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【IDF Fall 2000レポート Vol.2】新組み込みプロセッサで携帯電話を狙う

2000年08月24日 23時27分更新

文● Text by 塩田紳二

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米カリフォルニア州サンノゼで22日から開催中のIntel Developer Forum Fall 2000の、2日目のキーノートスピーチの模様を塩田紳二氏のレポートでお伝えする。

マイクロアーキテクチャ“Xscale”とは

さて、IDF2日目のキーノートスピーチは、ネットワークコミュニケーショングループを統括するマーク・クリステンセン(Mark A. Christensen)副社長と、ワイヤレスコミュニケーション&コンピューティンググループのロナルド・スミス(Ronald J. Smith)副社長。

マーク・クリステンセン副社長。ネットワーク機器向けのIXAデバイスを応用した製品を紹介

このキーノートのメインは、新しい発表されたマイクロアーキテクチャである“Xscale”である。これは、現在の『StrongARM』の後継プロセッサに使われるもの。今日、キーノートスピーチのあと、スミス副社長に話を聞く機会があったので、そこからの情報を交え、この新しいマイクロアーキテクチャを解説してみたい。

インタビューに応じるロナルド・スミス副社長。キーノートスピーチでは、Xscaleを紹介

現在インテルでは、プロセッサそのものの名称と、内部(コア)のアーキテクチャを別のブランド(呼び名)にしている。『Pentium 4』は、一連のプロセッサのブランド名であり、この『Pentium 4』のアーキテクチャを『NetBurst』と呼ぶ。これは、『Pentium Pro』、『Pentium II/III』のアーキテクチャを“P6”と呼んでいたのに対応するものだ。

現在、StrongARMは、PDAや携帯電話向けの、組み込み用途をターゲットにしたプロセッサという位置づけだが、その次世代に使われる内部アーキテクチャがXscaleなのである。

デモで使われたXscaleによる次世代プロセッサのテスト装置

デモでは、電源電圧を変え、1.75V/1.5Wで1GHz動作するところから、徐々に電圧を下げて0.70V/55mWで200MHz動作するところまでを見せた。スペックとしては、0.75V/50MHzとすると10mW程度まで下げることができるという。

従来のStrongARMとXscaleの比較。縦軸の左側が1MIPSあたりの消費電力(mW/MIPS)、右がMIPS値(ベンチマークによるMIPS換算値)。Xscaleは、1.6Vでは、1mW/MIPSを達成している

インテルは、このプロセッサをIMT-2000などの第3世代の携帯電話に利用してもらう計画だ。携帯電話では、ARM系のCPUが多く使われているが、インテルでは、広帯域になる第3世代の携帯電話ではより多くの計算能力が必要として、Xscaleを推進していくようだ。

Xscale試作マシンの状況を示すプログラム画面。自動車のメーターのようなものは、CPUクロック、コア電圧、コアの消費電力および、MIPS値である。写真は、最高クロックを達成したところ

スミス副社長の部署も“ワイヤレスコミニュケーション”と“コンピューティング”となっているように、Xscaleを採用するプロセッサの主要な用途は、ワイヤレスコミュニケーションだと考えているようだ。このプロセッサは、携帯電話に入るだけでなく、インフラ側のルーターなどへの応用の可能性もあるが、メインとなるのはクライアント側。また、現時点では、Xscaleを他社にライセンスする予定はなく、インテルブランドの製品としてデバイスを生産する予定だという。

ただし、携帯電話によるワイヤレスデータ通信やインターネットアクセスについては、米国よりも日本などのほうが先行しているため、インテルとしても、日本市場を意識しているとのこと。すでにStrongARMなどで提携している日本企業との関係を使って、日本の携帯電話市場に食い込みたい考え。来月日本で開かれるIDFには、スミス副社長がキーノートスピーチを行なう予定で、このときに対日戦略関連の発言があるかもしれない。

個人的な印象として、Xscaleを使った製品はソフトウェア的には、StrongARMと互換性はあるだろうが、今後は、StrongARMやARMといった名称から離れていくような気がする。

まず、このStrongARMはもともとDEC(現コンパックコンピュータ)が開発していたもの。それがインテル対DECの訴訟事件の和解条件の1つとして、結果的にインテルの製品となった(インテルから見れば組み込み市場で一定のシェアをもつARMの一部を手にしたことになる)。また、ARM自体は、英ARM社の製品。ある意味、インテルオリジナルではないし、ARMとインテルのダブルブランドでもある。

今回、実際の製品ではなく、内部アーキテクチャ(マイクロアーキテクチャ)の発表のみだが、実際に登場する製品では、StrongARMよりはXscaleというアーキテクチャ名のほうが強調されたり、あるいはStrongARMという名前を変えないまでも、あまり前面に出てこなくなるような気がする。

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