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「出会い系サイトはフィルタリングしたい」----“新100校プロジェクト東海・北陸地区活用研究会(下)”

1998年11月26日 00時00分更新

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 11月18日、新100校プロジェクト東海・北陸地区活用研究会が愛知県女性総合センター(ウィルあいち)において開催された。

 当日は基調講演、事例発表に続き、“2003年に向けて”というテーマでパネルディスカッションが開催された。
コーディネーターは南山大学教授の後藤邦夫氏。パネリストとして、中日新聞社記者の渡辺道彦氏、名古屋市情報処理教育センターの木村正郎氏、名古屋市立西陵商業高等学校教諭の影戸誠氏、富山県総合教育センター、研究主事の藤井修二氏の4名が参加した。

南山大学教授の後藤氏南山大学教授の後藤氏



 各パネリストの発言は以下のとおりである。

「仮想インターネット体験で教師の不安を除く」

後藤「2003年にはほとんどすべての学校にインターネットの環境がやってくるという方針が定まっている。これに関する取り組みについては?」

渡辺「新聞社のホームページでは、アクセスの時間帯などから主にビジネスマンや学生の利用が多いように身受けられる。新聞社に寄せられる意見はいまでも電話や投書が主流。電子メールの利用は限られた年代の限られた層にしかみられない。
 ゆえにインターネットは今現在市民社会すべてにとっての道具になっているとは実感として感じられない。そこで2003年の計画を大きな期待を持って見詰めている」

木村「現在名古屋市内374校をどうネットに接続するかを検討中である。教育にネットを利用する際の、先生方の不安を取り除くため、センターとしては教職員研修を中心に施策を施している。すなわち、インターネット導入後の生徒の教育についての仮想インターネット体験によるシミュレーションなど実施している。これからの取り組みとして既に先生方の持っている教材を幅広く共有しあえるようなデータベース作りに可能性を探っていきたい」

「生徒が発信する情報をもとに授業計画」

渡辺「生徒自身が価値を見出せる授業がしたい。先生はあくまでもコーディネーターに徹する、その中でインターネットを使うことによってこれだけのものが得られるということを教えていきたい。
 例えばインターネットを通じて自分が世界とつながっているという実感を与えてやることができる。実際には国際Team Teachingに取り組んでおり、海外とのメーリングリスト上でのミーティングや意見交換を実行している」

藤井「すべての学校をインターネット接続するとひとくちにいってもいろいろなレベルがある。ダイヤルアップでネットに接続しているパソコンが学校に1台あるということでも接続なのだから。
 富山県では現在、接続するだけというのはそろそろ卒業して次の段階に進もうとしている。今のセンターでのコンセプトは“生徒が発信する情報をもとにした授業計画をたてていく”というものである。

 接続については必ずルーターを使って接続すること、ネットワーク図を提出することが校内ネットワーク導入の条件となってきている。ダイアルアップ接続はネットワークとみなさないという姿勢に立ってのことだ。2003年に向けてますますダイナミックに情報が動くことを期待している」

「フィルタリングサービスを含む学校向けプロバイダー」

後藤「先ほどもとりあげられたとおり、情報発信についての考え方、そしてフィルタリングについての考え方が問題となってくると考えられる。その辺りについてはどうか?」

木村「小学生にネットを見せるときに、YAHOO!KIDSなどで対応する部分もあるとは思う。しかし高校生レベルになると雑誌に氾濫するURLを見てパソコンに直接
打ち込んでしまう。となるととてもこれでは対応できない。
 そこでどうフィルタリングを掛けていくかという話になる。私達としてはフィルタリングサービスを含む学校向けプロバイダーということを視野に入れていかなければならないと思っている」

影戸「インターネットの影の部分が取り沙汰されることがとかく多い。しかし、影の部分というのはネット以外でも生徒を取り巻く現実のなかに非常に多く含まれている。アクセスはログの解析である程度管理できることでもあるので、あまりそこに固執する必要はないのではと思う」

右から渡辺氏、藤井氏、木村氏、影戸氏
右から渡辺氏、藤井氏、木村氏、影戸氏



「出会い系サイトにはフィルタリングを」

藤井「しかし、ログ解析を全アクセスに対して施していくというのは到底無理な話である。これから問題になるのはいわゆる出会いサイト系になっていくのではないかと見ている。この類に対するフィルタリングを、業者に頼らずにある程度教育現場サイドから掛けていくシステムを作るべきではないか」

後藤「一般的に有害といわれるサイトを見るのでも、見たいという意思を持って見るのと何も知らない小学生が見てしまうのとはまったく意味が違う。後者のようなことはさすがに都合が悪い。もちろんそうならないようなシステム作りは必要。その中で、学校ごとにそのフィルタリングは必要ないということであれば外してしまえばいいのではないか」

「研修してから経験より、経験を積んでから研修」

後藤「次に、運用管理について。実際ネットワークを学校内に導入するとなると教員にその管理が求められてくる部分がある程度出てくると思うが、その点に関しては」

影戸「欧米にはInternet Technorogy Teacherという制度がある。これは授業の技術的な準備をする教員のことなのだが、日本にもこのような制度が導入されれば、また状況も違ってくると思う」

藤井「富山県総合教育センターでは、ネット導入前に運用担当者研修というものを実施している。しかし、このような研修よりも実際導入して経験を積んでからもう一度研修に来てもらったほうが先生にとって身になるようだ。例えばルーターの設定やホームページのアップロードでつまずくパターンが多い。
 インフラやハードばかり税金で整備しながら実際のところ使いこなしていない学校も存在するという現実がある。これは私達としても苦い現実であるといえる」

 2003年に向けての決意を確かめ合い、今回は課題についてとりあげたが、これはあくまでメリットを踏まえた上での議論であるという観点を付け加えたところで閉会となった。

 2003年までに校内LAN、校内イントラネットが現実のものとなるは明確である。ネットと学校、この一見不整合にもみえる2つのコミュニティーが今後どう関わり、まったく新しい何かを生み出すことができるのか否か。これからも注目していきたいところである。

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