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【COMDEX Spring Report Vol.1】「2003年にはすべてのデバイスがネットに接続」--Bill Gates氏基調講演

1999年04月20日 00時00分更新

文● 編集部 鹿毛正之

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米シカゴのMcCormick Placeを会場に、COMDEX Spring/Windows Worldが、4月19日(現地時間)からの4日間にわたって開催されている。

初日となる19日の午前9時からは、米マイクロソフト会長のビル・ゲイツ氏が“Enabling the Future with Windows”(Windowsが可能とする未来)と題した基調講演を行なった。会場となった“Arie Crown Theater”は超満員の観客であふれ、入場を待たされた観客が通路を走っていくほどの人気を見せていた。

昨年の失敗を笑い話にする余裕

ゲイツ氏はまず、昨年の“Windows World”で『Windows98』のデモを行なった際に、スキャナーが認識されず、98がハングアップしたアクシデントを紹介。その模様がビデオで放映されると会場は爆笑と拍手で盛り上がり、観客はすっかり“できあがって”しまった。自分のミスを逆手にとって会場全体をリラックスさせるあたりは、スピーチ慣れしているところを感じさせるニクい演出だ。

ここで、そのデモを担当したChris Capossela(クリス・カポッセラ)氏を壇上に上げ、今度は『Windows 2000』のベータ版を使って同様のホットプラグを実演。認識させるスキャナーは、昨年のデモで失敗したものと同じモデル、という徹底ぶりだ。今回は無事にスキャナーが認識され、Capossela氏は「355日間かけて用意してきた甲斐があった」と、面目躍如の面持ちを見せていた。

次に、Capossela氏は、テーブルの上に数々のUSB周辺機器を並べた。スピーカーやマウスはもちろん、指紋認識スキャナーやジョイスティックといった分野でもUSB対応製品が増えている現状を説明した。また、マイクロソフトが新しく開発したキーボードもあわせて紹介。2つのUSBポートを備えるもので、拡張性に優れているとアピールした。

新製品の光学式マウスはマウスパッドいらず

ここでステージには、長さが3メートル近くもあるマウスの模型が登場。これこそ、マイクロソフトが満を持して発表する新製品の『Microsoft Intellipoint Explorer』だ。

ボディーはプラスチック製だが、チタン風の塗装をまとい、金属的な鈍い色彩を放っている。側面の親指側に用意されたボタンは、ブラウザーのBackボタンとForwardボタンの役割を果たすというもの。インターネットの利用を念頭に置いた設計だ。

外見上の最も大きな特徴は、マウスにつきもののボールがないこと。光センサーを利用した光学式マウスで、毎秒1500フレームの分解能を持つ。本体の底面には赤色LEDが備えられており、マウスを伏せた状態でもほんのりと赤い光が周りに漏れてくる作りだ。

機能面では、機械的な可動部分がないため汚れに強く、また必ずしも平らな面で使う必要もないという。そのためマウスパッドは不要で、ひざの上で動かしても十分に動きを認識する。

9月の出荷を予定しており、10月には市場に出回る予定とのことだ。

2003年、すべてのデバイスはインターネットに接続される

次にゲイツ氏は、現在のコンピューターシーンについて、説明した。

パソコンの出荷については、今年中に世界中で1億台を突破、そのなかで特にノートパソコンの伸びが大きいことを指摘し、今年中に米国内だけで760万台出荷されるという数字を挙げた。続いて、2000年には880万台、2003年には1230万台に達するという予測を披露し、“Any Device, Anytime, Anywhere, Internet Connectivity”(すべての機器が、いつでも、どこでも、インターネットに接続できる)というキーワードを紹介した。

また、電話やテレビがコンピューターを補完する役割を担うようになると語り、あらゆるデバイスにはブラウザーが用意されインターネットに接続されるという将来像を紹介した。パソコンについては、今よりも大きなディスプレーを装備し、可読性が大幅に向上するという見通しを語った。

続いてゲイツ氏は、インターネットへの接続性について言及。現在はダイアルアップでのアクセスが主流だが、いずれはLANはもちろん、電力線を利用したPower Line Access、DSL、ケーブルモデム、衛星インターネットなど高速なインターネットアクセスが主流になると語った。2003年までには、ディスプレーを備えるデバイスはすべてインターネットに接続されるようになるという見通しを強調する。

自分自身をギャグにできるのがゲイツ氏の強さか?

もっとも、輝かしい未来について語るばかりではないのが、ゲイツ氏の手堅さ。ここでゲイツ氏は“Impact of Computing”というビデオを紹介し、世間ではインターネットがいまだにさほど認識されていない現状を紹介した。

ビデオには、ABCのナイトショーで人気の司会者であるジェイ・レノ氏がレポーターとして登場。シアトルの街なかで、道行く人にインターネットについて尋ねるという内容だ。このなかから主だったやり取りを紹介する。

・“インターネットはどこにあるの?”という質問をしたところ、答えは「ビル・ゲイツの家の中!」

・“e-mailって何だか知ってる?”と聞かれた若者は、「もちろん、エマージェンシー(緊急)メールだろう」

・ゲイツ氏の写真を見たキャリアウーマン風の女性は、「この人知ってるわ、アップルコンピュータの人ね」

・2000年問題について訊ねられた女性は、「2000年になると、パソコンが爆発するの!」

続いて、ビデオの中ではゲイツ氏がマイクロソフト社長のスティーブ・バルマー氏とともに、テレビCMのパロディーを演じたり、ダンスを踊るなどとおどけたところを見せ、観客を爆笑の渦に巻き込んだ。ソフトな面を見せてマイクロソフトに対して好印象を持ってもらう戦略かもしれないが、世界一の大金持ちが自ら道化を演じられるあたりが、マイクロソフトの強さの一端なのかもしれない。

ネットワーク関連の機能が充実したWindows2000

次にゲイツ氏は、Windowsファミリーについて紹介した。それによると、埋め込みタイプのWindowsがコピー機や各種のスイッチに、Windows CEがPDAに、Windows98が個人ユーザー向け、そしてWindows2000はビジネス用途に使われ、棲み分けがされるという。

そしてスピーチはいよいよ、Windows2000の紹介へと移った。Windows2000にはいくつかのバージョンがあり、オフィス用途の『Professional』、サーバー用途の『2000 Server』に加え、ナレッジマネージメントやeコマースを実現するための『2000 Platform』がラインナップされることを紹介。次に、Windows2000のベータ版を利用したデモを行なった。

デモで紹介したのは、オフィスでの利用を前提とした機能が中心。ネットワークの管理者、クライアントマシンで使用できるソフトを制限できる機能や、部署内で必要なソフトをいつでもサーバーからインストールできる機能などを紹介した。自動インストール機能では、クライアント側でソフトが壊れたりファイルが失われた場合、そのソフトを立ち上げようとすると自動的に再インストールが開始されるという機能も紹介した。

Quality and Service”という機能では、管理者がネットワーク上のデータ転送速度に制限を加えることができる。特定のクライアントが大きなファイルをダウンロードして、ネットワークを独占したりすることがないようにするのが目的だ。デモでは2台のカメラから動画を配信し、片方のデータ転倒速度を制限することで、もう片方の動画がスムーズに再生されるというところを見せた。

“Synchronize Manager”は、クライアントの環境を、ほかのクライアントやサーバーとシンクロさせることができるというもの。ネットワークに接続されたノートパソコンをログオフし、別の場所に持っていってからネットワークに再接続すると、その時点でシンクロしているファイルがアップデートされるというデモを披露した。

これらのデモを終えた上で、Windows2000のベータ3版が今月末までに配布されることを発表。これまでに14万社のデベロッパーと、50万人のテスターが、Windows2000の開発に関わっているとのことだ。

ゲイツ氏が語る未来像、インターネットは偏在する

最後にゲイツ氏は、コンピューターの未来像について、現状と将来像とを比較しながら紹介した。

・CRTは液晶ディスプレーに置き換わる
・インターフェースはUSBとIEE1394に統一される
・インターネットへの接続は、デジタルワイヤレスが主流へ
・バックアップは自動化され、自動レストア機能も標準となる
・テキストと静止画へ減り、動画と音声が主流となる
・ディスプレーの大型化や表現力の増大により、テキストや画像の可読性が大きく増す
・ユーザーインターフェースは、キーボードとマウスから、音声認識や手書き認識はもちろん、視線認識も利用される

そして、インターネットはあらゆる場所に“Pervasive”(広がる・普及する)ようになると語り、講演を締めくくった。

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