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オープン1ヵ月後のパテントラボ、第1期の支援事業を終える

2000年08月29日 06時09分更新

文● ジャーナリスト/高松平藏 

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大阪の特許関連の施設が集積する関西特許情報センターで、特許取得の支援を行なうインキュベーター(ふ化器)、“パテントラボ”が先月オープンした。第1期の入居者の声をまじえて、スタート1ヵ月後の様子をレポートする。

パテントラボのある関西特許情報センター

第1期入居者はすべてIT関係

先月13日からオープンしたパテントラボは、特許取得に特化した全国発のインキュベーターだ。特許取得に関する調査からビジネスプランの作成までを支援する。入居期間は1カ月から3ヵ月いう短期集中型。今月12日まで支援を受けた第1期の案件は3件。いずれもIT関係のもので、いわゆるビジネスモデル特許だ。

「ノウハウを覚えるだけで1ヵ月が過ぎてしまいました」

というのはスキル・インフォメーションズの中家章久哉氏。同社はハード器機、コンサルティングなど受託事業を中心に行なってきた。ここにきて新規の自社商品の開発にふみきった。ネット関連のビジネスモデルで、特許出願中の段階で入居した。パテントラボでは特許の説明不足を補うなど、出願済みの特許をさらに強固にするのが目的だ。同氏は1ヵ月のあいだ類似特許を検索し続けた。

「検索のノウハウを覚えるのに精一杯でした」という中家章久哉氏

検索そのものは通常のブラウザーを活用するため、方法は難しくはない。ところが、検索対象のボリュームそのものが多いことに加え、特許にまつわる書類の文書が難解だ。参照するにも専門知識がいる。パテントラボのスタッフから支援をうけるが、ノウハウを修得するだけで精一杯だ。「それでもサポートがなければもっと時間がかかった」と同氏は振り返る。ひとまず、同氏はラボを出るが、引き続き会社で検索を続けるという。

さらにホームページの更新に関する特許を出願中の中村元義氏はこう付け加える。「類似特許を調査することで係争になったときにも充分戦える」。ちなみに同氏は来月からはビジネスモデル構築を専門とする会社を立ち上げる予定だ。今回支援を受けた案件は、新会社の第一号のビジネスモデルというわけだ。

近く会社の創設も予定している中村元義氏(左)と企画総括主査の久保浩三氏(右)。ラボのブース内にて

おおむね、第1期の入居者の“被支援者満足度”は高い。しかし一方で、案件は社のトップシークレットにも関わらず機密性に不安を覚えるという意見もある。入居者が使用するブースは完全個室にされているが、室内で交わされる会話は筒抜けだ。「機密契約なども必要では」と新規出願を狙う入居者は注文をつける。

事業に磨きをかける

パテントラボの支援の特徴は徹底したコンサルティングにある。類似特許の検索指導のほかにも、開発の進め方、ビジネスプランのまとめるノウハウなどを専門家が提供する。

第1期、3件のうち2件までが、既に特許出願中で案件に「磨きをかける」(アドバイザーの秋田伸一氏)ことがメインの支援内容だった。アドバイザーの大空一博氏は「特許情報を通して、案件の価値を確認してもらう。その結果、“自信喪失”もあるが、逆に自信と確信を得ることもある」という。続けて「支援の方向性はあっている」とこの1ヵ月を自己評価する。
特許流通の専門家、大空一博氏(左)と検索指導を行う秋田伸一氏(右)。「今回はビジネスモデル特許ばかりだが、2期目はモノ作りの特許案件ばかり」(秋田氏)。支援側も試行錯誤の時期が当分続きそうだ

ただし、検討が必要なこともある。まず、ドッグイヤーと言われる最近のITの“時間”だ。集中的にコンサルティングを行なうには「1ヵ月は適正」(大空氏)というが、「時間の流れが速く、1ヵ月も特許のために費やすのは長いこともある」と秋田氏は疑問を呈す。

実際に新規の特許出願の支援を受けた入居者も「企業は生き残りをかけている。すぐにでも出願をしたい」と焦りを見せる。

また。支援をこなせる数にも限界がある。現在5人のアドバイザーが支援業務を行なっているが、同時に行なえる数は3件。「入居を待っている人がかなりいる。パテントラボをオープンする前から行なっていた相談業務でなんとか対応しているかたちだ」と企画総括主査の久保浩三氏はいう。

ところで、数年前からの不況とアメリカのニューエコノミーを勘案して、国内で起業を促す動きが盛んだ。ビジネスモデル特許もいわばその流れにある。そこで必要になってくるのが、同ラボのような支援機関だ。久保氏は「支援をこなせる数を増やすに、アドバイザーの育成が課題だ」と支援体制の強化を目指す。

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