カリフォルニア州デービス市に“デービス・コミュニティ・ネットワーク”(以下DCN)という地域ネットワークがある。'93年、カリフォルニア大学と州交通局によってネットワーク形成のプロジェクトがスタート。今回インタビューをするリチャード・ローウェンバーグ氏は現在その取締役を務める人物。
リチャード・ローウェンバーグ氏。大学ではアーキテクチャー、情報建築を学んだとか |
DCNに関わる以前、氏はコロラド州の人口2000人の村に住みながら地域ネットを運営していた。人口5万人レベルのデービス市地域ネットの運営が魅力だったこと、カリフォルニアに居住経験があり、両親が現在も暮らしていること--この2点がDCN参加決断の理由だ。
農業経営者は80パーセントがパソコンを持っている
---デービスのパソコン利用人口はどのくらいでしょうか「デービス市は、人口5万5000人。その約半分にあたる2万7000人は、カリフォルニア大学デービス校の学生や研究者。彼らを除いた人口のうち、約40パーセントがパソコンを所持している。デービスの主要産業は農業であるが、農業経営者の80パーセントがパソコン保有者。農産物価格、農業技術、気象情報などをWebで調べたり、シミュレートしたりするのに利用しているようだ。
米大手地理ソフト会社ERSIのグラフィックシステムGISをDCN版に改良、DSNのホームページ上で無料ダウンロードができる。これによってデービス地方の地形、水系の水路などの専門的な地図が開けるようになる。地図製作にあたっては、行政に情報公開を要請した。また一方的なデータを見るだけではなく、自分でソフトを使って実証できるのが特徴だ」
GISマップ。農業経営にパソコンを積極的に導入している |
政府からの援助と事業収入とで運営
---DCN運営費用は、どこが負担しているのでしょうか「DCNの運営には、デービス市やヨロ郡、軍や地元ケーブルテレビなどがバックアップをしている。また、DCNもいくつか事業を展開し、市民無料パソコン講座の運営経費などにあてている。
DCNは、過去プロバイダー業を営んでいた。現在は、保持しているドメインを新興のプロバイダー業者に切り売りし、その業者から、ユーザーから徴収する料金の25パーセントをDCNに払うという仕組みになっている。その他の事業は、ISDNなどのインフラ提供、行政や研究所に要請されたアプリケーション開発など。市民無料パソコン教室の運営資金や、アプリケーションの開発にあてている」
---市民無料パソコン教室とは
「パソコンを買うお金がない、または自分で買うのは遠慮したいが興味はあるという人は多い。DCNの活動はインターネット上の活動にとどまらない。そうした市民のための無料パソコン教室も開催している。デービス市庁舎、教育機関で施設と機材を提供してもらい、毎週月曜夜に行なっている。参加条件は特にないが、参加者は高齢者が多く、何度も通う人もいる。パソコン教室は、高齢者同士や、高齢者とインストラクターの若者との社交場にもなっている。
また、DCNのページを作っているのは地元ボランティア。パソコン教室やページ作成でスキルアップを図ってもらうという意味では、DCNのこうした活動は職業訓練の役割を果たしているともいえる」
若者はネット上でのルールをすばやく吸収する
---若者のDCNに対する反応は「カリフォルニア知事選、市議会議員選などを控え、最近のトピックは選挙関連が多い。DCNにはこうした市民の関心が高い事項を扱った会議室があり、書き込みは完全に自由となっている。
こうした会議室や掲示板に書き込みをする若者も多く、しばしば不適切な表現が見られる。その場合はモデレーターがチェックし、警告をするのだが、ほとんどわずかな注意をするだけで自発的に直されている。ネットワークに関心のある若者は、そのルールを吸収することにも前向きのようだ」