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“第13回マルチメディアグランプリ 1998”の受賞者発表、グランプリは『Y.M.O. SELFSERVICE』

1998年11月17日 00時00分更新

文● 報道局 桑本美鈴

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 財団法人マルチメディアコンテンツ振興協会は“第13回マルチメディアグランプリ 1998”の受賞者を発表した。“作品表彰の部”の最高賞であるマルチメディアグランプリ・通商産業大臣賞には(株)アスク/アルファミュージック(株)の『Y.M.O. SELFSERVICE』、“人物表彰の部”の最高賞であるマルチメディアグランプリ・MMCA会長賞には任天堂(株)情報開発部部長の宮本茂氏がそれぞれ選ばれた。

『Y.M.O. SELFSERVICE』 『Y.M.O. SELFSERVICE』



 マルチメディアグランプリは、さまざまな分野のマルチメディア作品および制作者を表彰するコンテストで今回で13回目。本年7月から作品を募集、“作品表彰の部”に286作品、今回から新設された“新しい才能の部”に57組の応募があった。各受賞作品は以下の通り。

●マルチメディアグランプリ・通商産業大臣賞:『Y.M.O. SELFSERVICE』(株)アスク/アルファミュージック(株)

<パッケージ部門>
●最優秀賞:『Y.M.O. SELFSERVICE』(株)アスク/アルファミュージック(株)
●アート賞:『クラスタワークス』祝田久
●エンターテインメント賞:『Making of「マルタイの女」』(株)伊丹プロダクション/(株)神原アドプランニングシステムズ
●音楽映像賞:『中島みゆきCD-ROM「なみろむ」』(株)オラシオン/(財)ヤマハ音楽振興会
●教育・教養賞:『T-Time インターネット<縦書き>読書術』(株)ボイジャー
●レファレンス賞:『CD-ROM「世界大百科事典」プロフェッショナル版』(株)日立デジタル平凡社/(株)平凡社/(株)日立製作所
●ビジネス賞:『Our Forest~私たちの森』(株)大伸社
●公共サービス賞:『モハ5250丸窓電車 上田丸子電鉄の軌跡』上田市マルチメディア情報センター
●海外優秀賞:『ポムダピワールドVol.1「へんしんするものあつまれ」』(株)メディアファクトリー

<シアター・展示部門>
●最優秀賞:『日本地図事始-伊能忠敬35000キロの足跡-』(財)電源地域振興センター/(財)新映像産業推進センター/千葉県佐原市
●アート賞:『記憶の庭』港千尋+森脇裕之
●エンターテインメント賞:『びっくりマウス』うるまでるび
●ビジネス賞:(該当作品なし)
●公共サービス賞:『金田一春彦ことばの資料館「日本の方言コーナー」』(株)日本放送出版協会
●海外優秀賞:『Iconica』Troy Innocent(オーストラリア)
●特別賞:『Spectrum of Life Interactive Panel』American Museum of Natural History(アメリカ)

<ネットワーク部門>
●最優秀賞:『まめぞう(by DP-194)』(株)東海デジタルホン/(株)デンソー
●アート賞:『Net Rezonator』伊藤幸治/高木和夫/寺岡宏彰/柄沢裕輔
●エンターテインメント賞:『HOTWIRED JAPAN』ホットワイアード・ジャパン推進協議会
●教育・教養賞:『サイバーミュージアム「火星居住体験館」』(株)大林組マルチメディアスタジオ
●ビジネス賞:『インターネットモール楽天市場』(株)エム・ディー・エム
●公共サービス賞:『わかやま・福祉のまちづくりマップ』和歌山県
●海外優秀賞:『ZX26』大谷秀映

<CG部門>
●最優秀賞:『A Viagem』Images creation and direction of visual effects by Alain Escalle(フランス)
●アート賞:『MIGRATIONS』Constantin CHAMSKI(フランス)
●エンターテインメント賞:『ハッスル!! とき玉くん』(株)トリロジー
●グラフィックデザイン賞:(該当作品なし)
●インダストリー賞:『NHKスペシャル「原爆投下・10秒の衝撃」~広島原爆、CGによる検証と再現~』日本放送協会
●サイエンス賞:『SHAPE OF INVISIBLE CERAMIC』Cite des Science et de l'Industrie - La Villette(フランス)
●特別賞:『TITANIC』Digital Domain(アメリカ)

<「新しい才能」の部 受賞者>
●最優秀賞「金の翼」賞:星健太(DTV/DTMアーティスト、自称「歌って踊れて映像と音楽がつくれるエンターテイナー」)
●優秀賞「銀の翼」賞:佐々木稔(CGIクリエイター、『freedom』('98 WavyAward Opening Movie)制作)
●同賞:Shift(ゲーム企画制作チーム、プレイステーションソフト『XI[sai]』企画制作)

<人物表彰の部 受賞者>
●MMCA会長賞:宮本茂(任天堂(株)情報開発部部長、ゲームデザイナー、プロデューサー)
●MMCAアーチスト賞:伊藤ガビン(編集者、ゲームデザイナー)
●同賞:SWIN/田辺誠一・住正徳(アートユニット、(田辺)俳優・(住)デジタルクリエイター)
●MMCA技術賞:暦本純一((株)ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー、理学博士)
●MMCA特別賞:石原恒和((株)クリーチャーズ代表取締役社長)
●同賞:前田俊秀((株)ブレイン代表取締役)



パッケージ部門審査講評(浜野保樹審査委員)
「不況によりCD-ROMの成り行きは厳しいものがあったが、前年同様の数の応募があり、クオリティも高かった。今回は特に既存のデータをコンテンツ化したものが多く、その中でもY.M.O.は、MPEG Audio Layer3(MP3)という技術を用いて曲を収録、さらにオリジナルソースコードを公開するなど大胆な試みを行ないひとつの歴史を作ったと言える」

シアター展示部門講評(吉原順平審査委員)
「経済状況を非常に受けやすい部門だが、そのなかで公共的な部門が非常にがんばっている。最近インタラクティブなものが多くなってきており、特に伊能忠敬は、地図を静止画で見られるというのがいい。こうしたあまり大きくない市町村からいい仕事が出てくることは日本のコンテンツ水準を上げるものと思う。今後は単なる検索を超えて、見る人とのコミュニケーションが図れるようにならなければならないだろう」

ネットワーク部門講評(武邑光裕審査委員)
「日進月歩するテクノロジを反映する部門であり、今回も新しい発見があった。最優秀のまめぞうは携帯電話に内蔵されたコンテンツ。昨年通商産業大臣賞を受賞した『ポストペット』に通じるものがある。このようなエージェント型のコンテンツが今後ますます発展するのではないか」

CG部門講評(河口洋一郎審査委員)
「今回の応募は海外作品が6割弱、とくに米と仏が多かった。特別賞のTITANICは、レベルが高すぎて勝負にならないという感だ。今回の作品は、失ったものを再現するというものが多かった。最優秀賞のA viagemは金粉絵画を再現したようなもの。エンターテイメント賞のハッスル!!とき玉くんは日本のサイバー文化を象徴したもので非常にクオリティが高い。今後は独自の文化を出すと非常に質の高い作品ができるのでは」

新しい才能講評(天野昭審査委員)
「今回の受賞者はみんな20歳代。星くんは昨年マルチメディアグランプリGIFU'97で優秀賞を受賞し、今回ここまで這い上がってきた。佐々木くんはすでにさまざまな場所で活躍しているクリエーター。Shiftの面々はすでにXIで儲けたのだからいまさら賞は必要ないのではというのもあったが、当時ヒットするかどうかわからないものに人生をかけたという心構えは“新しい才能”にふさわしい」

人物講評(石井威望審査委員長)
「宮本さんは、'96年グランプリを受賞しており、ファミコン時代からゲーム業界をリードしてきた有名人。世界的にも高い評価を受けており、日本のコンテンツを世界にしらしめたという功績に敬意を表し受賞となった。伊藤さんは、さまざまな分野で活躍しており、多くのクリエイターに影響を与えている。SWIMは中学時代からのグループで、学生時代からゲリラ的活動を行なっていたという。田辺さんは俳優、住さんはクリエイターの道を進んだが、一昨年制作活動を再開、昨年パッケージ部門を受賞している。暦本さんは、体全体をインターフェースにしコンテンツの新しい利用活動を研究している。石原さんは、ポケモンを生み出し、多大な経済効果を与えた。今後もプロデュース手腕に期待する。前田さんは、海外のすぐれたCD-ROMを日本に精力的に紹介。こういった人材がマルチメディアコンテンツを支える」

総評(石井威望審査委員長)
「今回は286作品が集まった。また新しい才能の部には57組の応募があった。これらの作品および制作者を審査員69名が審査した。Y.M.O.は2枚組みCD-ROMで、114曲収録した楽曲データベースのLAYER1と、オリジナルソースコードなどのさまざまな素材を収録したLAYER12からできている。データベースの完成度もさることながら、素材利用をユーザーにまかせるといった大胆な試みが評価された。今回は既存のデータを再構成したアーカイブやデータベース系の作品が多く見られたが、その中でそれら素材をユーザーにわかりやすく伝える表現力の高いものが目を引いた。各部門の最優秀はそういったもの。単に保存するだけでなく、それらをいかに利用し、ユーザーに利用させるかが重要。また、斬新なアイデアが評価されたものもある。今後もオリジナリティにあふれた個性豊かな作品がもっと出てきてほしい。新しい才能の部では受賞者以外にも優れたクリエイターが多数いる。経済環境が厳しい中で、優れた作品を作り上げた人々がいることに期待を持った」

 表彰式会場では、アスク代表取締役の天谷修身氏とアルファミュージック取締役の佐藤純一氏、宮本茂氏に簡単なインタビューが行なわれた。

(天谷氏と佐藤氏に)感想を一言
天谷「社内外のみなさんの力のおかげです」
佐藤「アルファの第1作CD-ROMなのでとてもうれしい。Y.M.O.を広いところで知ってほしい、もっと音楽をどんな場所でも聴いてほしいということでチャレンジしました」
制作のきっかけと業務分担について
天谷「われわれはコンテンツを出来合いのものを利用するのでなく、自前の内容で制作している作ってきてる。この作品は、社員に田村というY.M.O.が好きな者がいまして、かなり以前からやろうやろうと佐藤さんのところに通っていたのです。構想3年の作品です。音楽関係の素材部分はアルファさんにお願いしました」
佐藤「Y.M.O.のファン年齢層は幅広いのですが、特にPCをよく使う30代にファンが多いのでデータベースも懲りました。技術的なところはすべてアスクさんです」
今後の豊富を
天谷「今後も新しいカルチャーに挑戦していきたい。音楽分野もおもしろそうですね。これからもがんばります」
佐藤「音楽を作っている立場からコンテンツ分野にチャレンジしたい。またこんな賞がいただければうれしいですね」



(宮本氏に)今のお気持ちは?
宮本「ありがとうございます。大勢でやっていることなので、ひとりでこんな賞をいただくのは……」
たくさんの作品を出されてますが、愛着のある作品は?
宮本「全部ですが、3年越しの制作となる今回の作品(『ゼルダの伝説 時のオカリナ』)には特に愛着があります」
後輩に一言
「ソフトだけでなく、全体構造で新しい仕掛けを行なうことが大事。新しい試みをやってみてほしいと思います」

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