このページの本文へ

【NAB99 レポート Vol.2】デジタルラジオで絵が見える?

1999年04月22日 00時00分更新

文● 浅野純也

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

テレビのデジタル化がさかんに話題になっているが、ラジオのデジタル化も当然進められている。日本でも将来デジタル化される地上波デジタル放
送に関連してデジタルラジオ(DAB:Digital Audio Broadcasting)の規格が検討されているし、国境を取り去ったワールドワイドのラジオ放送の動きも
ある。ここNAB99でもラジオ関連のブースはまとめて設置されているが、ラジオやオーディオ関連の展示の中で興味を惹かれたものをいくつか紹介
しよう。

世界をカバーするデジタルラジオ

もっとも壮大な計画を持っているのがWORLDSPACE社のデジタルラジオだ。同社は世界をアフリカ/中東、アジア、北米/南米の3つのエリアに分割、それぞれを担当する衛星を打ち上げて、地上から衛星に向けて放送波を送信、衛星から地上に向けて放送を行なうもの。当然データはすべてデジタル化されており、ノイズなどの心配はない。送られてくるデータのレートは1.5Mbps。パケット化された16Kbpsのストリームの束である。このストリームの重ね合わせによって、音質は従来のAM相当からCD相当まで幅広く対応することが可能だ。また、受信端末(デジタルラジオ)にはデータポートが用意されており、パソコンを接続してプログラム配布などのデータ放送を受信することもできる。

世界中をカバーするデジタルラジオ放送をサービスするWORLDSPACE社のブース
世界中をカバーするデジタルラジオ放送をサービスするWORLDSPACE社のブース



デジタルラジオ放送のカバーエリア。AfriStar、AsiaStar、AmeriStarの3つの衛星でカバーする
デジタルラジオ放送のカバーエリア。AfriStar、AsiaStar、AmeriStarの3つの衛星でカバーする



今回、会場には松下電器産業(株)、日本ビクター(株)、三洋電気(株)、(株)日立製作所など、日本の4メーカーが製造するデジタルラジオが展示されていた。各社ともこれまでのラジオ製品にない凝ったデザインが特徴だが、なんといっても衛星用アンテナとしてよく知られているディッシュアンテナが目立つ。ピンポイントで衛星を狙う必要はあるが、一度衛星を捕まえればノイズの心配はないので、音質はクリアになるという。ただし、現時点ではまだサービスは開始されておらず、会場では疑似アンテナを設置し、デモを行なっていた。すでにアフリカ/中東を担当する衛星「AfriStar」は打ち上げを済ませており、近日中にサービスを開始する模様。今後、AmeriStar、AsiaStarが打ち上げられ、順にサービスが始まる予定だ。この形態のデジタルラジオは、日本のSkyPerfecTV!でも実施されてはいるが、ワールドワイドでの専用サービスの運用はこれが最初になる。

デジタルラジオの受信機は日本の4メーカーが製作。これは松下電器製。4スピーカーでパワフルな再生ができるのが特徴だ
デジタルラジオの受信機は日本の4メーカーが製作。これは松下電器製。4スピーカーでパワフルな再生ができるのが特徴だ



同じく三洋電気製の受信機。薄型のポータブルタイプ。ディッシュアンテナが衛星ラジオならではのデザインだ
同じく三洋電気製の受信機。薄型のポータブルタイプ。ディッシュアンテナが衛星ラジオならではのデザインだ



日本ビクターの受信機。ラジカセ風な雰囲気だが、やはり中央にアンテナがあるデザイン
日本ビクターの受信機。ラジカセ風な雰囲気だが、やはり中央にアンテナがあるデザイン



日立製の受信機。短波ラジオに似た雰囲気を持つ。いずれの受信機もデータポートを装備しており、パソコンに接続することができる
日立製の受信機。短波ラジオに似た雰囲気を持つ。いずれの受信機もデータポートを装備しており、パソコンに接続することができる



ラジオでも絵を見る?

(株)東芝のブースではMPEG-4を使った「見るラジオ」の展示があった。日本で計画されている地上波デジタル放送は、クルマやモバイル機器などの移動体でも受信できるような規格になっていることをご存じだろうか。より幅広い受信層やサービスを狙ってのことだが、デジタル放送は、ただ家の中だけで楽しむものではないのだ。そのデジタル放送(1局のデータレートは約6Mbps)のデータのうち、音声にアサインできる数百Kbpsの帯域を使って、本来“聴く”だけのところで“見て”しまおうというのが、この東芝の展示の狙いである。実はこの数百Kbpsのデータレート、音声だけに使うには十分なサイズがあって、いわば持て余している。そこで、MPEG-4で圧縮したデータを潜り込ませることで、オーディオだけではなく、静止画や動画、テキスト情報を送ることができる。

絵も文字も見えるが、これはあくまでラジオ。ブラウザーの作り込みによって、中央に動画を、その下にテキストをスクロールさせることができる
絵も文字も見えるが、これはあくまでラジオ。ブラウザーの作り込みによって、中央に動画を、その下にテキストをスクロールさせることができる



同じデータで中央部分が静止画状態になったところ。ビデオ部分で約220Kbps、オーディオで64Kbps、データで64Kbpsを使っているという表示が出ている
同じデータで中央部分が静止画状態になったところ。ビデオ部分で約220Kbps、オーディオで64Kbps、データで64Kbpsを使っているという表示が出ている



画面全体を動画にして、テキストを表示した別のコンテンツ。各データが消費するバンド幅が異なっている
画面全体を動画にして、テキストを表示した別のコンテンツ。各データが消費するバンド幅が異なっている



オーディオと動画だけを流すなど、その組み合わせは自由。このMPEG-4のパケットを包み込む外側のフォーマットを変えれば、放送だけでなくインターネットにも応用できる
オーディオと動画だけを流すなど、その組み合わせは自由。このMPEG-4のパケットを包み込む外側のフォーマットを変えれば、放送だけでなくインターネットにも応用できる



ブースでは、256Kbpsのストリームを2本使ったデモが行なわれていた。専用のブラウザーを使って、オーディオを聴きながら、プロモーションビデオと歌詞の表示、コンサート情報を切り換えたりできる。基本的にはデータを垂れ流しているだけだが、コンテンツの作り込み方によっては擬似的にではあるが、インタラクティブな雰囲気を作ることもできる。当然カラオケ的な使い方も可能だ。

当面はカーラジオの延長的な存在として、つまり現在の「見えるラジオ」の先にあるものとして、たとえばカーナビと組み合わせて受信することが想定されている。具体的なサービスについては何も決まっていないが、この東芝のデモ自体は将来のデジタル放送の規格に準拠しているとのことだ。ラジオを聴こうとしたら、動画も静止画もテキストも一緒に降ってくる、そんな時代が目前なのである。

IBMの音楽配信システム

IBMが米国で、あるいは日本で音楽配信について積極的に乗り出したことはすでに発表済みだが、そのデモも行なわれていた。画面写真とあわせて紹介しておこう。これは直接的にはラジオとは関係ないが、たとえばストリームを使ったインターネットラジオや、デジタルラジオとデータ放送を組み合わせたサービスの中で、デジタルコンテンツの購入が可能になる可能性が高いということだ。

ユーザーはまずどんなコンテンツを購入するかを選択し、そのプレビューを聴く。購入するとその曲のデータがサーバから自分のパソコンにダウンロードされる。購入形態によってはそのデータをCD-Rなどのメディアに焼く権利も同時に得ることができる。これはデータのダウンロードと同時にオーサライズに関する情報もくっついてくるためだ。

IBMのElectronic Music Management System。ショップでCDを買うイメージで欲しいデータを選ぶ
IBMのElectronic Music Management System。ショップでCDを買うイメージで欲しいデータを選ぶ



選択して、ユーザー認証が終わり、購入が認められるとダウンロードできる。左下のRECORDの表示は録音可能であることを示す
選択して、ユーザー認証が終わり、購入が認められるとダウンロードできる。左下のRECORDの表示は録音可能であることを示す



IBMではこれを“Electronic Music Management System”と呼んでおり、データ管理やユーザー認証、ダウンロード方法などをまとめたトータルなシステムを提供することになる。

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン