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【『共生する/進化するロボット』展】「ヒト型ロボットからGUIを超えるインターフェースが生まれる」~早稲田大学ヒューマノイドプロジェクトを語る

1999年02月03日 00時00分更新

文● 報道局 佐藤和彦

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 NTTインターコミュニケーション・センター(株)(ICC)が東京・初台の東京オペラシテイで開催中の“『共生する/進化するロボット』展”では、3回目のシンポジウムとして、早稲田大学ヒューマノイドプロジェクトのメンバーによる“ヒューマノイドロボットの現在と将来”と題する講演が行なれた。ヒューマノイドロボット(ヒト型ロボット)の研究によって得られるものは何かを中心に、各講師の発言を紹介する。

●「ヒト型ロボットからGUIを超えるインターフェースが生まれる」~橋本周司教授~

橋本周司早稲田大学理工学部応用物理学科教授。早稲田大学ヒューマノイドプロジェクトの座長を務める
橋本周司早稲田大学理工学部応用物理学科教授。早稲田大学ヒューマノイドプロジェクトの座長を務める



「そもそもこのプロジェクトが始まったのは、故・加藤一郎教授が、早稲田大学を中心に仲間を募って、'73年に二足歩行のヒト型ロボット“WABOT-1”を作ったことに始まる。続いて'84年に同じメンバーで“WABOT-2”を作り、その流れが'92年スタートの早稲田大学ヒューマノイドプロジェクトへ引き継がれた。'95年に“HADALY-1”、'97年に“HADALY-2”、“WABIAN”という2つのロボットを発表した。現在50人くらいのメンバーで、プロジェクトを進めている」

「われわれが、このプロジェクトでめざしていることは、単にヒトのかたちをしたロボットを作るということだけでなく、ヒトと共存し、コミュニケーションをとることのできるロボットを作りだすことだ。ロボットがヒトとコミュニケーションをとるためには、見る、聞く、触る、という物理的なレベルだけでなく、論理的なレベルで物事を認識する機能を備える必要がある。こうした技術的課題を検討するために、われわれのプロジェクトは研究を行なっている」

「こうした技術的課題が克服されて、人間とコミュニケーションできるロボットが誕生すれば、新しいマンマシンインターフェースが生み出されたことになる。現在、パソコンで用いられているGUI(Graphical User Interface)を使いこなすには、ある程度の知識が必要で、キーボードやマウスといった入力装置に慣れる必要がある。しかし、人間とコミュニケーションできるロボットならば、言葉とジェスチャーで相互に意思の疎通が図れることになる。これは人間のあらゆる情報チャンネルが、ロボットに対して解放されたことを意味し、本当のマルチメディアの時代が到来することになると私は思っている」

●「誰が何を話しているかを認識させるのは、新しくて重要な問題」~小林哲則教授~

小林哲則早稲田大学理工学部電気電子情報工学科教授
小林哲則早稲田大学理工学部電気電子情報工学科教授



 ヒューマノイドプロジェクトは、人間とロボットの共生、思考空間と行動空間の共有、協調作業の実現といったことをめざしている。これを実現するには、複数の人のいる場所において、ロボットがいろいろな人の話を聞き分ける必要がある。いままでの人間と機械の関係では、人と機械とは1対1で情報交換することを想定していた。しかし、われわれは誰が何を話しているかを見分ける機能をロボットにもたせようと試みている。この試みは、非常に新しくて重要なテーマであるといえるだろう。しかし、この機能を備えるには、音源認識、ジェスチャー認識、話者認識、顔認識、連続音声認識といったさまざまな機能を統合したシステムを構築する必要がある。これを実現するにはまだまだ時間がかかりそうだ」

●「ヒト型ロボットの自由度が、人とのコミュニケーションの可能性をもたらす」~高西淳夫教授~

高西淳夫早稲田大学理工学部機械工学科教授
高西淳夫早稲田大学理工学部機械工学科教授



「ヒト型ロボットは、産業用ロボットに比べるときわめて高い冗長自由度を持っている。産業用ロボットには、ある目的の仕事をする機能しかないが、ヒト型ロボットには、50を超える部位に自由に動く機能が与えられている。この自由度は、無駄なものと見ることもできるが、こうした自由度があるからこそ、人とロボットのコミュニケーションの可能性が生み出されている。単にロボットを動かすだけではなく、動作に心理モデルを組み込むことによって、あたかも感情があるかのように、ロボットを動かすことが可能となる。快と不快、覚醒と眠り、確信と不確実という3つの軸によってプログラムを作成し、感情を示す動作を表現できる」

体をゆすって軽快に歩く“WABIAN”体をゆすって軽快に歩く“WABIAN”



 ここで、同氏は、早稲田大学ヒューマノイドプロジェクトが'97年に発表した“WABIAN”を紹介するビデオを流した。確かにこの“WABIAN”は、怒っているような感じや、悲しそうな感じ、そして楽しそうな感じの3つのパターンの歩き方を披露した。

 1つ1つの技術は、まだまだ未成熟だが、ヒューマノイドプロジェクトやヒト型ロボットの今後に、大いに期待をもてる内容であった。

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