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市民向け情報サービス『コミュニティネットかに』とは?――“まちづくり交流フォーラム'99”分科会より

1999年12月01日 00時00分更新

文● 野田ゆうき、小林@イアマス

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11月28日、岐阜県可児市総合会館にて、“まちづくり交流フォーラム研究集会 '99 in GIFU ”の第10回目の研究集会が、“地域メディアでまちをつなごう”のテーマで行なわれた。 

会場となった岐阜県可児市総合会館
会場となった岐阜県可児市総合会館



可児市が進める“在宅による情報収集システム”

“まちづくり交流フォーラム”とは、“21世紀のまちづくり”を提言するために、各地各領域で行なわれているさまざまな試みの交流を通じ、新しい文化と新しいコミュニティーの創造を目指している研究集会であり、3年計画で運営されている。昨年、愛知県で開催されたときのテーマは“出合い”。今年は“ディスカッション”。そして来年の三重県では“提言”がテーマとなる予定。岐阜県での会期は10月2日から12月5日までの約2ヵ月。その間に15のテーマ集会が岐阜県各地で開かれる。

午後の討論会には、さまざまなバックグラウンドを持つパネリストがずらりと並んだ
午後の討論会には、さまざまなバックグラウンドを持つパネリストがずらりと並んだ



午前中に行なわれた施設見学会では、可児市(*1)ご自慢の市民向け情報サービス『コミュニティネットかに』(*2)の説明があった。高齢化社会に向けたサービスの1つとして、また公共アクセスの不便さを補完するために、可児市ではすでに在宅による情報収集システムを構築して運用を始めている。この中心となるサービスが、光ファイバーネットを使った『コミュニティネットかに』である。

『コミュニティネットかに』では、インターネットのウェブページを使った情報発信の他に、電話やFAXでの情報引き出しサービス、FAXで送った内容がダイレクトにウェブページとCATVチャンネルに表示できる“FAX掲示板サービス”をサポートしている。

タッチパネル方式の街頭端末からもアクセスが可能。市内9ヵ所に設置してある
タッチパネル方式の街頭端末からもアクセスが可能。市内9ヵ所に設置してある



FAXから送った内容はHTML形式に自動整形した後、担当者のチェックを受け、ウェブに掲載
FAXから送った内容はHTML形式に自動整形した後、担当者のチェックを受け、ウェブに掲載



“地域メディア”への取組みと努力

午後からは“まちづくり交流フォーラム研究集会 '99in GIFU”の実行委員長である林進氏の挨拶で研究集会が始まった。その後、岐阜大学講師の高野春廣氏の司会により、各パネリストがそれぞれの立場からの“地域メディア”への取組みと意見を紹介した。

東海電気通信監理局電気通信部長の岩田耕一氏は、テレトピア構想(*3)の指定地域である可児市を例にとり、東海管内での郵政省の地域情報化政策の現在までの歩みや、他の地域での取組み、今後の課題について語った。

「自立分散型の地域公共ネットワーク――つまり自治体が主体となり、住民と双方向の情報交換ができるネットワークを作ることによって、地域の課題を知り、活性化していくコミュニティーができる。企業、大学、住民、NPOといった人々がまちづくりの手段として、こういうものを活用していってほしい」

名古屋ケーブルネットワーク(株)の加藤篤次氏は、CATV会社の運営を通じ、そのサービスの可能性について語った。

「これからは、従来のローカルニュースだけでなく、視聴者と一緒に制作する番組が必要だと感じる。地域メディアとして、CATVが生活の場においてあってよかったと思われる媒体に育てていきたい」(加藤氏は、全国各地のCATV局制作の番組を放送するチャンネルを開設し、CATVソフトの流通を狙ったが、残念ながら半年で終了した)

下之坊修子氏は、女性6人で大阪のビデオ工房AKAMEを立ち上げた。女性問題をテーマにした自主/共同制作ビデオの上映会、ビデオ講座などの活動を行なっている。

「制作を続ける上で苦労するのは、続けられる場や、発表の場を作っていくこと。活動を通して出会った人々のネットワークは、人を集めるのにとても役立っている。市民レベルで情報を発信したいと思っている人はとても多い。そういった人に向けてのメディアリテラシーを助ける活動を続けたい」

可児市長坂地区自治会副会長の中村裕氏は、自治会活動の中でCATV、そして『コミュニティネットかに』を積極的に利用してきた。今年11月からは自治区内のウェブページも独自に立ち上げていて、地域活動を地域メディアで広報することを目指している。

可児市“桜ヶ丘ハイツまちづくりを考える会”の河崎典夫氏は、「自らが住む、約2600世帯からなる団地の環境を整え、それを守るための活動をしているが、行政のさらなる情報公開を望んでいる」と語った。

情報弱者を作らない仕組みやコーディネーターの必要性

最後に、名城大学都市情報学部の昇秀樹教授は、各パネリストの意見をまとめながら、地域メディアのコンテンツのありかたについて、次のように述べた。

「いままで受け手だった人々が情報を発信できるのはすばらしい。しかし、1人ひとりがどんな情報を収集して、どのように発信するかを考えることは必要だろう。さらに、情報をコーディネートする人間も要るかもしれない。また、メディアのインフラを充実するだけでなく、メディアを使えない人のための施策も考えていかなくてはならない」

会場にはさまざまな年齢層の人々から活発に質問や意見が出された
会場にはさまざまな年齢層の人々から活発に質問や意見が出された



会場から各パネリストに寄せられた質問には、「地域メディアでまちづくりは可能か」、「メディアのインフラは整備されているが、コンテンツの整備は?」などがあり、積極的な質疑と応答が繰り返された。

昇氏が言うように、これからは情報を発信するだけでなく、市民の総意や合意を作り出していくことも地域メディアの役割であろう。そして、“藤前干潟”の市民活動でメーリングリストやウェブページが威力を発揮したように、これからの市民メディアの動向にはますます目が離せなくなってくるだろう。

  • コミュニテイネットかにホームページ
  • (*1)可児市 岐阜県東濃地方の中都市。人口約9万人、3万世帯が住んでおり、このうちの約半数の1万5千世帯が'95年にスタートした第三セクターの(株)ケーブルテレビ可児に加入している。また、同社が今年4月に開始したプロバイダー業には、現在1300件の加入があるという (*2)コミュニテイネットかにホームページhttp://www.city.kani.gifu.jp/ (*3)テレトピア構想――CATV、データ通信、コミュニティー放送などの各種情報通信メディアをモデル地域に集中的に導入し、地域コミュニティーの活性化、地場産業の振興、福祉医療の充実などを狙う構想。'85年以降、全国で181地域がテレトピアの指定を受けている

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