日本ディジタルイクイップメント(株)(日本DEC)は、今年2月に発表した次世代64bitプロセッサー『Alpha
21264プロセッサ』を搭載したサーバーの発売予定を発表した。また、Alpha
21264のベンチマーク結果や、今後のAlphaプロセッサのロードマップについても明らかにした。
Alpha 21264搭載のAlphaServerは今秋発売
Alpha 21264のポイントとして強調されたのは、プロセッサーとメモリーを結ぶメモリーバンド幅を拡張したこと。従来は、クロック周波数が上がってもメモリーバンド幅がボトルネックとなり、パフォーマンスの向上につながらなかったのだという。21264では、メモリーなどの各要素をひとつのバスで共有する“バス方式”に代わり、複数プロセッサーの搭載時でも個々のプロセッサーから各要素に直接アクセスできる“クロスバー方式”を採用。これによりMcCalpinベンチマークで毎秒1600MBのメモリーバンド幅を達成した(バス方式では毎秒300MB)。なお、チップの製造コストについては、インテルにAlphaプロセッサー製造工場を売却し、減価償却費や人件費を削減したことで、3分の1~5分の1程度に削減できるという。そのほかの特徴は、以下のとおり。
・2次キャッシュを他要素から独立させたため、メモリーと1次キャッシュのみによるシステムが設計できる。
・整数演算ユニットを4個、浮動小数点演算ユニットを2個持ち、最大6命令が同時に実行できる(従来は各2個ずつの計4個だった)。
・最大80命令をチップ上に読み込み、実行可能な命令から処理するOut-of-Order実行機能を装備する。
・Local、Globalの2種類の分岐予測が行なえる。
・MPEG-2のリアルタイム処理などを行なうMVI(Motion Video Inst)を実装する。
・命令用キャッシュとデータ用キャッシュを各64KB搭載する。
米DEC社では、現在発売中のサーバー『AlphaServer 8400』にAlpha 21264-575MHzボードを搭載し、ベンチマークを計測した。その結果、SPECint95で30.3(Alpha 21164-600MHz使用時に比べ、61パーセント増)、SPECfp95(1CPU時)で47.7(同63パーセント増)の性能を実現した。これらの値は現在および将来にわたって、米インテル社のMerced、McKinleyをしのぐものになる、と強調された。
なおAlpha 21264搭載の新サーバーは、今秋から順次発売の予定。まず、AlphaServer
8400に、クロック周波数が575~600MHz程度のAlpha 21264を搭載したモデルが発売される。稼動するOSはDIGITAL
UNIX、OpenVMSで、従来のAlphaServerシリーズとはバイナリーの互換性を持つ。なお、AlphaServer
8000シリーズからは、Alpha 21264ボードの交換のみでアップグレードが行なえる。価格などの詳細については今秋の発表となる。
来年には、AlphaServer 8400に21264を搭載したモデルだけでなく、システムバスなどを改善し21264の性能が最大限に活かせる新シリーズのサーバーも発売するという。このサーバー上では、DIGITAL
UNIX、OpenVMSに加えて、Windows NT4.0も稼動することになる。
EV-7は2000年、EV-8は2001年に
Alphaプロセッサーのロードマップについては、同社テクニカルサポート本部の中野守氏より詳細な説明があった。同氏は、米国エネルギー省が進めている“Pathforwardプロジェクト”に米DECが本格的に参加する、という話から始めた。同プロジェクトは、核実験をシミュレートするためのコンピューターを開発するもので、2001年までに30TFLOPS(1秒間に30兆回の浮動小数点演算命令を実行する)、2004年までに100TFLOPSのシステムを実現する予定だという。DECはこのプロジェクトにおいて、並列サーバーを受注しており、NUMAアーキテクチャーを改善したSUMOアーキテクチャーの開発に取り組んでいる。ロードマップについて見てみると、2月に同社がアナウンスした1GHzのクロック周波数を持つAlphaプロセッサーのリリースは来年になりそうだ。また、現在0.35μmであるプロセス技術は、今年中に0.25μmを、そして来年以降は0.18μmを採用する予定となっている。
21264(コードネームはEV-6)の1世代あとのプロセッサーにあたる『EV-7』は、2000年のリリース予定で、最大クロック周波数は1.2GHz程度、トランジスター数は100万個以上。1次キャッシュの拡張などを図る。
2世代あとの『EV-8』のリリースは、当初予定より2、3年早い2001年になる見込みで、最大クロック周波数は1.4GHz程度、トランジスター数は250万個程度。最大8命令の同時演算を可能にするほか、次世代プロセッサー技術“SMT(Simultaneous MultiThreading)”を採用する。SMTは、1クロックあたりのプロセッサーの使用効率を上げる技術で、EV-8では最大4プロセスが同時に処理できるという。