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「仏では5年後に40万端末の医療ネットワークを実現――MDX研究会第1回学術集会」

1998年11月27日 00時00分更新

文● メディカルソフト研究所 馬場幹彦

 医療関係のネットワークの相互接続を目的としたMDX研究会(水島洋会長)の第1回学術集会が22日、大阪の国立大阪病院で開かれた。70名ほどの参加者が熱心な討議を繰り広げた。フランスでは5年後に40万端末の医療ネットワークを国家プロジェクトで実現するという。国内でも個々の医師の熱心さでは、それに負けない取り組みが進んでいる。

「ネットワークを管理以外に活用するのも国立病院の役割」

 まず、国立大阪病院の井上通敏院長から全国232の国立病院、療養所を結ぶ厚生省のHOSP-netの紹介があった。HOSP-netは病院管理を目的として'99年3月に開設された事務部門の専用ネットワークである。このシステムを管理だけではなく、多方面に生かすのも国立病院の役割であると強調した。国立病院間連携による広範囲の臨床研究に活用することで将来の医療政策に生かされる貴重な実証データを得ていくというのである。

 ネットワーク本来の機能が十分に発揮できれば、感染症対策などの政策医療の推進や地域連携の促進といった目的を果たすのに大きな力となる。潜在力を秘めたネットワークの存在が非常に大きく感じられた。

井上通敏国立大阪病院長
井上通敏国立大阪病院長



 大阪病院では院内業務を司るオーダリングシステムが早くから稼動しており、検査情報などを扱っている。またイントラネットにも積極的に取り組み、各種のメーリングリストを活用している。日報、週報のペーパーレス化や部長会、医長会などの院内会議の効率運用が達成できている。またこのシステムはインターネットに接続されており、各医師のE-mailも病院案内を通して公開されているという。そのため外部の人からも電子メールを送ることができる。

 ネットワークの進展に伴ってデータ形式の標準化や病院運営の効率化および診療レベルの均一化などが進み、よりよい医療を受けられる条件が整えられるとすればありがたい。我々患者の側からも大いに期待したいところである。

「フランスでは5年後に40万端末の医療ネットワークが」

 次に、国立がんセンター研究所の水島洋会長が“諸外国の医療ネットワーク事情”と題して講演した。フランスで国家プロジェクトとして整備の始まった医療ネットワークプロジェクト(RSS)など海外事情の紹介があった。

 RSSは今後5年間で仏全土に普及させる予定である。完成すればすべての医療関係機関が接続され、40万の端末が稼動する巨大なシステムになる。患者、医療従事者それぞれにICカードが配付され、電子カルテのデータが中央に集められる。診療報酬計算の自動化や疫学モニタリング、医療機関相互間のデータ交換、医師への情報提供といった役割を担うことになっている。すでに、パソコンが苦手な医師のための情報化補助金制度が施行され、一部の地方でネットワーク構築作業が始められている。

国立がんセンターの水島洋会長
国立がんセンターの水島洋会長



 このシステムは'95年に仏首相の提案から始まっているという。'96年1月にはすでに法制化されている。当時の日本の事情を考えるとWindows95の発売で大騒ぎをしていたころであり、筆者(馬場)は我彼の差を感じざるを得ない。仏政府は、本格的普及を前に医療情報化本部という組識を作り、政界実力者を当てて、国民や医師の合意形成を進めている。このあたりは情報と社会のあり方を模索する際のよい手本となってくれるように思われた。水島医師自ら現地視察を考慮しているとのことで続報が楽しみである。

 午後からも、セキュリティー関連やネットワークの運用など興味深いセッションが続いたが、分量が多くなりすぎるので割愛する。“医療情報ネットによる広域連携”という最後のセッションでは医師会などでのネットワーク構築の実例が4件報告された。いずれも意欲ある試みで将来が大いに期待される。

“1地域1カルテ”で医療データの共有を

 その中に国立国際医療センターの秋山昌範医師が構築を進める新宿区医師会のネットワーク化の例がある。ここでは、中核病院と開業医とが診療データ、検査データを共有することで地域医療を円滑に遂行することを目指している。現在100名ほどのメンバーが実験に参加しているというから、かなり本格的なシステムといえる。

 この病診連携システムでは、患者が手術などで中核病院に入院することになった場合、患者の掛かり付けの医師もその間の診療データを共有する。それにより、退院後も的確なフォローができるようにしたものである。そのために“1地域1カルテ”を実現することが欠かせない。今回の実験では、電子カルテ化を実現し、共有すべきデータをデータベースにして医師会のサーバーに蓄積する。訪問看護システムや学校と学校医との連携も全体システムの中に組み込まれている。

国立国際医療センターの秋山昌範医師
国立国際医療センターの秋山昌範医師



 ネットワークの構築にあたってはさまざまな利害が交錯し、また参加医師の教育など広範な問題が生じる。それを時間を掛けて一つひとつ解決してはじめて実現したシステムであるという。筆者は、対象となる患者も含めて参加者の合意の必要性を強く感じた。現在いくつかの都内の医師会から同様のシステム構築の打診があり、将来的には東京都内全域の医師会に広がりそうとのことである。

研究会に大きな期待

 この研究会で基本的には、各種医療関連ネットワークの相互接続の実現を目指して実際のプロジェクトを推進している。しかし、学術集会ではより広範な問題も討議された。医療情報の扱いに関するガイドライン、本人認証、ネットワーク管理、設備や医師の教育の問題、病診連携など多くのテーマが懸案になっている。それらに対して、技術面、運用面からさまざまな問題を提起し、その解決策を模索している。

 制度面での国家レベルの取り組みが不十分な中、さまざまな制約の下で何とかよりよいネットワークを実現していこうとしている。実践的で熱意の溢れたこの研究会の活動は特筆すべきものではないだろうか。

 なお、この学術集会のプレゼンテーションはMDXのホームページで掲載される予定である。

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