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【連載コラム 笠原利香のIntrinsic Technology】(12)まだまだ続くハイテク億万長者のバブリーな生活

2000年08月09日 14時28分更新

文● 笠原利香

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今年の4月に、ハイテク株のバブルが多少はじけたけれど、それでもまだ止まらない勢いのあるハイテク億万長者たち。

それが証拠に、サンフランシスコ周辺の経済は、こうした億万長者にいまだに支えられていると言って良い。引越ししたから何もかも新装したいと、高級ブティックでダイニングテーブルやらなんやら、その場で200万円もの家具を購入した人の話とか、あるいは非常にマイナーな話だけど、自分の大好きなコミュニティーだからといって、地元のセミプロが作ったレイブの映画に投資しちゃうとか、そんなバブリーな話は枚挙にいとまない。

●予約がダメなら、いっそオーナーに

中でもレストランは、こうしたお客たちのおかげで大繁盛している。家で食事をつくるなんて、彼らにしてみれば洗濯機を使わずに手洗い洗濯をするほど、時代遅れでカッコウ悪いことなのだ。したがって自然と外食三昧になる。こうした金に糸目をつけない客が多いから、高いレストランほど混んでいるという状況。

が、いくらお金があってもどうにもならないこともある。それが“予約”をすることだ。

ベイエリアのレストランの多くは、非常に厳しい予約ポリシーを持っている。ワインカントリーにある西海岸で一番有名なレストラン、フレンチランドリーでは、予約2ヵ月前の朝10時から受け付け開始している。10月2日に食べたいのなら、8月2日の朝10時に電話をしないとだめ。それも15分で予約がいっぱいになってしまうというのだから、まるで人気バンドのコンサートのようだ。人を雇って電話をさせるとか、オーナーの友達だとか、有名人だとか、いろいろ嘘をついたとしても、予約係りの人はみんなお見通しだ。

そこで億万長者の中には、好きなレストランに投資をしてオーナーとなり、予約なしでも食事できるように“席を買う”人も現われるほど。これを受けて、開店以前に億万長者たちを招いて“投資家ディナー”を開き、ここでオーナー特権をエサにして、投資を募集するレストランまで現われた。あるいは最近レストランのテーブルをコミッションを取って(***のレストランの土曜午後8時の場合は30ドル)予約をするウェブページも現われた。まさに“ニューエコノミー”とでも言うのだろうか。驚くばかりである。

●成金にはそれなりの苦労もあるようだが……

でもその一方で、いきなり億万長者になるのは精神衛生に非常に悪いらしいことも分かってきた。なんだか信じられないけれど、シリコンバレーにはハイテク億万長者を専門にした、メンタルクリニックまで現われたのだから。

聞くところによると、いきなりお金が転がり込んでくると、人生の目的が失われ、いくらお金をつかってもどうしても埋まらない寂しさに、多くの億万長者がうつ病になると言うのだ。全くもって一般人の私には理解しがたいものがある(私だったら、いきなり20億円もの大金が転がってきたら嬉しくてしょうがないだろう。いままでせっせと働いていた暮らしは過去のものとなり、旅行に、クルマに、豪邸にと、「ああしたい、こうしたい」と考えるときりがないはず)。

それに加えて、こうした成金たちは必ずと言ってよいほど、自分の富を友達に自慢する。普通にせっせと生きている友達にしてみれば「もう結構」と、自然と縁が遠くなる。そりゃ当然。こうしてハイテク成金たちは、さらに孤独な人生を生きていかなければならないのだそうだ。

“お金で幸せは買えるか?”っていう、古い疑問の答えは明らかなのかもしれない。

笠原利香(かさはら・りか)プロフィール

'89年にアメリカに移住し、'94年からパソコン関係、特にこちらではハッカーと呼ばれている人々の記事を多く書いている(ちなみに、アメリカと日本ではハッカーという言葉の使い方が違っているので注意)。連載には『ファミ通Wave』、『Asahiパソコン』(不定期連載)、最近終了した『PC Computing』などがある。『ハック!! ハッカーと呼ばれた青年たち』(ジャストシステムズ)という単行本も出版。

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