日本タイポグラフィ協会は、6月16日に日本出版クラブ会館において“第2回タイポグラフィ・シンポジウム”を開催した。同協会は、昨今急速に変化してきたタイポグラフィについて幅広く取り上げ、活動している。今回のシンポジウムはその一環として“インターネット時代のタイポグラフィを考える”をテーマにしている。家庭やオフィスに急速に浸透してきたインターネットをはじめとするデジタル・メディアにおけるタイポグラフィのあり方を考えるものとなった。
プログラムの冒頭、基調講演において同協会が発行する機関誌『タイポグラフィックス・ティー(以下TEE)』誌の編集長である中川憲造氏(日本デザインセンター取締役)が、ウェブによるInternet版TEE誌の展開を始めたことを報告した。M・マクルーハンの“メディアは陳腐化した時にアート化する”という言葉を引用し、「TEE誌は今後はアートを目指し、Internet版TEEは情報に特化したものになっていくべき」とした。この言葉は図らずも紙メディアとデジタルメディアの方向性を示唆しているといえる。
デジタルフォント会議代表の松下哲雄氏は、マイクロソフトのデジタル・コンテンツ抱え込みの問題に触れた後、カスケードスタイルシートやフォントエンベッド、オープンタイプといった最新のウェブ上でのデジタルフォント技術を紹介した。
パネルディスカッションは、編集者、フォントデザイナー、グラフィックデザイナーなど6名で実施された。デザイナー3氏の発言のみ掲載する。
字游工房のタイプフェイスデザイナー鳥海修氏は、同社のヒラギノ書体と游教科書体を小学館のふたつのCD-ROMプロジェクト『Kid's
Rom(キッズ・ロム)』と『ニッポニカ』のために画面表示用フォントを制作したことを紹介し、画面表示用書体の重要性を強調した。
キヤノンで『FontGallery』などのフォント技術開発に関わる関志信氏は、デジタルフォントは品質もさることながら、その速報性、情報の利便性が追及されていると述べた。
デザイン・ウィズ・ハートの杉山久仁彦氏(同会会員)は、さまざま国のアーティストとのコラボレーションを紹介し、そうした新たな表現の中にもフォント、タイポグラフィは息づいていることを示した。「海外ではデザイナーとプログラマーのコラボレートで問題を乗り越えている」と続けて、日本のデザイナーのなんでもひとりでやろうとする姿勢に疑問を投げかけた。
続く討論では、モニター上での読みやすい書体の開発と文字組みの課題に焦点が絞られ、議論が展開された。
もっともアナログに近い感のあるタイポグラフィーがデジタルでの生き残りに真剣に取り組んでいる姿勢を高く評価したい。筆者はこうしたデザイナーの声がOSやブラウザーを供給する企業に届くことを切に願っている。今後も彼らの動向に注目したい。(千葉英寿。掲載を割愛した発言者についての責任はASCII24編集部)
・日本タイポグラフィ協会
問い合わせ:TEL.03-3246-2900
・インターネット版『タイポグラフィックス・ティー』
http://www02.so-net.or.jp/~j_typo/
・デジタルフォント会議
http://www.logix-press.com/