このページの本文へ

コンピューター、マルチメディアの比重が増した東京国際ブックフェア '99

1999年04月30日 00時00分更新

文● 千葉英寿

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

22日から25日の4日間にわたって、出版業界最大の展示会“東京国際ブックフェア'99(TIBF '99)”が東京ビッグサイトにおいて開催された。今回は、世界25の国や地域から535社が出展され、海外出版社との著作権取引や書店、図書館、教育関係者に対する販促活動の場となっている。展示は、さまざまなジャンルに分かれている。その中から“電子出版・マルチメディアフェア”のコーナーを中心にお伝えする。寄稿者は、フリーランスの編集者/ライター、千葉英寿氏。

ボイジャーはT-Time、新潮社はインターネットラジオを紹介

東京国際ブックフェアは、本来、出版業界の販促活動や出版著作権取引の場として機能してきた。ここ数年のDTP、電子出版の影響により、展示内容に変化が出てきた。本とコンピューターとの関わりから生まれる新しい技術やコンテンツに関心が集まっている。

“電子出版・マルチメディアフェア”において、来場者の足を最も強く引き止めていたのが、ボイジャーと新潮社との共同出展ブースだろう。ボイジャーは、ソフトベンダーとしてだけではなく、電子出版物の発行元としても活動してきている。この展示では、昨夏リリースしたツール『T-Time(ティー・タイム)』を利用したシリーズの紹介に力を入れていた。『T-Time』を使うと、インターネットでのさまざまなファイルのテキストを手軽に縦組み表示できる。T-Timeシリーズは、T-Timeを使って読むコンテンツである。

ひつじ書房との共同出版であるT-Timeシリーズでは、20日に第1弾の『ジャマイカ飛び』(山川健一・著)の販売を開始している。T-Timeシリーズの今後の展開について、(株)ボイジャーの鎌田純子氏は「今後もいろいろな作家さんにお願いし、発行していきます。近々では池澤夏樹さんなどを予定しています」と語った。

やはり電子出版といえば、ボイジャーだろう。意外にも同展示会へは初出展だ
やはり電子出版といえば、ボイジャーだろう。意外にも同展示会へは初出展だ



新潮社は、文芸出版社としては積極的に、デジタル分野に展開している。例えば、月間200万ページビューを数える『Web新潮』を運営している。今回の展示ブースでも、『新潮美術ROM』シリーズなどを紹介していた。これは、ボイジャーと共同販売しているもので、レンブラントなど、フランドル・オランダ絵画の巨匠作品をデジタルに収めたもの。

また、『インターネットラジオ』も紹介していた。これは、俳優が吹き込んだ文豪の文学作品をウェブ上でrealplayerを使用してストリーミング放送するプロジェクトである。俳優として江守徹氏など、文豪として夏目漱石や森鴎外、芥川龍之介(敬称略)など、そうそうたるメンバーが並んでいる。この『インターネットラジオ』は、今秋の有料スタートに先駆けて、20日から無料プレサービスが開始されている。

大手では小学館がデジタル化に熱心

東京国際ブックフェアには、数々の大手出版社がもちろん出展している。しかし、どのブースも一様に、自社出版物を紹介するにとどまっていた。大々的にデジタル展開を紹介する方向性は、あまり見られなかった。

数少ない例として、小学館は、CD-ROMや電子ブック、インターネットでの展開を積極的に紹介していた。電子百科事典『日本百科全書+国語大辞典~スーパー・ニッポニカ』(Windows版。Mac版は7月発行予定)をはじめとする各種電子辞書の類を紹介していた。同事典は、38万項目、9000万文字という膨大な情報量を誇る。

小学館が最も力を入れていたのが、『ドラネット』だといえる。インターネットとCD-ROMを使う、小学生を対象としたオンライン学習システム。ガイド役に同社のドル箱キャラクターであるドラえもんを起用したユニークなプログラムだ。なお、Macintoshには対応していない。Macintoshには子供のユーザーが多いだけに残念である。

小学館ブースで紹介されていたドラネット。同社以外にもこうしたキャラクターを自主学習システムに使用するケースは多く見受けられるが、デジタルメディアをフル活用したものはこれからも増えそうだ
小学館ブースで紹介されていたドラネット。同社以外にもこうしたキャラクターを自主学習システムに使用するケースは多く見受けられるが、デジタルメディアをフル活用したものはこれからも増えそうだ



このほか、同社が運営するサイトとして、『激写』などの篠山紀信氏の作品群を紹介する『インターネット篠山紀信』や新刊書など1万6000点を購入できる“小学館オンラインショップ”が紹介されていた。

トーハンの書籍検索システムは「?」

大手出版取り次ぎのトーハンは、インターネット書籍検索システムの『本の探検隊』を紹介していた。『本の探検隊』は、専門書籍の検索に主眼を置いて構成されている。ビジネス書、コンピューター書、人文書などの専門書4万5000点の書誌データを蓄積している。検索した書籍は注文できるが、注文した書籍は指定した書店に届いて、そこで購入する、という方法をとっている。取り次ぎならではというべきか、しっくりこないシステムではある。

全体を取材して気が付いたのは、2つの動きである。第1は、ボイジャーのように出版コードを持つ会社と組んで販売したり、独自のオンライン書店を作ってダウンロード販売をしたりという、いわゆるインディーズ型の出版形態をとるところとである。第2は、トーハンのようにあくまで出版流通の形態を崩すまいとするところである。

マイクロソフト(株)は、百科事典や英語教材を紹介していた。前者は世界的なベストセラーとなった『エンカルタ総合大百科 99』、後者は英会話学校のECCの授業にも採用されたという『エンカルタ インタラクティブ英会話』である。また、NTTプリンテックは、『インターネット文芸新人賞1999』を紹介、応募を呼び掛けていた。読売新聞社との共催で、SFまたはミステリー、もしくはネットワーク社会を背景とした短編小説を対象とする賞である。

エンカルタシリーズを中心に出展したマイクロソフトはすでに同展示会の常連だ
エンカルタシリーズを中心に出展したマイクロソフトはすでに同展示会の常連だ

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン