このページの本文へ

【エデュテイメントフォーラム'99京都 Vol.2】脳の鏡、インターネット利用免許、ねっかチーフ--教育現場の模索

1999年03月30日 00時00分更新

文● 文:樋口由紀子 yukiko@kb3.so-net.ne.jp、撮影ほか:野々下裕子

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

苅宿氏は長年にわたって小学校教諭を勤めている。コンピューターを使った、そこでの取り組みを書いた著書もある。現在も小学生たちの指導にあたっており、現場の様子をビデオで紹介した。以前、教鞭をとっていた東京都港区立神応小学校の図工室における、実践する学習環境“らしさ工房”の様子や、苅宿氏自身が開発に携わった再構成型描画ソフト『脳の鏡』を使っての実習風景などである。

苅宿氏が制作にも関係した『脳の鏡』という描画ソフトを使って“ストーリーを作る”という副産物を生み出したのは、他でもない子供たちであった
苅宿氏が制作にも関係した『脳の鏡』という描画ソフトを使って“ストーリーを作る”という副産物を生み出したのは、他でもない子供たちであった



“らしさ工房”では、多摩美術大学の学生たちが実習に参加。苅宿氏が担任をしていた小学生たちが、大学生となって助手を勤めることもある。さらには中学生の援助者もあらわれた。こうしたつながりが、新しい教育の形を支えているといえそうだ。

今回、会場に集まった人のほとんどが教師ではなく、企業関連者だった。
今回、会場に集まった人のほとんどが教師ではなく、企業関連者だった。


・“らしさ工房”(神応小学校のページより)
 http://shinno1.shinno-es.minato.tokyo.jp/
sensei/koubou.html


インターネットの利用免許

次に、ニューヨーク市立大学グローバル・エデュケーションのSheila Gersh氏が登壇した。インターネットを学校教育に用いた“School Link(国際教育通信ネットワーク)プロジェクト”を紹介した。“School Link”は、日米合同のプロジェクトで、関係者が3週間に渡って話し合い、構築したものである。事前にトレーニングを受ければ、教師は誰でも参加できる。そこでは、他の教員が作ったプロジェクトを見たり参加したり、あるいは教材として活用したりできるようになっている。

「“School Link”をはじめとしたインターネットを使った教育プロジェクトの面白さは、異なる文化が出会うこと」と語るGersh氏
「“School Link”をはじめとしたインターネットを使った教育プロジェクトの面白さは、異なる文化が出会うこと」と語るGersh氏



Gersh氏は、また、教師が教え方で迷ったときに、他の教師の教え方から学び、有用な手引きを得るといったサイトを紹介した。そうしたサイトの1つ“E-Pals”では、あらかじめ登録された各地の教員や生徒のリストから、コミュニケーションしたい条件の相手を検索できるようになっている。

Gersh氏は、教室にインターネットを導入することによって、子供たちが、国境を越え世界を身近に捉えることができるようになると述べた。3つの力が養われるので、それが可能になるという。(1)コミュニケーション力、(2)リサーチ力、(3)リソースを公開する力--である。

日本文化の多くをインターネットで学んだというGersh氏は、セミナーの最後に日本の文化でも一番好きなKaraokeサイトを紹介してくれた
日本文化の多くをインターネットで学んだというGersh氏は、セミナーの最後に日本の文化でも一番好きなKaraokeサイトを紹介してくれた



会場から、プライバシー保護の面でインターネットには問題があるのでは、という質問があった。この点についてGersh氏は、段階としてWWWよりも、まずは電子メールから始めるのがいい、と答えた。また、有害なサイトを見るという問題については、事前に生徒や両親らと契約を交わし、問題があった場合には利用の権利をはく奪するといった対応をしている。そのためGersh氏は、インターネットの免許のようなカードを作って、それを配付するといった活動も実行している。

Gersh氏は、今後、もっと多くの人々が教育関連のサイトに参加することを期待しており、実際、、参加の呼び掛けにも力を入れている。自宅で14時間も仕事することがあるが、メールがあるため孤独感がないという。何よりも彼女自身が、ネットのコミュニケーション力を実感していることが感じられた。

・School Link
 http://www.schoollink.org/

・E-Pals
 http://www.epals.com/

ねっか設立のチーフ・・・

別の会場では、デジタルソサエティーのコンサルティング会社、草鈴社代表取締役の今野恵理子氏が活動を報告した。テーマは、“米国コンピュータ教育団体との交流プログラム”。今年7月に予定しているNECA(National Education Computing Association、ねっか)Japan設立に向けての活動についてである。

アメリカでの活動を語る今野氏は今回もNCCE'99視察ツアーを終えたばかり。画面はSIGGRAPHで注目を浴びた日本のエデュテイメントコンテンツ
アメリカでの活動を語る今野氏は今回もNCCE'99視察ツアーを終えたばかり。画面はSIGGRAPHで注目を浴びた日本のエデュテイメントコンテンツ



今野氏は、NECA Japanの役割を、日本より約5年進んだ米国の情報教育における事例を日本に紹介すること--と説明する。アメリカのNECC(Northwest Council for Computer Education)によるイベントをビデオで紹介した。なお、このイベントは、企業の援助で運営されている。米国企業の情報教育への関心が高いことがうかがえた。

NECA Japanの設立記念プロジェクトについて説明する今野氏
NECA Japanの設立記念プロジェクトについて説明する今野氏



なお、今野氏は、教室への導入に比べて遅れを取っている、職員室へのパソコン普及についての意欲も見せていた。NECA Japanの設立記念プロジェクトとして、“先生にパソコンを使ってもらおう~学校の先生にパソコンプレゼント~”を計画している。

・NECA(ねっか)設立準備室
 http://www.cyber-net.co.jp./necc/

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン