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尚美学園が、“SHOBI World Forum”第1回カンファレンスを開催

1998年05月15日 00時00分更新

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 (学)尚美学園は、“SHOBI World Forum”第1回カンファレンスを、東京・中央区の有楽町朝日ホールで開催した。赤松憲樹尚美学園理事長が、「“SHOBI World Forum”は、今回のようなカンファレンスと、ネットワークを通じた調査・情報収集などの活動の総称。カンファレンスは、年2回を予定しており、次回は11月4日を予定している」と挨拶。



 カンファレンスでは、西和彦尚美学園短期大学教授((株)アスキー社長)がコーディネーターとなって、各界の著名人をパネラーとして迎える。第1回カンファレンスでは、“コミュニケーション情報メディアの未来像を探る”をテーマに、為ヶ谷秀一(社)日本放送協会放送技術局技術主幹、関祥行(株)フジテレビジョン総合開発局専任局長兼技術局技師長、古川亨マイクロソフト(株)会長、手嶋雅夫マクロメディア(株)社長、華山宣胤尚美学園短期大学講師らの講演が行なわれた。

 講演後のパネルディスカッションでは、コーディネーターの西氏が、「ひとりずつ順番に発言して終わりというのではつまらないので、ほかの人の講演を聴いた感想をまず述べてもらって、そこから議論を深めましょう」と提案した。



為ヶ谷「NHKでは、ISDB(統合サービス型テレビ)という多機能テレビを開発中だという話をしましたが、さきほどフジテレビの関さんが『ISDBのような多機能化は、デジタルでなければできないことではない』と指摘された。その点については、私も同感する部分はある。ただ、WebTVのコンセプトはISDBと似通っており、同じ方向に向かっていると思う。テレビと通信はうまく“融合”するのではないかと思う」

関「放送業界というのは規格を決めるのに10年かかり、一度決まったら10年は変えられない。今のような技術革新の速い時期にISDBの規格をきちんと決められるか疑問だ」

古川「マイクロソフトもWebTVも、すべてデジタル化すればいいとは思っていない。WebTVは、今使っているテレビでも十分きれいな画像を見ることができる。これに対してISDBは、ハイビジョンの中だけでしか機能しないというが、その点はどうかと思う。また、マクロメディアの手島さんが、CD-ROMの画像の一部をインターネットを通じて随時更新するShockedCDのデモを行なったが、CD-ROMなどのパッケージメディアでも、放送や通信との融合は可能だと思う」

手嶋「ISDB、WebTVと、コンシューマーからすると選択肢が増えたのはいいことだ。どのサービスが生き残るかは、コンシューマーが決めればいいことだ」

 ここで、西氏は論点を規格の標準化の問題にしようと提案。そして、「コンピューター業界には、事実上の標準とかいいながら、暴力的に統一してしまう企業がありますが……」とコメントすると、場内は大爆笑となった。

手嶋「規格はコンシューマーが決めるべき、というのが私の意見。DTPが普及するのに4年かかり、インターネットはわずか2年で普及した。ひとつの規格を決めるのに10年、20年かかるのはリスクが大きすぎる」

為ヶ谷「しかし、放送の機能、公共性ということを考えれば、広く国民にきちんとしたインフラを提供するためにも、きちんとした規格を定めるのに時間がかかるのは仕方がないことだ」

古川「放送がジャーナリズムとして貫くものには敬意を表するが、しかし、放送業界のごく一部の人だけでものごとを決め、しかもそれが10年、20年と変えられないのでは非常にもったいないことだと思う。『コンピューター業界は規格が変わりすぎる』という批判はあるかも知れないが、古い技術との互換性を備えていれば、新しい技術を盛り込むことは何ら問題がないはずだ」

関「3~4年前に、放送の国際規格を定めるITURはいらないのではないか、という議論が一部あったが、『周波数は有限な資源なのだがら、全国民が平等に享受できるようにすべきであり、規格を定める組織は必要』という意見のほうがやはり強かった」

 続いて、“インターネットにおける、広告の意味”に話題を転換した。

古川「すでに、WebTVではいくつか新しい試みが生まれている。WebTVでは、電話番号が登録されているので、テレビでクルマのCMを見た人がWebで販売店の情報を得ようとすると、ちゃんとその地域の販売店の情報を表示することができる。また、個人別にログインできるので、子供が見ているときは子供向けの情報を加えることも可能だ」

関「地上波データ放送について議論をしたとき、15秒CMの裏にその商品の詳細情報を載せようというアイデアがあった。しかし、視聴者がある15秒CMの詳細データを見ることで、次の15秒CMを見なくなってしまう可能性がある。放送におけるCMとは、15秒ずつの時間を売っているのだから、それは難しいという結論になった。広告代理店でも問題になったようで、今までの時間を売るというビジネスモデルは、そう簡単には変えられないことのようだ」

古川「その点は、WebTVは両立している。次期製品では、30秒前に戻って映像を再生する機能が盛り込まれている。見逃したCMを、繰り返し何度でも見ることができる。広告主に対しては、時間を1回だけ売るというスタンスではなく、視聴者が何度も見たCMだから、そのぶん課金すればすむ問題だと思う」

 最後に西氏が今回のディスカッションの総括を行なった。



西「重要な点は、常に送り手は新しい努力を続けなければならないということ。そして、ビジネスのルールを決めるのは、コンシューマーだ。デジタル化の付加価値についていえば、テレビとインターネットを結びつけるのは広告である。放送業界にとっての最大のカスタマーは広告主(スポンサー)であり、テレビの未来は広告が決めることになる。私は、このフォーラムの冒頭で『テレビとインターネットの“連動”について議論したい』と述べた。“融合”ではなくて“連動”。テレビとインターネットは、融合するのではなく、別々に生き続け、独立しながら連動していく。両者を結びつけるのは、広告と物販のふたつだろう」

 コーディネーターの西氏が、マイクロソフトの古川氏を挑発したりという場面では、たびたび場内が笑いに包まれるなど、なごやかな雰囲気をみせつつも、テレビとインターネットの将来像をくっきりと浮かび上がらせた有意義なパネル・ディスカッションとなった。(報道局 佐藤和彦)

http://www.shobi.ac.jp/forum/index.html

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