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MITメディアラボの特別協力のもと“WEARABLES TOKYO”開催

1998年11月25日 00時00分更新

文● 報道局 西川ゆずこ、伊藤咲子

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 コンピューターを“着る”時代のライフスタイルと最先端テクノロジーを探るシンポジウムおよびファッションショーである“WEARABLE TOKYO”が本日、“ContentsCreation+NICOGRAPH98”と同じ幕張メッセにて開催された。

「外出する前に、ヘッドマウントディスプレーを頭にかぶり、装着したコンピューターに電源を入れる」今だと、この服装はちょっと変。でも、この奇抜なファッションを町中で見かける日も近いかもしれない。


ファッションショー

 注目のファッションショーでは、そんなファッションや、ライフスタイルを、MIT(マサチューセッツ工科大学)メディアラボの特別協力のもと、バンタンデザイン研究所/バンタンインターナショナルが企画演出した。日常生活、スポーツ、仕事、さらには社交の場に至る“ウエアラブル”を提案。日常のファッションに浸透する日は近いのだろうか。

デートの途中では、映画情報やチケット予約も“ウエアラブル”でデートの途中では、映画情報やチケット予約も“ウエアラブル”で



電子メール、インターネットも身軽電子メール、インターネットも身軽



各選手のデータ、過去のゲームデータを参照しながらスポーツ観戦
各選手のデータ、過去のゲームデータを参照しながらスポーツ観戦



パーティーでも“ウエアラブル”。出会った相手のデータを瞬時にインプットパーティーでも“ウエアラブル”。出会った相手のデータを瞬時にインプット



音楽を奏でる服。MITメディアラボの学生が、鍵盤が埋め込まれたジャケットや音の出る靴を身につけて、ファッションショーのなかで演奏した
音楽を奏でる服。MITメディアラボの学生が、鍵盤が埋め込まれたジャケットや音の出る靴を身につけて、ファッションショーのなかで演奏した



ウエアラブルコンピューターの出現で社会生活はどう変わるのか

 同ファッションショーと併せて、シンポジウムも開催された。ここでは、ウエアラブルコンピューターの実用化による新しいライフスタイルについての講演が行なわれた。

安西祐一郎氏安西祐一郎氏



 まず、慶應義塾大学理工学部長の安西祐一郎氏が“キックオフ・スピーチ”を行なった。ウエアラブルコンピューターの実用化により、人間はどのような行動をしていても受信・蓄積・処理・発信が可能になる。これに対応するため、災害情報や為替情報、競馬情報といった日常生活で重要な情報を統合的に配信する社会インフラの出現は必至であると述べた。

 MITメディアラボからはアレックス・ペントラント氏が来日。“第4のコンピュータ革命”と題した基調講演を行なった。「情報工学のビットの世界と、現実の原子世界の融合が実現するであろう」と、繰り返し強調した。

アレックス・ペントラント氏アレックス・ペントラント氏



 血圧や心拍数を測定できるイヤリングやベルト、動きに合わせて色が変わるドレスなどウエアラブル機器を次々に紹介。これらの機器の外見はいわゆるコンピューターではなく、ファッション性を重視している。MITの学生が装着している写真をスクリーンに映し、「変人に見えないでしょ」と笑顔で紹介した。

 氏は、いわゆる“パソコン”の時代は終わったと語り、このウエアラブル機器の出現=第4のコンピューター革命により、社会生活や健康管理の分野も革命的に変わるだろうと予想している。

編集部注:これらMITが制作した機器の一部は、“ContentCreation+NICOGRAPH 98”の展示ホール内に開設された“WEARABLES TOKYO”のブース内に展示されている。

 ジョージア工科大学助教授のサド・スターナー氏は、“ウエアラブル・ライフ”と題して、実際にウエアラブルコンピューターを身につけ、眼鏡に埋め込まれたモニター“The MicroOptical Eye”に表示される画面を、会場内のスクリーンに表示しながら講演を行なった。

サド・スターナー氏サド・スターナー氏



「ウエラブルでは、技術が問題なのではなく、それを利用することによるライフスタイルの変化が重要な問題です。私は、ウエラブルによって、コンピューターと実生活が融合すると考えます」

「“The MicroOptical Display”の透視型ディスプレーがコンピューターのモニターの役目を果たし、“Twiddler”がマウスとキーボードの役目を果たします。実際に使ってみて、この眼鏡のほうがデスクトップのモニターよりも目にやさしいし、入力は1分間に60ワード可能です」と、同氏はWearable Computerの利点を強調。

「“The Remembrance Agent”では、人が繰り返し行なう行動や考え方をチェック。例えば、過去に同じキーワードで検索を行なったかどうかを、このエージェントは教えてくれる。再び同じ検索を行なわなくて済むのです」

「“American Sign Language to spoken English Translator”では、野球帽にカメラを内蔵して、人が指で作るサインを認識します。現在では、40のサインを認識し、これは98%の認識率です。例えば、この野球帽を被っていれば、手話を知らなくても相手の発するサインを認識することができます」

「そのほか、視覚障害の人にも役立ちます。コンピューターを介して、眼鏡に表示する映像を拡大することも可能です」

「さらには、消費電力の問題まで考えており、歩くことによって電力を供給する靴も試作しているんですよ」と、同氏は“WearableComputer”の可能性について語った

 ウエアラブルコンピューターは、コンピューターや情報通信の業界のみならず、アパレル、ヘルスケアなども巻き込む一大ムーブメントになりそうだ。

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