Meyrowitz氏は、優れたE-Commerceサイトを紹介した。

優れたE-Commerceサイトを紹介したMacromedia社Norm Meyrowitz氏

www.timbuk2.comにアクセスすると、Timbuk2 Designのページでオリジナルのカジュアル・ショルダーバックがデザインできる。このページではカジュアル・ショルダーバックのストラップ、ボディカラー、前面に入るロゴなど、各パーツごとに、そのデザイン、配色をユーザーが選択できる。そうしてカスタマイズしたオリジナルのカジュアル・ショルダーバックをオーダーする。実際、このKeynote Conferenceでは会場から選ばれた観客がカジュアル・ショルダーバックのデザインを決め、オーダーした製品がConferenceの最後までに届くというパフォーマンスもあった。

観衆から選ばれた人とともにTimbuk2 Designsでカジュアル・ショルダーバックの デザインを決めるNorm Meyrowitz氏
Timbuk2 Designsサイトで自分がデザインし、すぐに送られてきたカジュアル・シ ョルダーバックをNorm Meyrowitz氏から受け取る参加者

www.moonfruit.comはコミュニケーションを提供するサイトである。Community Roomでは、仮想都市に入っていく設定で、同じく仮想都市に入ってきた他のユーザーとのコミュニケーションが図れる。www.spiderdance.comではTVプログラムとインターネットを組み合わせたアミューズメントを提供している。ここではTV Game Showに登場する回答者と、そのTVプログラムの視聴者が同時に同じ問題にチャレンジする。ここでは視聴者参加型のTVプログラムが提供されている。

このように、インターネットには優れたコンテンツで構築された新しいタイプのE-Commerceサイトがいくつもある。

Analysis and Reporting、Content Customization、Digital Rights Management――Akamaiが提供する新ビジネス

最後に、Akamai TechnologiesのJonathan Seeling氏は、同社が行なっているインターネットでの新しいビジネスを紹介した。Akamai Technologies社は新しい情報配信のソリューションを提供している。

現在、インターネットは急速に進歩しており、インターネットへの加入者も続々と増えている。こうして膨大になったユーザー数が問題の原因になる。現在、3億人のユーザーに加えて、まだ潜在的なユーザーがいると言われるインターネットで、これらのユーザーが次々に情報発信を始めたときには、問題が起こるという。

現在の状況で、ユーザーが情報発信の手段として、音声など大容量のデータを発信すれば、問題が起こる。それはインターネットのプロバイダーなど、インフラを提供している団体には、このデータを安全に伝えるための、さらに巨大な投資が必要となるからである。この問題を新たなソリューションを使って解決しようというのが、Akamai Technologies社の試みである。

Akamai Technologies社はAnalysis and Reporting、Content Customization、Digital Rights Managementを提供している。これらのビジネスのうち、Analysis and Reportingは同社がインターネット上で行われる種々のアクセスを計測し、それをレポートとしてクライアントに提供している。これをクライアントは次世代のコンテンツを考えるための資料として活用している。特に、トラフィックの分析はクライアントに重宝されている。また、Digital Rights Managementはクライアントがそれぞれのコンテンツの権利を保護しながら、それぞれのコンテンツを有効に配信するための手助けをしている。

このように、Webの世界では次々に新しい試みが行なわれ、新しいコンテンツが生まれている。その先には、これらのコンテンツを活用した新しいビジネス、新しい市場が待っている。

Openning Keynoteに登場したスピーカー達と司会のCraig Cline氏

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