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【INTERVIEW】「盛況だったBALL Semiconductorカンファレンス」-仲野英志筆頭副社長-

1998年08月10日 00時00分更新

文● 報道局 植草健次郎

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 米BALL Semiconductor(ボール・セミコンダクター)社は、現地時間の7月11日と12日の2日間、米San Francisco Museum of Modern Artにおいて球状半導体に関する初のカンファレンスを開催した。カンファレンスでは現在の開発状況のほか、露光装置内で直径1mmの球の位置決めを行なう装置や、実際に球面上にICを形成したシリコン球などが発表された。また、米Forbes誌の創立者の一人であるGeorge Gilder(ジョージ・ギルダー)氏が球状半導体技術のもたらす未来についての講演を行なった。

 同社が開発中の球面上に回路を形成する技術は、既存の平面の半導体にくらべ表面積が大きくとれ、同じ実装面積での集積度を上げられること、従来の10分の1程度の費用で生産設備を構築できるなどの理由から注目を集めている。

 カンファレンスの様子や成果について7月21日に来日した仲野英志(なかのひでし)筆頭副社長兼COOと、装置の開発を担当する金竹隆志(かなたけたかし)氏にお話を伺った。

・仲野英志筆頭副社長兼COO
・仲野英志筆頭副社長兼COO



----カンファレンスの様子はいかがだったでしょうか。かなりの人数も集まり、盛況だったようですが。

「参加者は2日間の延べで約300名でしたが、参加者の質の高さに感銘しました。日本の半導体メーカー4社、米国1社、韓国1社からプロセス技術者や中央研究所の所長クラスの参加がありました。日本の半導体機器メーカーからは、社長や技術担当役員が参加されましたし日米の大学教授の顔も見うけられました。ユーザーサイドからも数社ありました」

・会場の様子・会場の様子



----参加者からはどのような質問がでましたか?

「具体的にはなぜ球の直径が1mmのなのか、パッケージングをしないのはなぜか、どういう製品を作るのかなどの質問が出ました。球ですから従来の半導体と違って高さがあるので、何らかの形でアンテナ効果(片端が接地している導体は導体の高さに応じた周波数に対してアンテナとして働くこと)の利用を考えてはどうだろうかという提案もありました。質疑応答では技術的にレベルの高い質問が多く、中には我々がまだ研究開発の途中であるのに、技術開発が完了していることを前提とした質問もありました。率直に私どもの現在の状態をお話して納得いただきましたが」

----全体的な印象は?

「大変好感触を受けました。黙っていた人が何を考えていたのかがちょっと怖いですけれど(笑)。会場の半分を使って実際に回路の形成に成功した球状シリコンの展示なども行なったので、会議ではなく、技術展示会、発表会だと思った人も多かったようです」

「社長である石川のコンセプトのスケールの大きさに対する驚嘆の言葉や、短期間に極めて広範囲の技術開発が進んでいることへの参加者の驚きを感じました。ダラスにある本社に戻ってからも、こんな興奮した会議に出たのは始めてであったとか、こんな面白いカンファレンスは始めてだとかわざわざ電話をいただきました。このカンファレンスはあくまでも、私どもの技術を世に問うものです。このような反応を見ると、結果的に成功であったと思います」

・球面状に形成された回路
・球面状に形成された回路



----今回のカンファレンスで日本の大学の研究室と共同研究している装置についての発表もあったと伺いましたが。

「日本の大学に限らず、産学協同開発は私どもの方針です。日本では今回プレゼンテーションが行なわれた東京電機大の里見教室によるアライメント用超精密ステージの開発、東京農工大の遠山ラボの球面モーターの開発などを正式に発表しました。どちらも露光装置の中で球の位置決めを行なう装置です。露光する際にウエハーを置く台は、これまでは2次元の動きができれば良かったのですが、球では高さがあるため3次元の動きが必要になります」

「アライメント用超精密ステージは、ウエハーを載せて2次元平面で移動させる従来の台と同じもので、縦と横の移動と回転ができる平面の台です。直径1mmの球を扱うためのものですから、従来のものに比べて小型で精密なものが必要になります。これでX、Y方向の移動、Z軸を中心にした回転の3つの動きが可能です。球面モーターはアライメント用超精密ステージの上に乗る装置です。弧状のレールで回転させ、角度を変えるゴニオステージ(図参照)のようなものを直角に組み合わせ、それをアライメント用ステージに対して垂直方向を軸として回転するようにしたものです」

・ゴニオステージの概念図
・ゴニオステージの概念図



・ゴニオステージ(画像提供 中央精機(株))
・ゴニオステージ(画像提供 中央精機(株))



「これがθ1、θ2、θ3、3つの回転を作り出し、アライメント用超精密ステージと組み合わされて必要な動きを作り出します。ゴニオステージをそのまま積み上げたのでは大きな装置になってしまうので超音波モーターで駆動する小型のものにしました。2つを組み合わせると、ちょうどソーサーの上にコーヒーカップが乗ったような形になります。この部分は、単2電池より一回り小さいくらいです。これを中華料理のテーブルの回転台のような物の上に100個くらい並べて、動かしながら連続して露光させます。露光装置全体では幅が80cm程度になります」

・球状モーターとアライメント用超精密ステージの概念図
・球状モーターとアライメント用超精密ステージの概念図



----今後の計画などお聞かせください

「今は球面上にトランジスターを形成するための準備を進めています。最初はただ動くだけのトランジスターになるでしょうが、まずは球面に1個のトランジスターを作る予定です。もちろん同時に複数のトランジスターを形成するための準備も進めています。また、球面のメリットを生かして平らなシリコンより多くの回路を形成する技術の開発も行なっています。球面の6割に回路を形成すれば1平方mmの約2倍の面積がとれますから、同じ実装面積で約2倍の規模の回路が形成できることになり、この準備も並行して進めています」(7月31日、新橋第一ホテル東京にて)

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