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ノベル、『NetWare 5』日本語版を発表

1998年10月09日 00時00分更新

文● 報道局 小林久

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 ノベル(株)は、『NetWare 5』の日本語版を10月23日に発売すると発表した。価格はオープンプライス。



 本日行なわれた発表会では、9日付で、同社の代表取締役に就任したPhilip K. Welch(フィリップ・K・ウェルチ)氏や米国本社の上席副社長、Ronald E. Heinz(ロナルド ・E・ハインツ)氏など4名が出席。冒頭で、ハインツ氏が「ここ数ヵ月ノベルの収益は順調に伸びている。今後はディレクトリーサービス対応製品を中心に据え、ネットワークリソースに対しいつでもどこでもアクセスできるというメッセージを世界の皆さんに伝えていきたい」と挨拶した。発表会では、ディレクトリーサービスの重要性が説明され、一貫して『NetWare 5』が、その中核製品になることが強調された。

新たにノベル(株)の代表取締役社長になった、Philip K. Welch氏 新たにノベル(株)の代表取締役社長になった、Philip K. Welch氏



 “Now Starts Here”をテーマに据えた今回の発表会は比較的地味なものだった。また、1日付けで急遽代表取締役社長に就任したウェルチ氏から、社長就任に至る経緯や今後の方向性に関するコメントはなかった。その上、発表後の質疑応答で、司会者が「質問は新製品の『NetWare 5』に関するものに限ってほしい」とくぎを差すなど、記者たちが肩すかしをくらう面もあった。

 なお、ASCII24では、サーバーメーカー各社の『NetWare 5』への対応状況を独自に調査し、以下のような回答を得ている。



『NetWare 5』、主要ベンダーの対応状況


日本アイ・ビー・エム(株)


歓迎はしているが、具体的にお話できる内容は今のところない。


日本電気(株)


NetWare 5を支持し,ネットワークソリューションとして今後も提供していく.ただし,Express 5800シリーズでの具体的な製品展開は未定。


富士通(株)


すでに『IntranetWare』をプレインストールしたGranPower5000でのインストールモデルがあり、サポート体制もある。『NetWare 5』でも同様に行なっていく。


日立製作所


『FLORA-S』シリーズと『HA8000』シリーズにプレインストールモデルを追加。11月に出荷予定。


コンパックコンピュータ(株)


基本的にサーバー製品にOSをバンドルしていないため、プレインストールモデルなどは販売しない。ただし、ハード上の動作確認はとってあり、OSのインストールを自動化するユーティリティー『SmartStart』では、『NetWare 5』をサポートしていく予定。


日本ヒューレット・パッカード(株)


サポート予定はない。ただし、ハード的な動作確認に関しては、『NetWare 5』でも行なう予定。


三菱電機(株)


プレインストールOSとしては、Windows NTを中心に考えている。『NetWare 5』を使ったシステムに関しては、要望があれば、カスタマーごとに個別で対応する。


沖電気工業(株)


現時点では予定はない。


デルコンピュータ(株)


サポート予定はない。


マイクロン・エレクトロニクス・ジャパン(株)


現状ではWindows NT4.0のみのサポート。他のOSに関しては動作確認もしていない。ただ、PCサーバーに関してはこれからと考えており、今後に関しては今のところコメントできない。


日本ゲートウェイ2000(株)


今の時点で予定はない。現状ではプレインストールOSはサーバー、クライアントともに、Winodws 95/98/NTのみ。それ以外のOSに関してもサポートする意向はあるが、具体的な予定はまだない。


 上記の結果に対し、ノベル(株)は、「国内ハードベンダーに関してのマーケティング展開が遅かった。それでも、今回、数社から賛同の意向をいただきポジティブな意見をいただいている。今後は積極的にパートナーを拡大していきたい」とコメントした。

『NetWare 5』製品紹介~ノベルの考える『NetWare 5』の位置づけ

 『NetWare 5』は、同社のOS『NetWare』シリーズの最新バージョンである。『NetWare』シリーズは、バージョン4でNDS(Novell Directory Services)を実装し、IPにも対応して『IntranetWare』と名称変更したが、商業的には振るわなかった。今回、再び『NetWare』という名前に戻されたことは、『IntranetWare』のイメージを一新し、再び原点に戻るという意味も含まれている。

 ノベルは、『NetWare 5』を同社のディレクトリーサービス“NDS”の中核製品として位置づけている。NDSは、すでにWindows NTやSolarisなど、他のプラットフォームにも移植されることが決まっているが、『NetWare 5』は標準で同サービスを利用できる。同社は、ユーザー情報などのネットワークリソースの一元管理というNDSの利点を活かし、Windows NTなど他のプラットフォームと競合するのではなく、むしろ共存するためのソリューションとして『NetWare 5』を推進していきたいとしている。

 なお、ディレクトリーサービスとしては、マイクロソフトがNT5.0で提供するとしている“Active Directory”がある。同社では、これらの製品に対するアドバンテージとして、同製品がすでに実用化されてから長い年月を経ているという信頼性を強調している。

 一方、『NetWare 5』に対する同社の取り組みとして、マーケティング面での変化にも注目すべきであろう。今回の『NetWare 5』から、同社としては初の広域ベータ版の配布を始めた。ベータ版の出荷数は、8月の段階で、英語版が約22万本、日本語版が約7000本を数えており、アンケートなどを通じて返ってきた、“安定性・信頼性”“パフォーマンス”“管理のしやすさ”“サポート”などサーバーに求める、ユーザーの声を製品展開に反映しているという。

 以上のように、ノベルは、他社に先駆けたディレクトリーサービスの利点を強調するとともに、その中核製品となる『NetWare 5』に社運をかけて取り組んでいるように見える。

『NetWare 5』の新機能と主な変更点

コアプロトコルをIPに変更

 『NetWare 5』における最も大きな変更点は、コアプロトコルがTCP/IPに変更されたことである。従来バージョンである『NetWare 3.x』、『IntranetWare 4.x』では、コアプロトコルに、同社独自のIPXが採用されてきた。IPの利用は、すでに『IntranetWare』でも、カプセリング処理によって可能だったが、今回の『NetWare 5』からは、NCP(NetWare Core Protocol)として、初めてIPが採用された。

 NCPにIPを使用することの最大のメリットは、DNS(Domain Name Server)やDHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)などのIPアプリケーションをNDSに統合できるようになったことである。これにより、DNSサーバーやDHCPサーバーのような従来型のアプリケーションも、NDSの管理下において、IPアドレスやドメイン名を一元管理できるようになる。

 なお、今回コアプロトコルにIPを使用することが可能にったが、すでにIPXによってネットワークを構成しているユーザーが、コアプロトコルにIPXを選択することも可能だ。ノベルは、既存のIPXユーザーにもサポートを継続すると明言しており、ほかにも、プロトコルにIPを用いているセクションとIPXを用いているセクション間の相互アクセスを可能にする“Migration Gateway”機能や、IP環境下でIPXベースのアプリケーションを実行するための“コンパチビリティー・モード”ドライバーの提供などを通じ、IPX環境とIP環境の互換性を確保し、IPXからIP環境へのスムーズな移行をサポートするという。

ログイン時の画面
ログイン時の画面



コンソールにGUIを採用

 『NetWare 5』にJavaの実行環境が標準搭載されたのも大きな特徴で、コンソールのインターフェースにはX Window SystemをベースにしたGUI(Graphical User Interface)が採用された。GUIを伴うJavaプログラムのサポートが可能になり、“NetWare = CUI(Command based User Interface)”というイメージが一新されている。

 そして、JavaベースのGUI管理ツール“ConsoleOne”がサーバーコンソール上で使用できるようになった。これにより、アプレットの起動、ローカルボリュームのブラウズやファイルコピー、基本的なネットワーク管理、サーバー稼動状況のモニタリング、サーバーの遠隔操作などの操作をコンソールからGUIベースで行なうことが可能だ。

 なお、従来、DOSパーティションを設定したり、CD-ROMドライバーをインストールするなど、複雑な手順を必要とされていたインストール作業も、GUIベースのインストーラーによって操作性が改善された。CDブート後、DOS領域は自動的に設定され、その後、NDSやプロトコル、サーバー構成などはGUIのウィザード形式で行なうことができ、インストール作業が簡単に行なえるようになった。

“ConsoleOne”の画面
“ConsoleOne”の画面



NSSとNDPSでファイル&プリントの環境を改善

 今回、コアプロトコルの変更など、カーネルレベルでOSの見直しがなされたことに伴い、64bitアドレッシング対応の新ファイルシステムNSS(Novell Storage Services)が採用された。従来のNWFS(NetWare File System)との違いは、扱えるファイルサイズ、ファイル数の拡張などで、扱えるファイルサイズの上限が従来の4GBから8TBへ、扱えるファイル数が1サーバーにつき1600万個から1ボリュームにつき18億個へと拡張される。また、ボリュームサイズに応じて増大していた、メモリー使用量も、ボリュームサイズに関係なく1MB程度の空き容量で足りるようになる。

 プリント環境では、NDPS(Novell Distributed Printing Services)を採用。従来個別に行なわなければならなかったプリンター、プリントキュー、プリントサーバーの設定を、プリンターエージェント(NDPSプリンターオブジェクト)に統合することで、管理者側の負荷を減らすことができる。また、プリンターを指定するだけで、自動的にドライバーをダウンロードしたり、ジョブの送信に対応して、ステータス情報が取得できたりと、クライアント側の使い勝手の向上も図られている。

NDPSの画面
NDPSの画面



ZEN Worksの標準添付

 『NetWare 5』には、『Z.E.N.works』の“スタータ・パック”が標準で添付される。『Z.E.N.works』は、NDSを利用して、WindowsベースのPC管理の簡略化と自動化を行なうためのツール。各デスクトップに特有の環境設定やアクセス権などの情報をNDSを用い一元的に管理できる。同ソフトの機能を用いて、例えば、個人のデスクトップ環境を、出張先のまったく別のマシンで再現したり、クライアントマシンにアプリケーションを配布したり、その管理を行なうことなどをサーバー側で自動的に行なえるのが特徴だ。

『Z.E.N.works』の画面
『Z.E.N.works』の画面



 NDSの普及には、『Z.E.N.works』のようにNDSを用いることのメリットが際立つアプリケーションが必須だ。同社の戦略にとって、NDS環境を提供する『NetWare 5』と、そのインフラをベースにネットワークコンピューティングを快適にするための『Z.E.N.works』のようなアプリケーションとは、車の“両輪”のような関係にあるといえるだろう。

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