8月16日の日本ヒューレット・パッカードの発表に続き、今度はカシオ計算機が日本語版Pocket PCを発表した。発売は9月15日で、10月5日の出荷を予定している日本HPに先行する。同社の『CASSIOPEIA E-700』は、240×320ドット/6万5536色表示に対応した高精細なHAST液晶、最新のVR-4122プロセッサー、将来の音楽配信を見据えたSDカードスロットの搭載など、マルチメディア志向のPocket PCである。
CASSIOPEIA E-700。オプションでリモコン付きヘッドホンが用意されている |
CPUの変更で従来とは桁違いの速さを実現
CASSIOPEIA E-700は、マイクロソフトの日本語版Pocket PC発表に際し、開発表明がなされていたコンシューマー向けPocket PCだ。同社はすでに業務用Pocket PC(DT-5000シリーズ)をアナウンスしているが、これはPOS端末など特定市場を視野に入れた製品で、一般向けではない。同等スペックを有する米国モデルの名称は『EM-500』だが、国内モデルでは従来の『E-500』シリーズとの世代差を明確にするため、新たに700番台の型番を採用した。
単色メタリックから、濃紺(Mystic Blue)とシルバーのツートンカラーに変更された本体には、切手サイズ(縦32×横24×厚さ2.1mm)のSDメモリーカードスロットを搭載。体積比で15%、重量比で14.5%のコンパクト化を図った。しかし、そのサイズは縦128×横81.8×厚さ18.9mm、重量は約218gとまだまだ大きく、手に取ると本体の幅、ポケットに入れるとその厚みが気になる。バックライト付きの液晶とそれを支えるバッテリーを収納するためだが、常に持ち運ぶデバイスとして提案するならさらなる小型/軽量化を望みたいところだ。
SDメモリーカード/MMCスロットは本体上部に搭載する |
Pocket PCのコアとなるWindows CE 3.0の軽さは、CPUにSH-3-133MHzを搭載した『Jornada 548』で実証済みだが、E-700のパフォーマンスは、CPUを従来のVR-4121-133MHzから最新のVR-4122-150MHzに変更したことでさらに向上している。その効果はメモリーカード内に蓄えられた画像ファイルの展開や手書き文字認識を行なってみると良くわかる。
手書き文字認識の速度は軽快そのもの。複数のマスが必要ないと感じてしまうほどだ |
高性能なハードは当然コストやバッテリー寿命に跳ね返ってくるが、E-700の価格は6万円前後とカラー液晶搭載のPDAとしては標準的。バッテリー寿命も公称7時間とがんばったほうだ。バッテリーはゲームなどで3~4時間連続使用しても十分残っており、PCと同期する際に少しずつ充電していけばバッテリー残量を特に意識せずに使いつづけることも可能だろう。
インターネット対応の高機能ビューアー
E-700の本体メモリーは32MB。本体の前面には十字カーソルと3つのアクションボタン、左側面にジョグスイッチを搭載する。これらは従来機の『CASSIOPEIA E-503』と同様だが、従来機に搭載されていたWindowsキーは省略されてしまった。マイクロソフトのリファレンスデザインにより、E-700もジョグスイッチの近くに録音ボタンを持つため、Jornada 548の場合と同様、スタートメニュー起動用にアサインし直すといいだろう。
十字カーソルはゲームなどで便利だが、右の3つのボタンで選択/決定できないためメニュー操作には有効でない |
本体左側面にはメニュー操作用のジョグスイッチを搭載する |
通信に関しては、従来同様本体下部のシリアルポートにケーブルでデジタル携帯電話やPHSを接続する形を取る。ケーブルは別売だが、従来製品(JK-510CA、同520CA、同521CA、各4500円)が使える。また、新たにcdmaOneの64kbpsパケット通信(PacketOne)にも対応した。拡張スロットはSDメモリーカードとMMC用になったため、ストレージ用途が主となるが、CF対応の周辺機器を利用できなくなったのは少々残念な部分だ。
通信を行なう際には別売(4500円)の通信ケーブルで本体と携帯電話を接続する |
PCとの接続はクレードル経由で、クレードルにはシリアル/USBの2つのポートを備えている。ただし、シリアルケーブルは付属せず、別途購入する必要がある。同期ソフトのActiveSyncはバージョンが3.1に上がった。3.0との目立った違いはないが、Internet Explorer 5.0との間で「お気に入り」とキャッシュ内に蓄えられたオフラインコンテンツの同期ができるようになっている。PC側で定期的に巡回させ、更新があった時点で同期するので、夜の間にコンテンツをダウンロードし、朝の通勤時に読むといった使い方も可能だ。
クレードルには、シリアル/USBの両方の端子を装備する |
内蔵ソフトは、従来から搭載されている動画再生ソフトの『モバイルビデオプレーヤー』(※1)、同社の電子手帳のノウハウが活かされた独自のPIMアプリケーション(モバイルスケジュール/モバイル住所録)に加え、自動振り分けに対応した『モバイルE-mailer』を新たに追加した。従来同梱されていなかったPC側のPIMソフトについても、今回から付属CD-ROMに『Outlook 2000』が収録されている。
Pocket PCでは、スタートメニューが従来のカスケード方式ではなくランチャー方式となり、ジョグスイッチで操作できるが、E-700もJornada 548もその起動を片手で行なえないのは、残念な部分だ。 |
オリジナルソフトの『モバイルスケジュール』。上半分にカレンダー、下半分にスケジュールと見やすいレイアウトになっている |
なお、Pocket PCは、Palm-size PCのGUIを一新しているが、従来のPalm-size PC用のアプリケーションもほぼ問題なく動作する。その際には、左下にスタートボタン、各種メニューを上部に配置する従来のレイアウトに切りかえることで、従来アプリとの互換性が保たれている。市販/フリーのソフトは貴重な財産であり、それを保持する仕組みとなっているのはうれしい部分だ。
Pocket PCではPalm-size PC用のソフトとの互換性もある。その際は、メニューが位置が従来の配置に戻る。Windowsアイコンとメニューバーの位置に注意 |
このように、E-700はコンテンツビューアーとして高い機能を備えているのが特徴だ。CASSIOPEIAシリーズの特徴である明るく高精細なHAST液晶、MPEGファイルを加工して再生できる動画ビューアー、著作権保護に対応した“SDメモリーカード”なども、Pocket PC標準のブラウザー/メーラーとの連携で生きてくるはずだ。また、今回は試用できなかったが、E-700にはリモコン付ステレオヘッドホン(JK-840HE 2,800円)も用意され、MP3やWMAのファイルを携帯プレーヤーに近い感覚で再生できる。
ビューアーとしてはかなり贅沢な印象だが、今後は、それを生かすコンテンツをどう提供するか、ユーザーに対しどのような使い方を提案ができるかどうかが焦点となってくるだろう。「大は小を兼ねる」という諺はことモバイルに限って言えば当てはまらない。ハードは目的を果たす入れ物に過ぎないからだ。Pocket PCの機能を生かすサービスコンテンツをぜひとも期待したい。
※1 MPEG-1動画を加工した独自形式の動画ファイル(CMFファイル)の再生が可能な動画ビューアー。スペック比較 | ||
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機種名 | CASSIOPEIA E-700 | Jornada 548 |
メーカー | カシオ計算機 | 日本HP |
価格 | オープンプライス | オープンプライス |
実売 | 6万円前後 | 6万円前後 |
CPU | VR-4122-150MHz | SH-3-133MHz |
メモリー | 32MB | 32MB |
ディスプレー | 3.8インチHAST液晶 | 3.8インチSTN液晶 |
解像度 | 240×320ドット | 240×320ドット |
色数 | 6万5536色 | 4096色 |
サウンド出力 | ステレオ | ステレオ |
スロット | SDメモリーカード×1 | CF TypeI×1 |
バッテリー | 7時間(リチウムイオン) | 8時間(リチウムイオン) |
サイズ | 縦128×横81.8×厚さ18.9mm | 縦130×横78×厚さ16mm |
重量 | 218g(バッテリー含む) | 260g(バッテリー含む) |