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【INTERVIEW】ボトムアップのネットワーク企画が主婦の手によって、実現

1999年05月24日 00時00分更新

文● 編集部 木内かおり

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サイバー空間を通じて、全国の子供たちが交流、この空間の中で自由に遊ぶことによって、パソコンの使い方、ネットの楽しさ、可能性、出会いを感じてほしい――主婦のネットワークグループのそんな思いが実現した。

主婦のネットワークグループ“Wis”と、“Wis”を運営している(株)マックス・ヴァルト研究所、そしてNTTの協力で、子供たちのネットワーク企画“プチ・ぷらねっと”がスタートした。運営を担当する(株)マックス・ヴァルト研究所代表取締役・横山雅子氏に企画の立ち上げから現在までの流れを聞いた。

――“プチ・ぷらねっと”スタートまでのいきさつを教えてください。

「私たちが主催している“Wis”とは、普段の生活の中で感じた意見や要望を世の中に向けて発信することを目的とした、主婦のネットワークグループなのですが、会員同士の交流には、NTTサイバースペース研究所が公開実験を行なっている3次元空間“インタースペース”を利用していました。そこで昨年の9月ごろから、“このスペースは、子供たちにいちばん適しているのではないか”、“ぜひ、子供たちに使わせてあげたい”という意見がメンバーから出てきたんです。この意見が発端になって、NTTに話したところ、企画の趣旨に賛同してくれてパソコンをお借りすることができました」

もともと“Wis”は、NTTサイバースペース研究所のモニターとして集まった主婦たちのネットワークからスタートした。'98年に同研究所から独立、以後、ホームページ上で主婦の間のネットワークを広げ、さまざまな企業とのタイアップ企画やマーケティング活動を行なってきた。現在500人以上の主婦が、“Wis”に参加している


子供たちが自由にネットワーク空間を行き来する
子供たちが自由にネットワーク空間を行き来する



すべてボランティアで活動開始

――実際に、どのような形で企画を進めていったのですか?

「“Wis”メンバーの中から23人の主婦が集まって、企画がスタート。ネットワークは、宇宙のような無限な未知と可能性に満ちているという意味を込めて“ぷち・プラネット”というネーミングにしました。もちろん主婦の方はすべてボランティアです。」

「それから、実際に学校への働きかけが始まったんですが、これは予想以上に苦戦しました。最初メンバーの主婦たちは、それぞれ知っている学校からあたっていったんですが、さまざまな理由で断られることが多くて……」

――たとえば、どんな理由で?

「教育委員会の指示なしではできないとか、学校側にネットワークに接続できるような環境がないなど。市や区の教育委員会とそれぞれの学校の考え方が複雑に絡みあっていて、インターネットへの対応は地域によってばらばらなんです」

「それでも、主婦の方々は積極的に動いてくれました。中には子供がすでに大きくなっていてもう小学校には通っていないけれども、この企画に参加してくれて、教育委員会に何度も足を運んでいるうちに、反対に学校の先生方が彼女の姿に打たれて、一緒になって教育委員会に掛け合ってくれた……なんてケースもあるんです。主婦の方々の素朴な熱意が、人を動かす原動力になったのだと思います」

――現在、参加校は何校で、内容はどのような感じなのでしょうか?

「'99年3月の段階で、参加校は7都道府県8校になりました。生徒数800人以上のマンモス校や離島にある全校生徒18人の小学校まで、バラエティーに富んでます。この4月からは、新たに3校の分校が参加しました」

ネットワークに興味津々
ネットワークに興味津々



「これまでに計3回のイベントを行ないました。第1回は“ご挨拶会”。3次元空間でおしゃべりや自由に動くことを体験してもらうため、子供たちに自己紹介をしてもらいました。第2回は、“○×クイズ大会”。質問はすべて主婦の方たちが考えました。面白くて、ためになるような質問に答えてもらい、正解数を学校同士で競いあいました。3回目は“給食自慢の講演会”。参加校の1つ、九州の離島の小学校の給食の話をみんなで聞きました」

イベントは、課外活動として位置づけている学校が多い
イベントは、課外活動として位置づけている学校が多い



授業にも生かせる新しい形を模索中

――実際にイベントを行なってみて、いかがでしたか?

「子供たちは楽しんでいましたね。ただ先生方は、この試みを直接授業に生かせる形にしたいと思っているようです。でも私自身は、国語、社会といった従来の科目ももちろん重要ですが、ネットワークを体験する授業、つまりコンピューターやネットワークをどのように使っていくかということを教えていくことは、子供たちにとって、とても大切なことだと思います。そういう現場の声を聞いて、NTTも“ぷち・プラネット”に、○×のマークや絵をはりつける壁、みんなの顔が見えるような仕組みなどを作ってくれました」

○×のマークがネットワーク上にできた
○×のマークがネットワーク上にできた



みんなの顔が見える
みんなの顔が見える



「各学校の先生方もネットワークに興味を持ち、今回の試みを非常によく理解してくださっています。2001年に光ファイバーが整備されたとき、それをどういうふうに教育に活用していくかということも念頭においている。現在、もっと授業に生かせるような新しい形を、先生、主婦、私たちで模索しているところです」

――ネットワークから企画が立ち上がったという、初めての試みでしたが?

「今回の企画の原形は、わたしたちマックス・ヴァルトで立てたものですが、メーリングリストで呼びかけたら、多くの主婦の方々から“ぜひやりたい”というレスポンスが返ってきた。だから、みんなやる気まんまん。学校に企画の趣旨を説明したり、パソコンを設定したり、企画を考えたり…1つ1つすべて手作業で、しかもボランティアでやってくださったわけです。私だったら尻込みしてしまうかも。あらゆる意味で、私自身もこの企画にかかわったことで、勉強になったような気がしています」

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