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NTT DATA INFORUM 1998“情報化がもたらすコンセンサス・コミュニティの時代”---ネットワークで課題を解決する社会へ

1998年11月02日 00時00分更新

文● 報道局 伊藤咲子

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 (株)NTTデータ システム科学研究所は29日、都内で“情報化がもたらすコンセンサス・コミュニティの時代”と題したフォーラムを開催。同社が実施した情報化に関するアンケート調査の結果報告、米地域ネットワーク責任者の講演などを行ない、情報化がもたらすコミュニケーションの可能性を考えた。会場には約350人の情報通信業界関係者、NGO、NPO団体関係者などが参加し、満席となった。

世界に比べて東京ではコミュニケーションが希薄

 第1部は、同社の主幹研究員、恒松直幸氏によるプレゼンテーション。“生活者の社会参加と情報ネットワークの可能性”と題し、東京、ソウル、シリコンバレーなど5都市で実施したアンケート調査とその分析結果を発表した。「あなたの子供の世代は幸せになると思いますか」をキーワードに、日本人のネットワークを使った社会参加の可能性を探った。

恒松直幸氏恒松直幸氏



 最初に、各国の社会参加の意識を問うたアンケート結果を報告。「自分が収入を得ている仕事は、社会で役に立っていると思う」という質問に対して、「あてはまる」と答えた人が東京では81%と最下位であった(1位上海96%、2位ソウル92%)。この他、「過去1年間に参加した地域活動や団体活動はありますか」「家族には何でも相談できますか」といった質問に対しても、東京はほとんどが最下位。仕事を通じて自分と社会との関わりが見い出しにくく、コミュニケーションが全般的に希薄な東京人(日本人)の姿が浮き彫りになった。

 次に、日本のインターネット利用者の社会意識を調査した結果を報告。'90年代に入ってからの“情報化”という言葉は、メディアとネットワークを指していると同社は捉えている。そこで、ホワイトカラーの男性をインターネット利用者と無関心者に分け、「このまま情報化が進むと自分の暮らしは良くなりますか」といった質問を約5000人に投げ掛けた

 「このまま情報化が進むと、自分の暮らしは良くなっていくと思う」「このまま情報化が進むと、自分の世界が広がると思う」という質問に対して、インターネット利用者は約3分の2がそれぞれ「あてはまる」としている。これは、インターネット無関心者のほぼ2倍の数字である。しかし、「このまま情報化が進むと、人とのつながりが密接になると思う」の質問に「あてはまる」と答えたインターネット利用者はわずか29%(無関心者は17%)。この結果を受け同氏は、「インターネットを利用することで自分の世界は広がるが、他者と触れ合うチャンスが広がるとは思っていないようです」と述べた。

ネットワークを活用した“コンセンサスコミュニティー”形成例を紹介

 第2部はゲストを招いてネットワークを活用した2つの“コンセンサスコミュニティー”の代表による基調講演。“デービス・コミュニティ・ネットワーク”はデービス市民を対象にした地理上の結びつきで形成されたネットワーク、“コンサベーション・インターナショナル”は、共通の思想の結びつきで形成されたネットワーク。異なる基盤で結びついている2つのネットワークが紹介された。

 後述する村上陽一氏のレジュメから“コンセンサス・コミュニティ”の定義を引用する。〔生活者自らが主体となって情報を編集・発信して合意(コンセンサス)を形成し、行政や企業を巻き込みながら、自らの社会の課題を解決していく“生活者参加型のネットワーク”が整備された社会を、私たちは“コンセンサス・コミュニティ”と名づけたい〕

 “コンサベーション・インターナショナル”は国際的に環境問題を扱うNGO団体。世界の約350のユネスコ自然保存地域をネットで結び、地域住民を対象に地図ソフトを使った自然保護の啓蒙活動や人材教育を行なっている。ボリビアでは同団体の調査結果が現地政府の開発計画を修正している。

“デービス・コミュニティ・ネットワーク”責任者 リチャード・ローウェンバーグ氏。写真はインタビュー時のもの“デービス・コミュニティ・ネットワーク”責任者 リチャード・ローウェンバーグ氏。写真はインタビュー時のもの



“コンサベーション・インターナショナル”企業パートナーシップ担当副理事グレン・ブリケット氏“コンサベーション・インターナショナル”企業パートナーシップ担当副理事グレン・ブリケット氏



 なお、リチャード・ローウェンバーグ氏についてASCII24が先日インタビューをしている。こちらも参照していただきたい。(http://www.ascii.co.jp/ascii24/call.cgi?file=
issue/981102/keyp02.html )

コミュニティーの持続には結果ではなくプロセスが重要

 第3部は、“コンセンサス・コミュニティにおける情報化を考える”をテーマにしたパネルディスカッション。村上陽一郎NTTデータ システム科学研究所所長を座長に、フォーラムのプレゼンテーター全員と長谷川文雄東北芸術大学副学長、赤池学ユニバーサルデザイン総合研究所所長を迎えた。



 日本では、行政の指導により多数の地域ネットワークが形成されている。ネットワークコミュニティーはトップダウンで形成するより、“デービス・コミュニティ・ネットワーク”や“コンサベーション・インターナショナル”のように、地域や思想で結びついた草の根型ボトムアップの方が発展するのではないか。長谷川氏は「プロダクトではなく、意思決定のプロセスを共有できることが、コンセンサス・コミュニティーの形成・持続に不可欠」と述べた。

 副題の“生産者本位から生活者重視、そして生活者参加型のネットワーク社会へ”という言葉が、必要な視点転換を言い尽くしている。

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