分散オブジェクト推進協議会(DOPG)は19日、異なるメーカーのORB(異なるマシン上で動作するオブジェクト間で、メッセージを交換するためのソフトウェア)製品を使った2フェーズコミットのトランザクション相互接続実証実験に成功したと発表した。2フェーズコミットとは、異なるシステムにある2つのデータベースが、いつも同期したデータをもてるようにする仕組み。この仕組みでは、システム故障が起きた場合でも、データの一貫性を保証しなければならない。
挨拶を行なうDOPGの大島幹事 |
DOPGは、分散オブジェクト技術の普及と、関連製品の相互接続性の実証を主な目的としている非営利団体。メンバーは日本電気(株)、日本アイ・ビー・エム(株)、(株)東芝など14社で構成される。'98年3月に、1フェーズコミットのトランザクション相互接続実証実験を成功させているが、今回2フェーズコミットの実験を成功させた。
この実験は、オンラインで接続された異なるシステムのORB製品間で、トランザクション連携を図ることが目的。通常は、システムによってトランザクション処理の方法が異なるため、異なるシステム間で連携をとることが難しい。
実験の内容は、マルチベンダー環境を利用するユーザーを想定し、サーバーごとに業務が独立しているモデルで実験を行なっている。このモデルは、クライアントとサーバーで異なるトランザクションを使っている。また、それぞれに異なるデータベースを使ったサーバーアプリケーションを動作させ、クライアントアプリケーションから連携させる形態を取っている。検証は、正常な処理を行なう“正常ケース”や、障害が起きた後に自動修復する“異常ケース”など合わせて13通りの実行パターンで行なわれた。
実証実験の参加社と製品は、日本電気(株)の『WebOTX』製品、日本ユニシス(株)の『Transactional
ORB SYSTEMν』製品、(株)日立製作所の『TPBroker』製品、富士通(株)の『INTERSTAGE』製品。
実験の実施は、'99年の3月から4月まで5回行なわれ、すべての検証パターンにおいて接続に成功したという。今まで2社間における2フェーズコミットのトランザクションの相互接続の実例があったが、複数社間で自動修正まで対象とした実証実験の成功は世界でも初めてという。
この成功によって、ORBがマルチベンダーの環境で構築されるEC(電子商取引)システムなどに応用できるとしている。
今回は、この実験以外にも世界最大規模のCORBA/IIOP(*1)相互接続実証実験にも成功したと発表された。この実験の目的は、IIOPでの基本的な相互接続性を実証するもの。実験は10社によって、JavaとC++で記述されたアプリケーション間で行なわれた。検証は、協議会が選んだ約100通りの実行パターンで行なわれた。実験の実施は、'99年9月から'99年4月まで7回行なわれ、実験が終了したすべての検証パターンにおいて接続に成功したという。
この成功によって、CORBA/IIOPが有効かを実証する実験の段階から、実システム構築時にこの実験結果を活用する段階に移ったという。
OMG会長兼CEOのリチャード・マーク・ソーリー(Richard Mark Soley)氏 |
来賓として、OMG(*2)会長兼CEOのリチャード・マーク・ソーリー(Richard
Mark Soley)氏がスピーチを行ない、「今回の実験で、新たな成果を達成されたことは、OMGとして非常にうれしい。インフラのレベルでベンダー間の相互接続ができたことは、大企業だけでなく、中小企業にも大きな影響を与えることだろう」と述べた。
注1)IIOP:Internet Inter-ORB Protocolの略。異なるORB間でメッセージを交換するためのプロトコル。
注2)OMG:Object Management Groupの略。分散コンピューティングシステム開発のための研究と、そこで提案されたオブジェクト技術の実装を専門に行なっている非営利コンソーシアム。