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【INTERVIEW】不要パソコンの大量廃棄を見ると切歯やく腕----“パソコンボランティア・カンファレンス'99”直前インタビュー

1999年02月25日 00時00分更新

文● 船木万里

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 日本障害者福祉協議会の主催する、“パソコンボランティア・カンファレンス'99”(PSVC'99)が来たる3月6、7日の両日、早稲田大学国際会議場で開かれる。これに先立ち、パソコンボランティアとして活躍する田中克典教諭(埼玉県立川口工業高等学校 電子科)に、その活動内容や今後の課題などについてうかがった。

田中克典氏。埼玉県立川口工業高等学校の電子科教諭を務める田中克典氏。埼玉県立川口工業高等学校の電子科教諭を務める



パソコンが命綱となる人々

----パソコンのリサイクルを思い立ったきっかけは?

「大学生のときでした。ある日、パソコン通信の会議室で“使わなくなった古いパソコンの使い道はないだろうか?”という書き込みを見つけたんです。パソコンを教材として利用している養護施設を見学したことがあったので、“施設などに寄贈してみてはどうだろう”と書き込んでみたら、他の参加者からも賛同を得ました。そこから不要なパソコン、古くなって使わなくなったパソコンなどを集め、障害者などの施設やボランティアの方々に配付するというリサイクル活動が始まったんです」

----パソコンの必要度がそれほど高いというわけですね?

「私のホームページでは、中古パソコンを希望する人、寄贈できる人、それぞれが書き込めるページを作り、メールを受け付けています。障害を持つ人にとっては、パソコンが“ライフライン”になることがありますよね。手足が不自由で外出のままならない障害を持っていたり、会話が不自由だったりしても、パソコンによる通信上では関係ありません。誰とでも自由に会話し、さまざまな資料を閲覧し、ショッピングを楽しむことができる」

「それから、視覚障害者を支えるボランティアにとっても、パソコンは重要なツールになっています。手作業ではかなりの労力を必要とする点字翻訳の作業が、パソコンさえあれば翻訳ソフトによってスピーディーに処理できますから。でも現在、行政の定める障害者の日常生活用具の配布品目には、パソコンが含まれていないんです。パソコンが運良く障害者の手に渡っても、健常者さえ最初は使いこなすのが難しい道具だけに、講習やトラブルシューティングなどには、ボランティアの手が不可欠です」

「最近では、草の根的活動を行っている小団体が全国各地に点在しています。私の所属するパソコン通信の会議室にもそれがあらわれています。数年前から徐々に、障害を持つ人々をサポートしようという“パソコンボランティア”の動きが始まり、さまざまな活動を実行するようになりました」


周辺機器まで開発するメンバーも

----パソコンボランティアの具体的活動とは?

「パソコンボランティアは、地域に密着して活動しています。施設や学校で講習を開いたり、外出の不自由な障害者などのお宅を近隣のメンバーが訪問して、トラブルに対応したりといったことです。私自身も、パソコンリサイクルのお手伝いの他、月1回は県の施設を訪ねて、パソコンに関する困りごとの相談にのるという活動を続けています」

「ハードに強いメンバーは、各個人の障害に合わせた周辺機器の開発にも取り組んでいます。ゲームのコントローラーのように操作できる障害者用パソコン入力機器や、手の不自由な人の操作ミスが少なくなるよう、キーボードをカバーするガード装置などです」

----活動における問題点は?

「パソコンリサイクルの活動でも、最初は大学のバックアップがあったのです。そこで、保管場所が確保できたものの、卒業してからはそういうこともできなくて。全国から寄せられる不要パソコンを自宅に保管して、必要とする障害者やボランティアの方々に送るのを続けるのは、個人としては結構大変です」

「最近では、ホームページ上で“需要”と“供給”とを結び合わせ、直接やりとりしてもらうという“縁結び”活動が中心です。これに加え、施設などでパソコンの疑問や問題を解決するボランティア活動を続けています。しかし、やはり個人対個人のパソコンの受け渡しのサポートは、このごろ行き詰まっているというのが正直なところです。送料やメンテナンスといったコストがかかることや、需要と供給のバランスが取れないという問題などのためです」


不要パソコンの大量廃棄の話を聞くとつらい

----解決策としては?

「このごろ、企業の“不要パソコン廃棄”が問題になっているようです。新製品の発売に応じて、まだ使えるハード機器を何十台、何百台と廃棄処分にする企業もあると聞きました。“粗大ゴミ”扱いのパソコンが、リサイクル活動によって利用できれば理想的なのです。しかし、単に廃棄するよりコストがかかることから、企業側は消極的です」

「それでも、最近ある会社から協力の申し出がありました。新しい活動形態の発展が期待できるかも知れません。これからはさまざまな方面へ呼び掛けて、不要なパソコンを必要な場所へ提供するという流れを、ぜひ作っていきたいですね」

 今後、こうした需要と供給の流れが整備されれば、今まで以上にパソコンが障害者の生活を豊かなものにできるはずだ。田中教諭は、そのための第一歩として今回のカンファレンスでも、多くの企業や行政側に向けてリサイクルを呼び掛けたいと語った。

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