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日本ガートナー、“Dataquest Semiconductor Conference 99”を開催

1999年04月22日 00時00分更新

文● 編集部 綿貫晃

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日本ガートナーグループ(株)は、19日に“Dataquest Semiconductor Conference 99”を品川プリンスホテルにおいて開催した。このカンファレンスは、半導体関連企業を対象にして行なわれたもので、半導体マーケットの各セグメントを取り上げ、分析を行なうものである。

19日は、3つの基調講演と7つのセッションが行なわれた。ここではすべての基調講演と3つのセッションを紹介する。このほかにも“ファンドリ・ビジネス動向を展望する”、“日本の半導体アプリケーション・市場動向”、“半導体アプリケーション・市場動向”、“半導体製造装置・材料市場はどう回復するのか”、“日本半導体産業再生からさらなる創造へ”のせっしょんが行なわれた。

焦点をしぼった事業展開が必要

米ガートナーグループのグレッグ・シェパード(Greg Sheppard)副社長は“世界半導体市場の展望”をテーマーに基調講演を行なった。

半導体市場における応用製品の中で、'97年から2002年までの成長率が高いものは、1:インターネット電話、2:デジタルTV、3:xDSL モデムとしている。これらのなかでも半導体市場にとって、デジタルTVが一番大きなチャンスとなるだろうと述べた。デジタルTVは、2000年を境に急激に伸び、2002年には世界で1000万台を越えると予測している。また、インターネットの通信量が急激な伸びを示し、すでに音声のトラフィックを超えたとし、インターネット電話やxDSL モデムも半導体市場で大きなチャンスをもたらすと語った。

今後の半導体市場に対しては、「'99年から回復が始まり、緩やかに伸びていく。'97年から2002年までの平均伸張率は11.5パーセントとなり、不安定な動きは予想されないため、事業計画は立てやすくなるはずである。ただし、今後はOEMも含めてさまざまな類似商品が出てくると予想され、焦点が定まりにくくなるだろう。企業が今後していかなければならないことは、需要と供給のバランスに注意することと、焦点をしぼった事業展開が必要である」と語った。

米ガートナーグループのグレッグ・シェパード氏
米ガートナーグループのグレッグ・シェパード氏



2001年から球面集積回路を市場に出したい

米ボール・セミコンダクター社の石川社長は、“ボール・セミコンダクターのロードマップ”をテーマに基調講演を行なった。

球面集積回路(IC)とは何であるかというところから、製造方法、製造機器に至るまで、基本的な部分から説明をはじめた。コストが安く製造できることや、クリーンルームが不要なことなど、通常のICチップと細かい比較を行ない、球面集積回路の優位性を訴えた。また、応用例として薬形の体温センサーや、3次元ジャイロセンサー、球面集積回路を敷き詰めた太陽電池などを説明した。3月末に、直径1mmの球状シリコン表面上に形成した集積回路を電気的に機能させることに成功したことにも触れ、ボール・セミコンダクターが市場に登場する日が近いことを強調した。

今後の展開については、「6月からパイロットライン(クリーン・ルームの代わりにチューブで製造するプロセス)と呼ばれる量産システムを稼動させ、今年後半にサンプルを出すつもりである。製造技術は高度でコストがかかるため、他の企業と広くパートナーを組んでやっていきたい。遅くとも2001年から市場に出すつもりだ」と述べた。

PS2が半導体の未来を変えていく

ソニー・コンピュータ エンタテインメント(SCE)(株)の久多良木社長は、“テレビゲーム市場:その進化とこれからのビジネス展望”をテーマに基調講演を行なった。

久多良木社長はPS2のコンセプトについて、「テレビゲームの画像は2Dから3Dへと変わってきている。ゲームの定義も変わってきており、ゲームは“音楽・映画を超えたエンターテメントを造り出すもの”へとなっていく。今までの表現は“Graphics Synthesis(画像生成)”のレベルでしかなかったが、今後は“Emotion Synthesis(情緒生成)”を可能にしなければならない。そのために次世代プレイステーション(以下PS2)を開発した」と語った。

PS2は、ゲームメディアの考えかたが、根本的に異なるとしている。既存の計算機のように元々あるデータを計算して作り出すのではなく、世界(現象)そのものを最初からを創りだそうと考えている。その考えをもとに、アーキテクチャーも今までの延長ではなく、新しく作り出している。PS2の描画性能は、浮動少数点演算の強化により、1秒間に7500万ポリゴンと、現在のワークステーションを超えるレベルであるが、“Emotion Synthesis”を実現するには必要なスペックとしている。

CPUに関しては、「高価なワークステーションは年間1万から2万台出荷しているが、この台数では劇的に性能を上げるCPUを新たに設計し、投資をすることはできない。家庭用であれば、数千万台を売ることが可能なため、このような製品を作ることが可能になる」と述べた。PS2用CPUの大量生産に関しては、「やれる自信はある。PS2が半導体の需要を変え、半導体の未来を変えていく」と自信をもって語った。

欧州ガートナーグループのリチャード・ゴードン氏
欧州ガートナーグループのリチャード・ゴードン氏



投資できるベンダーしか生き残れない

基調講演に続いてセッションが行なわれ、欧州ガートナーグループのリチャード・ゴードン(Richard Gordon)アナリストは“DRAM技術と市場:チャレンジとリターン”をテーマに講演を行なった。

リチャード・ゴードン氏はDRAMのマーケットについて、「DRAMのマーケットは上下の波が激しく、boom/bust cycleと呼ばれる3~4年おきの周期が来ている。需要と供給のバランスがマッチしていれば安定するはずだが、設備投資のタイミングが実際にはうまくいっておらず、今後もこの傾向は続いてしまうだろう。'98年の出荷は前年を下回っているが、これから2001年までは伸びていく。ただし、2002年からは次の周期的な下降時期となるだろう」と述べた。

DRAMの技術について、「2002年までにCPUの標準が400MHzを超え、CPUの速度に合わせた速いDRAMが必要となる。そこで次期DRAMとしてインテルが推進するRambus DRAMがあげられる。インテルの影響力は今後も続くと思われるため、2002年にはDRAMの3分の2がRambus DRAMとなるだろう。今後のDRAMのカギは、このRambus DRAMがにぎることになる」と語った。

設備投資について、「日本のベンダーはDRAMに興味が少なく、DRAMへの設備投資に力を入れていない。市場は2002年まで伸びていくため、今投資を行なわなければならない。台湾のベンダーは現在設備投資を行なっているため、今後は伸びていくだろう。次世代DRAMは設備にコストがかかるが、将来に向けて投資できるベンダーしか生き残ることはできない」と述べた。

インテリジェントなメディアが必要

日本ガートナーグループ主席アナリストの大神氏は“デジタル民生機器の市場展望とこれからの半導体ビジネス”というテーマで講演を行なった。

今までデジタル民生機器と捉えられていた範囲が広がってきており、広義のデジタル民生機器を定義しなければ市場の動きを見ることはできないと述べた。通信機器やコンピュータ機器の機能と融合してできるホーム&パーソナル電子機器がこの定義にあたるとしている。広義のデジタル民生電子機器の市場を予測すると、'97年から2002年までのCAGR(年次平均伸長率)は21パーセントとなり、今後の民生機器の牽引役になるとしている。この市場の発展に求められるのは、情報の形態に関係なく、1つのメディアでコンテンツ(サービス)を受けられることが必要であると語った。

メディアについて、「MP3のように、メモリーそのものがメディアとなって、メディア=半導体デバイスとなっているものがある。また、使い捨てカメラのように、フィルムというメディアを買っているようだが、中にシステムが入っているものもある。今後はメディアとシステムが融合し、メディアを中心に捉えたアプローチが大切になるだろう。さまざまな機器が登場するにつれ、機器の違いを吸収するようなインテリジェントなメディアが必要となる。企業は、メディアとデバイスを連携させた新しい仕組み作りを考え、市場を発展させていく必要があるだろう」と述べた。

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