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川崎商工会議所が“シリコンバレー地域最新ビジネス事情講演会”を開催

1998年04月23日 00時00分更新

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 川崎商工会議所は、“シリコンバレー地域最新ビジネス事情講演会”を開催した。川崎市の職員派遣プログラムに基づいてシリコンバレーに派遣されている同市経済局の小泉幸洋氏と、シリコンバレーにあるコンサルティング会社の米ACZA社の代表取締役の石井正純氏が現地のベンチャー支援策や、ベンチャー企業の動向について講演を行なった。

“シリコンバレーの持続的な成長を支える取り組み~NPOの役割”


小泉幸洋・川崎市経済局産業政策部国際経済担当副主幹

 小泉氏は、川崎市の職員派遣プログラムに基づいて、1月にシリコンバレーに派遣され、現地の地方自治体の産業育成策や、NPO(非営利団体)の動向についての調査を実施。派遣プログラムは5月まで継続するが、一時帰国して同講演を行なった。

 「シリコンバレーの中心であるサンノゼ市は、人口84万人の都市。'60~'70年代に衰退していたが、同市の経済局が20年間かけて地域振興を行なってきた。市が中心となって、コンベンションセンター、アリーナ、劇場などのイベント会場を作ってきた。また、土地の用途の総合計画を策定し、約90ヘクタールの広さのハイテクの産業団地をふたつ作っている。川崎市の臨海部が、約80ヘクタール。サンノゼ市は、ハイテク以外の分野の産業団地もいくつか作っており、非常に計画的に用途地域の計画を策定している」

 「産業育成に力を入れるのは、産業や企業の発展が税の基盤であるという認識に基づいている。ただ、やみくもに産業育成をめざすのではなく、彼らは“産業振興には生活の質の向上が必要”という認識も持っている。ここ10年で20万人も人口が増えたために、住宅が不足し、家賃は上がり、交通渋滞も激しくなっている。人口が増えたことで生活の質が下がれば、企業や人口の流入が止まってしまう。産業の拡大を停滞させないためには、生活の向上が必要となってくる」

 「しかし、サンノゼ市の経済局はわずか20人しかおらず、日本の自治体に比べるとはるかに少ないスタッフで運営している。市民からの苦情の受付や回答を電子メールで行なうなど合理的な運営をしている。また、産業育成には、市だけでなく、NPOも大きく関わっている。地元の企業家、大学、市民の活動家などが運営するNPOが、企業の発展のための活動を行なっている。たとえば、市によって異なる申請書の様式を統一させる運動を行なったり、教育機関へのインターネットの導入を推進したりしている。また、ベンチャー企業を育成するインキュベーターとして活動するNPOもあり、企業もこうしたNPOにオフィスやパソコンなどを提供し、企業家もボランティア精神で参加する、という風潮がある。こうして、サンノゼ市では、市だけでなく、地元もNPOと協力して産業振興を図っている」

“米国ベンチャービジネスの現状と展望~シリコンバレーに学ぶベンチャー精神”


石井正純・米ACZA社代表取締役

 石井氏は、シリコンバレーにあるコンサルティング会社の米ACZA社の代表取締役を務めている。同氏は、丸紅エンジニアリング(株)、日本アイ・ビー・エム(株)、マッキンゼー・アンド・カンパニーなどを経て、'85年に米ACZA社を設立した。

 「シリコンバレーの上位150社の'96年の売上合計は1500億ドル(約20兆円)。これに対し、利益の合計は175億ドル(約2兆3000億円)と、売上高に対する利益率は12パーセントもの高い水準を示している。ベンチャーキャピタルの、カリフォルニア州への投資は'97年に23億ドル(約3000億円)に達し、3576社のハイテクベンチャー企業が誕生している。こうしたベンチャーキャピタルの審査はきわめて厳しいもので、1000社くらいの事業計画から、実際に投資が行なわれるのは3~4社といったレベル。にも関わらず、年間3000社を超える企業が設立されるのだから、新規事業への意欲は、企業家、投資家ともにきわめて旺盛であることがわかる」

 「シリコンバレーのベンチャー企業は、オリジナリティーが高くて、すぐれたアイデアさえあれば、資金はあっという間に集まってくるために、すぐに事業を開始できる。大企業に務めているサラリーマンが良いアイデアがあるもののその企業で実現できなければ、自分で事業化しようという風潮がある。また、学生が大学を卒業しないで、そのまま企業を起こしたり、大学教授の起業もある」

 「シリコンバレーの発展を特徴づけるのは風土・文化、ベンチャーの支援体制、金融・税制の3つ。このうちベンチャー支援体制や金融・税制は、これから日本も改善していくものだろうが、アメリカンドリーム、独立志向、スターの賞賛、知的自由度といった風土・文化を変えるのは難しいことで、一世代か二世代はかかるだろう」

(報道局 佐藤和彦)

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