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デジタルコンテンツクリエーターのためのイベント“ContentCreation + NICOGRAPH 98”が開幕

1998年11月26日 00時00分更新

文● 千葉英寿

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 (財)マルチメディアコンテンツ振興協会および日本経済新聞社が主催する2D/3D CGとデジタルデザイン、そしてコンテンツ制作、送出、流通のためのコンベンション、“ContentCreation + NICOGRAPH 98”が、25日、幕張メッセにおいて開幕した。その模様を、千葉英寿氏が報告する。

『アンツ』と『A BUG'S LIFE』も登壇!?

 17回目を迎えるNICOGRAPHは、日本版SIGGRAPHとして、CD-ROMをはじめとすマルチメディアコンテンツの成長とともに歩んできた。回を重ねる間、ゲーム業界は成長し、映像産業のSFX導入が激化してきた。こうした動きを受け、最近では、2D/3D CGを中心としたコンテンツクリエイションのテクノロジートレンドショーとして押しも押されぬ存在となってきた。

17回目を迎えるNICOGRAPHの全景。日本コンピュータグラフィックス協会とマルチメディア振興協会とは合併し、マルチメディアコンテンツ振興協会(MMCA)となった。それを受けて、“MULTIMEDIA '88”として始まったイベントの後継イベントなどとNICOGRAPHとが一体化した
17回目を迎えるNICOGRAPHの全景。日本コンピュータグラフィックス協会とマルチメディア振興協会とは合併し、マルチメディアコンテンツ振興協会(MMCA)となった。それを受けて、“MULTIMEDIA '88”として始まったイベントの後継イベントなどとNICOGRAPHとが一体化した



 その証しとして、展示会場では(株)スクウェアや(株)ナムコといったゲーム制作会社のブースが人気を集めていた。
 また、25日のコンファレンスには、業界最大手のSFX制作会社、Digital Domain社のCEO、スコット・ロス氏が登場。また、スクウェアUSAの橋本和幸氏や代表作に『攻殻機動隊』がある映画監督、押井守氏といったコンテンツクリエーションのキーパーソンが多数登場する。27日のコンファレンスも要注目。先立って公開された『アンツ』の制作を担当したPacific Data Images社のKen Bielenberg氏や、まもなく公開されるディズニーの『A BUG`S LIFE』を制作したPixar社のKeith Olenick氏といったフルCGアニメの先駆者が登場する。


スクウェアは『FF VIII』の未公開映像を上映!

 展示会場の中心は、コンテンツ制作を主眼とした2D/3D、アニメーションなどのソフトウェアを紹介する企業。その中で、ソフトウェアやハードウェアを組み合わせてソリューションとして紹介する企業がいくつか見受けられた。また、クリエイターの求人を受け付けるブースや(学)電子学園がソニーマーケティング(株)などと設立した「3D plus」をはじめ、デジタルクリエイターを養成する各種専門学校の出展も目立った。
 さまざま形式での出展の中で、その重低音で会場にただならぬ雰囲気を加えていたのは、(株)スクウェアのブース。『ファイナルファンタジーVIII』の最新未公開映像を10分程度のムービーとしてブース内シアターで上映。毎回、来場者が長蛇の列を作っていた。

 同様に、(株)ナムコのブースも多くの来場者の注目を集めていた。格闘ゲーム『鉄拳3』の映像を中心にその制作の環境と過程を紹介した。同社のゲーム制作の中核となるモーションキャプチャーシステムが初公開され、ゲームコンテンツ制作の裏側をみることができる興味深いものとなっていた。

スクウェアブースに列を作る来場者。残念ながら会場内の撮影はNG スクウェアブースに列を作る来場者。残念ながら会場内の撮影はNG



こちらはオープンスペースでセミナーを開いたナムコ
こちらはオープンスペースでセミナーを開いたナムコ



 また、ユニークだったのは、各社のモーションキャプチャーのデモだろう。(株)CSK、ダイキン工業(株)をはじめとするあちこちのブースでは、黒いフィットスーツを身につけた女性が登場。彼女らがモーションキャプチャーを装着し、これをデモ画面のキャラクターと連動させるというデモンストレーションを行なった。

 (株)CSKのブースで紹介された『X-IST』でデモを演じた女性によれば「人間工学に基づいて作られており、かなり動きやすい。開脚だってこのとおり」とのこと。デモ画面と比べても、かなりスムーズに再現することができるようだ。

COMTEC(ダイキン工業)ブースでは『LIFE SOURCE/Emotion Capture System』のスムーズさをダンスで表現していた
COMTEC(ダイキン工業)ブースでは『LIFE SOURCE/Emotion Capture System』のスムーズさをダンスで表現していた


ImageCraft(CSK)ブースでは、Windows NTマシンで使うことができる『X-IST』を紹介 ImageCraft(CSK)ブースでは、Windows NTマシンで使うことができる『X-IST』を紹介



3Dソフトとノンリニアシステムとの統合が進展

 ソフトウェアでは、3Dソフトを中心にノンリニアビデオ編集との統合化に注目が集まっていた。

 (株)ディ・ストームでは、OPEN GLに対応したNewTek社の『Light Wave 3D』のMacintosh版や新たに登場したアニメーションペイントソフト『AURA』を紹介した。さらにD1非圧縮I/0カード『Whiteboard Studio』を紹介、これでNewTek社がAmiga時代に提供していた環境が再生されたといえる。同社ではこれら3製品を60万円台という低価格でパッケージ提供するということだ。

 『SOFTIMAGE 3D』を、あちこちのブースで見かけることができた。ダイキン工業(株)では、ノンリニアとSOFTIMAGE 3Dとの統合環境を提供する『SOFTIMAGE DS』を中心に紹介していた。なお、『SOFTIMAGE』の権利は、マイクロソフト社からノンリニアテクノロジーのキープレイヤーであるアビッド社に渡っている。

 オートデスク(株)は、パソコンベースの3D CGで首位と目される『3D Studio MAX』の最新バージョン2.5を中心に紹介した。(株)Tooのブースでも『3D Studio MAX』を紹介し、『paint*』、『effect*』による画像合成、映像制作を提案していた。

 シリコングラフィクスの関連企業であるAilias Wavefront社の『MAYA』も(株)CSK、住商エレクトロニクス(株)など複数のブースで紹介された。『MAYA』は、モデリング、レンダリング、アニメーションの統合化されたパッケージソフトである。住商エレクトロニクスでは、この『MAYA』のハンズオンコーナーや『MAYA』のプラグインである『MAYA Cloth』のデモも行なっていた。

映画『ロスト・イン・スペース』を素材にデモしたオートデスクの『3D Studio MAX』ブース
映画『ロスト・イン・スペース』を素材にデモしたオートデスクの『3D Studio MAX』ブース


SOFTIMAGE製品を前面に押し出したCOMTEC(ダイキン工業)
SOFTIMAGE製品を前面に押し出したCOMTEC(ダイキン工業)



『Light Wave 3D』を中心にAmiga時代の再来なるか?
『Light Wave 3D』を中心にAmiga時代の再来なるか?



Pentium II Xeonマシンが登場

 ハードウェアは単独で出展したのは、富士通(株)のみである。Pentium II Xeon-450MHzプロセッサーを搭載したハイエンドマシン『FMV-Pro』を出展、VRML制作のデモンストレーションを行なっていた。富士通以外にハードメーカー単独の出展は見受けられなかったが、会場内の各ソフトベンダーがハードの紹介にも余念がなかった。

 業界浸透度の高いUNIXマシン、日本シリコングラフィックスの『OCTAIN』や『O2』は、多くのブースで見受けられた。また、最近、ますますメジャーソフトの移植が進んでいるWindows NTプラットフォームのマシンも数多く見ることができた。

 住商エレクトロニクス(株)のブースでは、Pentium II Xeonプロセッサ搭載マシンとして、日本アイ・ビー・エム(株)の『IntelliStation Z Pro』やINTERGRAPHの『TDZ 2000』といったマシンがデモ機として使用されていた。前出のオートデスクでは『3D Studio Max』を搭載したコンパックの『Professional Workstation』シリーズを紹介していた。

 また、Pentium IIを凌駕するとの声もあるCPU、PowerPC G3を搭載するアップルコンピュータの『Power Macintosh G3』もあちこちで見掛けた。2Dグラフィックを引っ張ってきたクリエイター層の強い指示を受けているPower Macintoshだけに、実際にデモに触れている来場者が多かったのもうなずける。

 そうした中で、アップルコンピュータは、主催の日本経済新聞社との共同企画としてQuickTimeを中心としたソリューションおよびコンテンツを各サードベンダーが出展する『QuickTime パビリオン』を開催していた。

QuickTimeパビリオンには、イメージアンドメジャーメントなどが出展
QuickTimeパビリオンには、イメージアンドメジャーメントなどが出展



さらに専門性の高いショーへ

 昨年は“NICOGRAPH”、“MULTIMEDIA”、“DIGITAL CONTENTS FESTIVAL”の3展示会を併せ、マルチメディアに関する網羅的な総合展示会として“Digitalmedia World”が開催された。今年はまた新たに“ContentCreation+NICOGRAPH 98”として開催されることとなった。デジタルコンテンツの制作現場を第一に考えた、より専門性の高いコンベンションとして再構成されたのだと筆者(千葉)は解釈している。

 その背景には、ネットワークインフラの高度化やメディアの大容量化がある。特に、NINTENDO 64やDreamCastといった高性能ゲーム機の台頭やDVDメディアの本格的な始動、さらにはDirecTVやSKY PerfecTVといったデジタルコンテンツをメインとしたデジタル放送の開始が、再編成の引き金となっているといえるだろう。

 今後、そうしたメガメディアが通常のものとなってくる。そのトレンドのもとで、デジタルコンテンツの現場は、よりパワフルでより繊細なコンテンツを生み出すハードやソフト、ソリューションを必要とするようになる。それらの動向を押さえるのに最適な展示会として、NICOGRAPHの重要度はますます増すことになるだろう。

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