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「コピー機やファクスにも透かし認証を」----ベンチャー企業GIMLが開発

1999年03月17日 00時00分更新

文● 報道局 原武士

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 グローバル・インターテック・マーケッティング・リミテッド(有)(GIML)は本日、東京・日本外国特派員クラブにて同社が開発した電子透かし技術に関する記者発表会を開催した。併せて、その技術を組み込んだソフトウェア『Content Lock』のコンセプトを発表した。この電子透かし技術は、ハードウェア、ソフトウェアに依存しない広い汎用性を目的で開発を進めているもの。電子透かしを破壊する目的で作成された『unZign』や『Stirmark』といったソフトウェアを通しても透かしが残るという。最大の特徴はプリンターやコピー機、ファクスにもセキュリティー機能を組み込む目的があるという点。

 この技術は、現在アメリカ国内において特許を出願中だが、アメリカ国内では開発せずに、日本国内で開発を進めるという。その理由は、アメリカ国内で開発した場合、日本への暗号技術の輸出に規制がかかる可能性があるためという。開発は、キヤノン販売(株)と稲畑産業(株)をビジネスパートナーに進められる。これは、同社の代表取締役社長の福島正也氏が、キヤノン販売(株)に在席していた経緯があるため。

 同社、代表取締役社長の福島正也氏はこの製品の開発コンセプトを紹介した。

福島正也氏、米アップルコンピュータ社が日本法人を設立したときの初代社長。キヤノン販売(株)に10年間勤め、昨年12月にGIMLを設立した 福島正也氏、米アップルコンピュータ社が日本法人を設立したときの初代社長。キヤノン販売(株)に10年間勤め、昨年12月にGIMLを設立した



「情報の漏洩は、ネットワークよりもむしろオフラインセキュリティーの占める割合が多い。オフラインセキュリティーとは、ファクスやコピー機といったものを利用した、社内・部署内のセキュリティーのことで、ネットワークセキュリティーやエンタープライズセキュリティーとは外れたところにある。この、オフラインセキュリティーには大きな穴が存在する。今回、この穴を解決する商品を開発した」

「インターネット周りのセキュリティー製品は、多くの会社から販売されている。しかしこれらは、オフラインのセキュリティーには適用されていない。コピー機やファクスなどには、セキュリティーが組み込まれていないのが現状である」

「企業内部で発生する不正は、社員によるものが圧倒的に多い。社内の役員しか持っていないような重要書類が、誰か別の人の机の上にあったとき、その書類が誰によって複製されたものかはわからない。しかし、今回発表する技術を利用すれば、誰が、いつコピーを取ったかという情報もわかるようになる」

「先日、電子透かしに関する技術を日本アイ・ビー・エム(株)が発表した。しかし、これらと競合するつもりはない。競合というよりは、むしろ共存していきたいと思っている」

 キヤノン販売のソフト統括事業本部システム研究室の小早川徳次氏は、この技術を利用することのメリットを紹介した。

この技術の開発にかかわる小早川氏 この技術の開発にかかわる小早川氏



「この製品を利用することで、誰がいつ、不正なコピーを行なったかまでがわかる。これは不正コピーに対する大きな抑制力となる。また、電子的なデータにおける信頼度が高まることで電子図書館や出版社などのコンテンツビジネスや、運転免許証などの証明も電子情報で処理できるようになる」

「今回の開発に対して我々が苦闘している部分は、応用性が広く汎用性が高くなければならない、どのような機種でも利用でき、品質が高くなければならない、という2点。したがってCPUはi486以上という2世代前のものから対応させ。使用メモリも少なく抑えるようにする」

「このソフトウェアは、はじめは、コピー機やファクスといったハードウェア用のドライバーとして供給する予定。チップとして開発されれば、ハードウェアに組み込むことでさらに普及するだろう」

 この技術を使ったContent Lockは現在開発中で、一般市場に出回るのは、静止画像に対応するものが今年の年末、動画に対応するもので来年の年始の見通しという。販売はOEMの販売形式を採用する予定。

 記者会見の中では技術的な部分は公開できないとのことで、記者からの質問にもほとんど回答がなかった。埋め込まれる情報は、著作権所有者のIDを利用すれば書きこみ・解読できるという。また、既存の透かし認証技術と異なり、IDを利用することで認証情報を後から追加できるともいう。会話の中には「ランダムアルゴリズムを採用した」とか、「周波数方式でも統計方式でもない、まったくのオリジナルの認証埋め込み方式」というキーワードも確認できた。

 最後に福島氏は、今後の経営戦略について以下のように語った。

「著作権保護のマーケットは、今年で300億円くらいといわれている。しかし、今後はこの市場は急発展すると考えられる。特に動画、音楽に対する需要が急増していくと考えられる。2003年には5000億円に拡大するだろう。我々は、今回の技術に対して、2003年にはオフラインでの利用に4割、オンラインでの利用に2割のシェアを獲得すると考えている。そして、その売上は、キヤノン販売、稲畑産業、GIMLの3社で3等分する」

    GIML問い合わせ先:TEL.043-274-9211(4月2日より)

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