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【MACWORLD Expo/NY2000 Vol.5】新Power Mac G4上位モデルは、2GHzのPentium IIIクラスの性能、ギガビットイーサネット(1000Base-T)の標準搭載も――基調講演詳報(その1)より

2000年07月21日 00時00分更新

文● 林 信行

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米時間7月19日、午前9時、アップルコンピュータのスティーブ・ジョブズCEOの基調講演で“MACWORLD EXPO NEW YORK 2000”が開幕した。今回は新機種発表がほぼ確実視されていたため、開演3時間前には既に長蛇の列ができあがり、講演会場は開始前から熱気に溢れていた。

9時15分、会場が暗くなりどよめいていた会場が一瞬静けさに打たれる。スクリーンには“Think different”の広告が流れた。
 
広告が終わると左袖からジョブズ氏が登壇し、開口一番、「今日は話すことがたくさんある」と断り、来場者そして講演会場に入れなかった来場者、さらにクイックタイムライブの放送を見ている人々に挨拶をした。  

たくさんの新製品の発表を用意していたジョブズ氏
たくさんの新製品の発表を用意していたジョブズ氏



ジョブズ氏登壇。まずは斬新な発想の『Pro Mouse』の紹介から

続いてジョブズは「まずは誰もが手に触れるもの」、マウスについて語りだした。舞台正面のスクリーンには、現行Macに付属の丸形マウスが大写しになり、ジョブズ氏は「世の中にはこのマウスを気に入っていない人が多いようだ」と語り、この声に答えるべくまったく新しいマウスを開発したことを発表した。スクリーンには新製品、『Pro Mouse』が大きく映し出された。

Vol.4で詳細に触れた、Full-surface(全面)がボタンの『Pro Mouse』
Vol.4で詳細に触れた、Full-surface(全面)がボタンの『Pro Mouse』



ジョブズ氏は新マウスが使う場所を選ばないオプティカル式(光センサー式)であることに触れ、マウスパッドが不要になることを強調、「それではボタンはいったいどこにあるのか?」と問いかけた。実は新マウスは「Full-surface(全面)がボタンになっており、大人でも子供でも、左利きの人でも右利きの人でも操作ができる」というのがその回答だった。

同氏はオプティカルマウスをパソコンに標準添付するのは同社が初めてだとも付け加えた。
 
ジョブズ氏は続いて、「マウスにマッチする新キーボードも用意した」として新製品、『Pro Keyboard』を発表した。「マウス同様キーボードについてもユーザーの声に耳を傾けた。アップル製キーボードでもっとも好評だったのはアップル拡張キーボードだったので、新キーボードではフルサイズのファンクションキーを含む108キーを用意し、さらに音量調整ボタンやディスクイジェクトボタンも用意した」ことを明らかにした(写真)。

音量調整ボタンやディスクイジェクトボタンもある『Pro Keyboard』
音量調整ボタンやディスクイジェクトボタンもある『Pro Keyboard』



新マウスと新キーボードはいずれも今後発売するデスクトップ型モデル全製品に標準添付し、既存のMacユーザーにはApple Storeを通して各59ドルで発売される(講演後から予約受付を開始し、9月には発送する。なお国内でも販売はApple Storeを通して行なわれ価格は各7500円)。
 
「これまで一部のユーザーは我々の製品に付属するマウスを業界最悪のマウスと思っていたようだが、我々はこれを業界最高のマウスに変える」と宣言した。

2個のPowerPC G4を搭載した新Power Mac G4は、2GHzのPentium IIIクラスの性能

ジョブズ氏は続いて「このマウスが付属する新しいコンピューターについて語りたい」としてPower Mac G4の解説を始めた。
 
特に時間が割かれたのがPowerPC G4の性能についてだ。現行Power Mac G4が搭載する500MHz版のPowerPC G4は実に3.5ギガフロップスもの処理能力を達成することを明らかにした。
 
ジョブズ氏はその威力を証明すべく1GHz版のPentium IIIとの処理性能を比較するデモを行なった。比較にはPowerPC G4のSIMD機構、Velocity EngineとPentium IIIのSIMD機構、SSEに最適化されたPhotoshopが用いられた。
 
映画用のポスターを自動的に作成するPhotoshop用スクリプトを両機で同時に実行したところ、Pentium IIIでは124秒かかった処理が、PowerPC G4では100秒で終了。「この結果から換算すると、PowerPC G4の500MHz版は、Pentium IIIの1.2GHzに相当する処理能力を持つ」ジョブズ氏はこう語ると「問題はMHzではない」ことを強調した。

1GHz版のPentium IIIとの処理性能を比較するデモ。ポスターを自動作成するPhotoshop用スクリプトを両機で同時に実行
1GHz版のPentium IIIとの処理性能を比較するデモ。ポスターを自動作成するPhotoshop用スクリプトを両機で同時に実行



  「では、このG4を2つ使えばどんなに速くなるのだろう」。ジョブズ氏はこう語りPowerPC G4を2つ搭載したPower Mac G4とPentium III/1GHzを用いて再度、両製品の処理速度を比較した。その結果、PowerPC G4搭載機は同じ処理をわずか61秒で実行した。この結果から換算すると、2個のPowerPC G4の処理能力を達成するには2GHzのPentium IIIが必要になる。

圧倒的なパフォーマンスを誇るPowerPC G4×2個を搭載する新Power Mac G4の上位モデル。その性能は、2GHzのPentium IIIクラスに相当する
圧倒的なパフォーマンスを誇るPowerPC G4×2個を搭載する新Power Mac G4の上位モデル。その性能は、2GHzのPentium IIIクラスに相当する



「2GHzのPentium IIIを入手するにはまだ12から18ヵ月近くかかりそうだが、我々はこれと同等の性能を持つ製品を今日発売する」ジョブズ氏はこう語ると新しいPower Mac G4ラインアップの紹介を始めた。  

ギガビットイーサネット(1000Base-T)も標準搭載も見逃せない

新Power Mac G4には従来通り400MHz版、450MHz版、500MHz版の3つのモデルが用意される。この内、400MHz版は従来通りCPU1個の仕様だが、上位2モデルでは2CPU搭載が標準仕様となっている。驚くのは、3モデルがいずれも従来通りの価格を継承していることだろう。

ジョブズ氏は「2CPU仕様を標準で採用したパソコンはこれが初めてだ」と強調した。だが、「これだけではない」。これら3モデルはすべてマザーボード上にギガビットイーサネット(1000Base-T)を標準で搭載しているのだ。
 
ジョブズ氏はギガビットイーサネットの速さをアピールするべく非圧縮のSDビデオ(標準品質のビデオ)をネットワーク経由で再生したりランダムアクセスできることを実証して見せた。

新Power Mac G4シリーズのすべてのマザーボード上に、ギガビットイーサネット(1000Base-T)を標準で搭載
新Power Mac G4シリーズのすべてのマザーボード上に、ギガビットイーサネット(1000Base-T)を標準で搭載



次世代OS、Mac OS X、Office 2001:macの紹介、MSのゲーム製品の移植なども

  次の機種の紹介に移る前にジョブズ氏は、話題の次世代OS、Mac OS Xに触れ、同OSがマルチCPU仕様に最適化されSMP(対象型マルチプロセッシング)仕様のOSであることも強調した。
 
その際、話題の同OSの公開ベーター版が9月に配布されること、そして正式リリースが2001年のはじめになることを明らかにした。
 
ジョブズ氏は今回は時間がないとしながらも、簡単にMac OS Xの操作のデモンストレーションを行なった。デモの内容は5月に開催された“Worldwide Developers Conference”とほぼ同じだったが、よく見るとドック部分に(アナログ)時計のアイコンが表示されている点だけ異なっていた。

ジョブズ氏が壇上に招いたAdobe社の社長、Bruce Chizen(ブルース・チゼン氏)氏は「(Adobeでは)100人以上のエンジニアがMac OS X向けの開発に尽力している」ことを明らかにし、新しい2CPU仕様のPower Mac G4が「Photoshopを使う上で最高の環境である」ことを後押しした。

続いて、Microsoft社のMacintosh Business UnitのGeneral Manager、Kevin Browne氏も壇上に招かれ、10月に発表予定の『Office 2001:mac』を大々的に発表、新たに付属する電子メールを融合したPIMソフト、『Entrouge』(アントルージュ)の機能にも触れた。
 
『Office 2001:mac』については後日詳報をお届けしたい(なお、同製品に関する情報は現在発売中のMACPOWER、MacPeople両誌でも簡単に紹介されている)。
 
Microsoft社が登場したことに触れ、ジョブズ氏はMac界で最も人気が高かったゲームメーカーのBungie Software社がMicrosoft社に買収されたことに触れ、Microsoft社のゲーム担当副社長、Ed Fries(エド・フライズ)氏とBungie社の創設者、Alex Seropian氏(アレクス・セロピアン)を壇上に招いた。

Mac用ゲームを開発する新会社を設立し、新しいゲームをMac用にも提供する
Mac用ゲームを開発する新会社を設立し、新しいゲームをMac用にも提供する



Fries氏はアップルとマイクロソフト、そして旧Bungie社は今後、Mac用ゲームを開発する新会社を設立して、Flightsilumator 2000などを初めとするMicrosoft社のゲーム製品群をMacに移植することを約束した。またSeropian氏は、とりあえずはMicrosoft社の新ゲームプラットフォーム、X-Box向けに開発中の新ゲーム、HALOを提供することが第1目標だが、同ゲームをいずれMac用にも提供することを約束した。

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