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【INTERVIEW】27日発売の『Adobe Illustrator 8.0日本語版』マーケティングマネージャー、伊藤哲也氏に聞く

1998年11月27日 00時00分更新

文● 千葉英寿

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 アドビシステムズ(株)は、27日『Adobe Illustrator 8.0日本語版』の発売を開始した。価格はMacintosh版、Windows版ともに12万円。アップグレード価格は2万5000円である。発売にあたって、同社グラフィックプロダクツグループのプロダクトマーケティングマネージャー、伊藤哲也氏にお話を伺った。インタビュー、構成は、フリーランスの編集者/ライターの千葉英寿氏。

アドビシステムズ(株)のグラフィックプロダクツグループ プロダクトマーケティングマネージャー、伊藤哲也氏アドビシステムズ(株)のグラフィックプロダクツグループ プロダクトマーケティングマネージャー、伊藤哲也氏



プロフェッショナルユースとビジネスユース

----『Adobe Illustrator』は、プロフェッショナル用途にも使えるイラスト作成ソフトウェアとしては、定番になっているといってよいでしょう。今回の『8.0』について、聞き手(千葉)の仲間からは、(1)プロフェッショナルデザイナーおよびビジネスユーザーのクリエーティブな要望を満たしている、(2)これまでは作成できなかった効果を作り出すまったく新しいクリエーティビティーツールを搭載している、(3)イラスト作成ソフトウェアを自ら再定義するものといってよい--といった好意的な評価が聞かれます。
プロ向きに受けている一方で、今回のバージョンからビジネスユーザーをはじめ初心者にも使いやすくなっているということですが、どのような点が変わったのでしょう?

イラスト作成ソフト『Adobe Illustrator 8.0日本語版』
イラスト作成ソフト『Adobe Illustrator 8.0日本語版』



「これまでの『Adobe Illustrator』のユーザーでは、プロフェッショナルのお客様が大半でした。今回のバージョンから、ビジネスユーザーの方もターゲットとして意識するようにしています。そのために、さらに使いやすい操作方法を目指して改良を加えました。たとえば、“バウンディグボックス”は『Microsoft Office』など他の一般的なソフトウェアと同様の操作方法に変更しました。

 いままでのペンツールやベジエなどの扱い方には癖があり、習熟するには時間が掛かりました。今回の“鉛筆ツール”は画期的といえるほど、操作性がアップしました。パスの描き直しも変えたいパスの近くに新しい線を引くだけという非常に簡単なものになりました。紙とペンと消しゴムの感覚にいっそう近付きました」

操作方法を他のアプリケーションと似せることで一般ユーザーにも扱いやすくしている操作方法を他のアプリケーションと似せることで一般ユーザーにも扱いやすくしている



「一般ユーザーにやさしく」

----ペン以外の使い勝手の面では、いかがですか。

「コンピューターを使う大きなメリットの1つといえる、さまざまなアイデアの試し書きが気軽に納得ゆくまで、やさしい操作で実行できるようになっています。ペンタブレットとの相性がさらに良くなったのも特筆すべき点です。

 こうしたやさしい操作は、これまでのプロユーザーの方々にもベネフィットになると言うか、御恩返しできるものと考えています。

 また、“パスファインダ”は、メニューから選択するのではなく、サムネイル付きのパレットに変更され、大変使いやすくなりました。細かい点ですが、フォントメニューからフォントを選ぶときに、フォントネームを日本語で表示できるようになったのも、ごく一般的なビジネスユーザーのための配慮です。

 こうした変更点については、まるきり変えてしまうと、これまでのユーザーの皆様にかえって負荷が掛かってしまいますので、いままでのアプローチ方法も残してあります」

図形を2つ描いて、“パスファインダ・パレット”のボタンを押すだけでこのような効果(この例では加え合わせ)が得られる
図形を2つ描いて、“パスファインダ・パレット”のボタンを押すだけでこのような効果(この例では加え合わせ)が得られる



----新しい機能にはどのようなものがあるのでしょうか? 特筆すべき特別な筆はありますか?

「特筆すべきと考えているのは“アートブラシ”、“散布ブラシ”、“カリグラフィブラシ”、“パターンブラシ”の4つの“ライブブラシ”です。これには、あらかじめ800種類のオブジェクトを納めた“ブラシライブラリ”があります。そこからオブジェクトを選び、パスに沿って自由に配置したり、変更したりできます。この機能はビジネスユーザーにとって、大変ベネフィット(利益)があると考えます。

 例えば、チラシや告知などを作成するときに、手軽な操作で短時間に、これまでとは比べ物にならないほどのクオリティを備え、インパクトのあるドキュメントが作れます」

ブラシも同様にボタンを押すだけ。こちらには800種類ものオブジェクトが用意されている
ブラシも同様にボタンを押すだけ。こちらには800種類ものオブジェクトが用意されている



高価格である分のメリットはあるのか

----そうした新機能や改良点が素晴らしいものであることは理解できましたが、ビジネスユーザーやコンシューマユーザーにとって、価格設定が高いことには違いありません。そのあたりを含めて『Adobe Illustrator 8.0』の優位点はどのあたりにあるとお考えですか?

「特にWindows市場では、安価なドローイングソフトがたくさんありますね。これまでは、パンフレットやDMなどは外部のデザイン会社に外注し、オフィス内では社内報や懇親会などお客さん向け以外の作成に使われていたのが実情と思います。

 しかし、今後は外注費は削減されながらも利益を向上させるために小部数のセールスツールは社内でデータ作成する必要に迫られる傾向があります。しかも、競合社に勝つためには見栄えの良いものを迅速に仕上げ配布することが重要です。

 初めからすべてを『Illustrator』で描き起こすのではなく、以前にデザイン会社から納品されたプロのデータや製造や設計部門のCADデータ、EPSデータを再利用したりすれば、より説得力のあるものとなるのではないでしょうか? 『Illustrator』ではすでに製造業でのシェアも非常に高くなっています。

 少し乱暴な言い方かも知れませんが、さまざまな業界での標準となっている『Illustrator』を選んでいただければ、まず、他の部門などのデータの再利用が容易に可能となります。さら、必要に応じて出力ショップや印刷会社で扱えるデータを作成できるわけです。

 ビジネスユーザといっても確実に成果や利益を出さなければいけない点では、それぞれの分野でのプロといえますよね。そういった意味で、Illustratorは、やっぱりプロ用ソフトで、この場合はビジネスプロのためのソフトと言えるかも知れません」

----プロの場合、定型処理が多くなりますが、それを考慮した機能はありますか?

「製品自体では、“アクション”機能(指定した処理を自動で実行する)のアクションセットを150種類用意しました。今後、プラグインなどを出しているサードパーティーベンダーから、独自のアクションセットが出てくることも考えられます。そうした拡張性があるのも優位点です」

----市場でぶつかる製品は、何だとお考えですか?
「ソフトウェアの機能だけではなく、トータルクオリティーを提供するものですから、私どもは他のソフトがコンペティター(対抗製品)になるのではなく、ビジネスユーザの方の用途によって選んでいただければ良いと思っています。

 価格だけを比較すればたしかに高価だろうと思います。しかし、『Adobe Illustrator 8.0』により、自分でプロレベルの成果物を生み出す喜び、コストダウンできるメリットをぜひ理解していただきたいのです。仕事で本気で使うなら『Adobe Illustrator 8.0』が最善であることを知っていただきたいと考えます」

前バージョンでは出力に不満が

----『Adobe Illustrator 7』では出力の問題などプロフェッショナルのユーザーの評判は芳しくなかったと聞いております。プロユーザーへのメッセージをお聞かせください。

「まず、今回のバージョンアップは大変バランスの取れたものであると申し上げたいのです。『Adobe Illustrator 7』への不満では、特に『Adobe Illustrator 5.5』ユーザーからの“ショートカットの変更”に対する声が多かったのです。しかし、これには、他のアドビ製品のユーザーから“ショートカットを統一して欲しい”という声に応えるために変更した経緯があります。

 次に、よく問題視されていた出力の不具合についてです。実際には、具体的に不具合の事例をわたしどもにご報告いただいたものに関してはすべて修正しています。ただ、実際に『Illustrator』が原因となる不具合に直面した方が少なく、他の人からの情報だというケースが多かったのが残念です。

 この出力の課題については、今回、日米でほぼ同時開発する際に、米国本社に日本語の環境での日本語版をテストするチーム、そして、日本ではプリンターなどの出力機などについてチェックするチームをおいて対処しました。また、βサイトの協力でも、出力に問題が起きていませんので、ぜひ、ご安心いただきたいと思います」

「新規ユーザーで大幅増を狙う」

----販売ではどのようなプロモーション展開をお考えですか?

「他のアドビ製品、例えば、『ImageReady』や『ImageStyler』などウェブグラフィックのアプリケーションとのソリューション展開について説明や事例の紹介をしていきます。広告を出しますし、ビジネスユーザーをターゲットとしたガイドブックも提供する予定です。また、代理店ベースでのソリューションセミナーも実施します」

----どの程度の出荷を見込んでいますか?

「数字は公表しておりません。Windows市場での新規導入率は非常に高くなると予想しています」

無料体験セミナーを全国で開催

 以下の答え手は、アドビのチャネルセールスのアシスタントマネージャー酒井聡子氏である。

----プロモーション策について、教えてください。

「『Adobe Illustrator 8.0』の発売日である27日から大阪・日本橋を皮切りに“Adobe Illustrator8.0無料体験セミナー”を開催します。初心者の方でも使いやすいツールや機能を追加しております。追加したツールによって創造性あふれる作品が表現できます。今まで無理だと諦めていた方も、ぜひともこの機会に体験していただきたいですね」

アドビシステムズ(株)チャネルセールス アシスタントマネージャー、酒井聡子氏アドビシステムズ(株)チャネルセールス アシスタントマネージャー、酒井聡子氏



----全国で実施されるのですか。
「次のような予定になっています。興味のある方は各店にお問い合わせいただきたく存じます。

 11月27日(金)には、上新電機(株)のJ&Pテクノランド(大阪・日本橋)、電話(06)634-3158。

 11月28日(土)には、(株)大塚商会のαランド時計台(札幌)、電話(011)281-3270。

 11月28日(土)および29日(日)には、ラオックス(株)のザ・コンピュータパソコンスクール(東京・秋葉原)、電話(03)3253-9837。

 12月5日(土)~6日(日)、12日(土)~13日(日)には、(株)デオデオのComCity(広島)、電話(082)240-3382、および、(株)ベスト電器のコンピュータウンふくおか(福岡)、電話(092)752-0001」

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