米カリフォルニア州サンノゼで22日から開催中のIntel Developer Forum Fall 2000の、3日目(最終日)のキーノートスピーチの模様を塩田紳二氏のレポートでお伝えする。
分散処理を狙うインテルのPeer-to-Peer Computing
さて、最終日のキーノートスピーチは、パット・ゲルシンガー(Pat Gelsinger)副社長。今回のIDFでは、開催前からPeer-to-Peer Computingという言葉が登場していたが、昨日までは、最終日のゲルシンガー副社長の講演を待てといった感じだったので、こちらの期待はいやがうえにも高まった状態だった。
インテルアーキテクチャグループでインテルのCTO(Chief Technical Officer)でもあるパット・ゲルシンガー副社長。キーノートスピーチでは、Peer-to-Peer Computingについて語った |
Peer-to-Peer Computingとは、従来のサーバー/クライアントのように、システム構成や管理主体の異なるコンピュータでサービスを実現するのではなく、ユーザーが使う普通のコンピュータ同士が連携することを意味するらしい。身近な例では、MP3ファイル交換の『Napster』や宇宙人探しに協力するSETI(Search for Extraterrestrial Intelligence:地球外知的生物探査)のプロジェクトがある。
インターネットがはじまり、その中でもWWWの登場が、インターネットを一般ユーザーに広げ、新しいビジネスを生み出したという。そしてPeer-to-Peer Computingが新しい時代のインターネットを作るというのだが |
インテルでは、社内の計算システムに“NetBatch”というシステムを構築しており、多数のコンピュータに計算を分散させるようなしくみを持っている。これにより、インテルは、メインフレームを導入せずにすみ、より高い計算能力が得られ、プロセッサの動作シミュレーションを短時間で終わらせることができたなどの効果があったという。
Peer-to-Peerを使ったNetBatchの説明映像。1つのコンピュータから発せられた命令が、多数のコンピュータで分散して処理されるという |
Peer-to-Peer Computingは、既存の技術を組み合わせれば実現可能で、あとは、標準化することだけである。そこでインテルでは、Peer-to-Peer Working Groupを結成、来月26日にサンタクララで最初の会合を開くという。つまるところ、今回は提案のみであり、何か具体的なものが提供されるわけではなく、期待していた割にはちょっとがっかりという感じである。
ゲルシンガー副社長のプレゼンテーションを聞くに、インテルの考えているのは多数のパソコンによる分散処理やパラレルプロセッシング、広い意味での資源共有ということなのだろうが、たとえば、パラレルプロセッシングには向かない処理もあるし、任意の処理を自動的に並列処理するようなことは不可能に近い。
また、Peer-to-Peer Computingでは、OSやアプリケーション側での対応が必要だが、今回の発表を見る限り、Working Group参加企業にマイクロソフトやサン、あるいはレッドハットといった名前はない。今回、このPeer-to-Peer Computingでは、インテルが主導権をとるようだが、このような分野はある意味、まったくのソフトウェア分野であり、いままでなら、マイクロソフトなどのソフトハウスか、サンやIBMなどのハードウェアもソフトウェアも手がける企業がリードして行なってきた分野である。いままでこうしたメーカーにPCやネットワークの構成パーツを提供しながら、どちらかというと、裏方的なポジションにいたインテルが、コンピュータ分野あるいは、IT分野で先頭に立って活動することを宣言したことともとれる。
Peer-to-Peer Working Groupに参加する企業の一覧。大手では、HPやIBMの名前もあるが、マイクロソフトやオラクルといったソフト系大手企業の名前はない |
ドッグイヤーといわれるように変化の激しいこの業界であるので、遅くとも年内ぐらいには何らかの“結果”を出すことが求められるだろう。こうした一歩を踏み出したインテルだが、マイクロソフトや他の企業の対応はどうなるのだろうか。
アーキテクチャグループの事業部長でもあるウィリアム・スウォープ(William A. Swope)副社長。今日のキーノートスピーチでは、インテルの現状について解説 |