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米デルのマイケル・デル会長兼CEOが来日し講演

1998年11月05日 00時00分更新

文● 報道局 佐藤和彦

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 米デルコンピュータ社のマイケル・S・デル会長兼CEOが来日した。(株)日本経済新聞社の主催する“21世紀の創造型経営シンポウジウム”において、“デルの経営戦略が生み出す次代のハイパー・グロース”と題する講演を行なった。

“デルの経営戦略が生み出す次代のハイパー・グロース”

 マイケル・S・デル会長兼CEOは、まず、「3年間、売上、利益ともに50パーセント以上の伸びを示しているのは、米デルコンピュータ社だけだ。'98年5~6月期もヨーロッパの5ヵ国で100パーセント以上も売上が伸びた。パソコンの台数ベースのシェアは、全世界で8パーセントを占めている」と、同社の成長率が、いかに高いかを強調した。

 そして、この成長をもたらした要因として、“デルモデル”と呼ばれる直接販売をあげている。デル氏は、「デルモデルは、中間の販売業者など不要なものを省いており、ユーザーの意向をダイレクトにくみ取ることができる」と、その優位性を強調した。また、インターネットを使った直販が、急激に成長していることも示した。'98年第1四半期は、“DELL ONLINE STORES”へのアクセスは40万前後で、インターネットでの売上は100万ドル(約1億2000万円:1ドル120円換算、以下同)だったのが、'99年度第2四半期には、サイトへのアクセスは180万前後、売上高は5億ドル(約600億円)に拡大している。

 デル氏は、「インターネットによって、顧客のニーズを正確に把握できるため、在庫日数はわずか8日。あるライバルのPCメーカーは、製品在庫が81日、流通在庫が40日で、121日分も在庫を抱えている。PC業界は製品の陳腐化によって、7日間で1パーセント価値が下がる。121日分なら17パーセントで減価してしまう。これでは、ほとんど儲からない」と間接販売のデメリットを指摘した。そして、「インターネットでの販売金額は、総売上の約25パーセントだが、これを50パーセントにまで拡大させたい」との目標を示した。

大企業向けのサポートサイト“プレミアページ”
大企業向けのサポートサイト“プレミアページ”



 また、米デルでは、“プレミアページ”という、一般の人はアクセスできない大企業向けのサポートサイトを開設していることも明らかにした。同サイトは、世界的な大企業9000社のために、サポート情報を提供、製品の注文も受け付けている。ユーザーサポートの電子メールは、1ヵ月に4万通も発送されるという。こうした合理化により、「デルの人件費は売上の11パーセントと、他社に比べてとても低い水準に留まっている」(デル氏)という。

 さらに、顧客情報をもとに、サーバーを利用して自動的にユーザーサポートを行なえるようにするシステムを構築する計画もあるという。

 デル氏は、今後の方針として、「ここ数年サーバーに力を入れてきたが、サーバーのシェアは全世界で20パーセントを占めたい」との目標を示すとともに、「今後も、IT産業の中心となるのはインターネットの展開である」との見通しを示して、講演を締めくくった。

Q&Aセッション


國領二郎慶應義塾大助教授(左)を司会に、マイケル・デル氏への質疑が行なわれた。
國領二郎慶應義塾大助教授(左)を司会に、マイケル・デル氏への質疑が行なわれた。



 マイケル・デル氏の講演に続いて、デル氏の前に講演を行なった國領二郎慶應義塾大助教授を司会に、Q&Aセッションが行なわれた。講演会の聴衆から、質問したい項目を紙に書いて提出してもらい、それを國領助教授が選択し、デル氏に質問するという形式。質問が記入された用紙は、70枚も集まったという。

----19歳で創業した時点で、これほどまでに成功することを予想していましたか。

デル「成功すると予測はしていなかったが、失敗するとも思っていなかった。1ヵ月の売上高は、100万ドル(約1億2000万円)はいくと思っていたが、この目標は7~8ヵ月で到達してしまった。'92年の売上目標は10億ドル(約1200億円)だったが、実際は20億ドル(約2400億円)の売上だった。94年に3ヵ年計画を立てて、100億ドル(約1兆2000億円)の売上をめざしたが、これも達成した」

「しかし、すべて順調にいったわけではない。'89年頃、在庫管理の問題を抱えていた。今では、在庫管理の面では優等生であると自負を持っているが、当時のことを思うと、最悪のビリからトップに躍り出たようなものだ。また、'94年に初めて赤字を出したが、あの時は、会社が急成長しすぎた反動だった。組織がきちんとできていなかったと反省して、外部から役員を招いた。いまでは、うまく行っていると思う」

----グローバルに展開していく上での、ポイントは何か。

デル「1つの分野に集中することは大事だが、新しい成功のチャネルを見つけることも重要だ。数年前、デスクトップのラインは1つしかなかったが、コンシューマーと企業ユーザーのニーズは違うことに気がついた。企業ユーザーは安定性や信頼性を求めるのに対し、コンシューマーやグラフィックチップなど、最先端の技術にこだわりをみせる。そのため、デスクトップのラインを2つに分けることで、大きく成長することができた。教育分野でも、小学校、中学校と高校では、電話回線の有無など教室の設備が違うので、違う組織がマーケティングをやったほうが、効果的だった。このように、常にユーザーのセグメントを考えることが必要だ」

----デルの直販モデルは、どの程度普遍的なものなのか。ハンドへルドPCや、サブノートパソコンなどでも通用するのか。

デル「多くの会社は、売上のシェアを拡大させることを考えるが、デルは、まず利益を考える。この3年間サーバー、ワークステーション、ストレージ製品に力を入れてた。しかし、ハンドへルドPCやセットトップボックスは、利益をあげるという観点からみると興味はない」

----今朝の日本経済新聞のインタビューで、「自動車向けや家電向けの製品には関心がない」とコメントしていますが、その真意は。

「世界のパソコン市場で9パーセントのシェアを持っていますが、将来的には20~25パーセントのシェアをとりたい。今手がけている製品だけで、会社としては手一杯で、新しい分野は必要ない。いままでの分野で、われわれは十分楽しませてもらっている」

----いまの日本経済に、何か提言をするとしたら。

デル「アメリカ人が何か日本にアドバイスをするのは危険だ、とよく言われるが、それでも良いなら・・。我々が住んでいる世界は、情報が物理的資産よりも重要となっている。8日分の在庫で経営が成り立つ会社はすぐれた顧客の情報を持っている。しかし、悪い顧客情報しか持たない会社は、かなりの在庫を持たないと駄目だ」

「私の感覚では、GDPの何パーセントがIT産業への投資へ向けられるかが重要な尺度だが、日本はこの比率はまだまだ低い。たとえばスウェーデンは、パソコンを購入した企業の税金を減らす政策をとったため、パソコンの普及率は飛躍的に高まった。こういった刺激策が日本にも必要だ」

----15年前に戻って、最初からやり直せるとしたら何をしますか。

デル「1つある。それは、より有能な人材を、早く採用すること。多くの会社は、最初の4~5年間は会社の組織を確立させるのは難しい。19歳でわずか1000ドルの資金で始めた会社なので、有能な人材を集めるのは難しかった。最初から強いチームをつくるのは難しいことだ。そのために、我々には、多くの失敗があった。間違ったことも数多くした。しかし、同じ間違いを繰り返さなかったのが、いまの成功をもたらした最大の要因だ」

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