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【MACWORLD Expo/NY2000 総集編】新製品を一挙に発表した基調講演をもとに、MACWORLD Expo/NY2000を総括する!!

2000年08月02日 17時47分更新

文● 林信行

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本稿では、先ごろ開催された“MACWORLD Expo/NY2000”を総括する意味で、数多くの新製品が一挙に発表された基調講演の総集編をお届けする。

――新Power Mac G4上位モデルは、2GHzのPentium IIIクラスの性能、ギガビットイーサネット(1000Base-T)の標準搭載も――

米時間7月19日、午前9時、アップルコンピュータのスティーブ・ジョブズCEOの基調講演で“MACWORLD EXPO NEW YORK 2000”が開幕した。今回は新機種発表がほぼ確実視されていたため、開演3時間前には既に長蛇の列ができあがり、講演会場は開始前から熱気に溢れていた。

9時15分、会場が暗くなりどよめいていた会場が一瞬静けさに打たれる。スクリーンには“Think different”の広告が流れた。

  広告が終わると左袖からジョブズ氏が登壇し、開口一番、「今日は話すことがたくさんある」と断り、来場者そして講演会場に入れなかった来場者、さらにクイックタイムライブの放送を見ている人々に挨拶をした。  

たくさんの新製品の発表を用意していたジョブズ氏

ジョブズ氏登壇。まずは斬新な発想の『Pro Mouse』の紹介から

続いてジョブズは「まずは誰もが手に触れるもの」、マウスについて語りだした。舞台正面のスクリーンには、現行Macに付属の丸形マウスが大写しになり、ジョブズ氏は「世の中にはこのマウスを気に入っていない人が多いようだ」と語り、この声に答えるべくまったく新しいマウスを開発したことを発表した。スクリーンには新製品、『Pro Mouse』が大きく映し出された。

Vol.4で詳細に触れた、Full-surface(全面)がボタンの『Pro Mouse』

ジョブズ氏は新マウスが使う場所を選ばないオプティカル式(光センサー式)であることに触れ、マウスパッドが不要になることを強調、「それではボタンはいったいどこにあるのか?」と問いかけた。実は新マウスは「Full-surface(全面)がボタンになっており、大人でも子供でも、左利きの人でも右利きの人でも操作ができる」というのがその回答だった。

同氏はオプティカルマウスをパソコンに標準添付するのは同社が初めてだとも付け加えた。

  ジョブズ氏は続いて、「マウスにマッチする新キーボードも用意した」として新製品、『Pro Keyboard』を発表した。「マウス同様キーボードについてもユーザーの声に耳を傾けた。アップル製キーボードでもっとも好評だったのはアップル拡張キーボードだったので、新キーボードではフルサイズのファンクションキーを含む108キーを用意し、さらに音量調整ボタンやディスクイジェクトボタンも用意した」ことを明らかにした(写真)。

音量調整ボタンやディスクイジェクトボタンもある『Pro Keyboard』

新マウスと新キーボードはいずれも今後発売するデスクトップ型モデル全製品に標準添付し、既存のMacユーザーにはApple Storeを通して各59ドルで発売される(講演後から予約受付を開始し、9月には発送する。なお国内でも販売はApple Storeを通して行なわれ価格は各7500円)。

「これまで一部のユーザーは我々の製品に付属するマウスを業界最悪のマウスと思っていたようだが、我々はこれを業界最高のマウスに変える」と宣言した。

 

2個のPowerPC G4を搭載した新Power Mac G4は、2GHzのPentium IIIクラスの性能

ジョブズ氏は続いて「このマウスが付属する新しいコンピューターについて語りたい」としてPower Mac G4の解説を始めた。

特に時間が割かれたのがPowerPC G4の性能についてだ。現行Power Mac G4が搭載する500MHz版のPowerPC G4は実に3.5ギガフロップスもの処理能力を達成することを明らかにした。

 

  ジョブズ氏はその威力を証明すべく1GHz版のPentium IIIとの処理性能を比較するデモを行なった。比較にはPowerPC G4のSIMD機構、Velocity EngineとPentium IIIのSIMD機構、SSEに最適化されたPhotoshopが用いられた。

映画用のポスターを自動的に作成するPhotoshop用スクリプトを両機で同時に実行したところ、Pentium IIIでは124秒かかった処理が、PowerPC G4では100秒で終了。「この結果から換算すると、PowerPC G4の500MHz版は、Pentium IIIの1.2GHzに相当する処理能力を持つ」ジョブズ氏はこう語ると「問題はMHzではない」ことを強調した。

1GHz版のPentium IIIとの処理性能を比較するデモ。ポスターを自動作成するPhotoshop用スクリプトを両機で同時に実行

「では、このG4を2つ使えばどんなに速くなるのだろう」。ジョブズ氏はこう語りPowerPC G4を2つ搭載したPower Mac G4とPentium III/1GHzを用いて再度、両製品の処理速度を比較した。その結果、PowerPC G4搭載機は同じ処理をわずか61秒で実行した。この結果から換算すると、2個のPowerPC G4の処理能力を達成するには2GHzのPentium IIIが必要になる。

圧倒的なパフォーマンスを誇るPowerPC G4×2個を搭載する新Power Mac G4の上位モデル。その性能は、2GHzのPentium IIIクラスに相当する

「2GHzのPentium IIIを入手するにはまだ12から18ヵ月近くかかりそうだが、我々はこれと同等の性能を持つ製品を今日発売する」ジョブズ氏はこう語ると新しいPower Mac G4ラインアップの紹介を始めた。  

ギガビットイーサネット(1000Base-T)も標準搭載も見逃せない

新Power Mac G4には従来通り400MHz版、450MHz版、500MHz版の3つのモデルが用意される。この内、400MHz版は従来通りCPU1個の仕様だが、上位2モデルでは2CPU搭載が標準仕様となっている。驚くのは、3モデルがいずれも従来通りの価格を継承していることだろう。

ジョブズ氏は「2CPU仕様を標準で採用したパソコンはこれが初めてだ」と強調した。だが、「これだけではない」。これら3モデルはすべてマザーボード上にギガビットイーサネット(1000Base-T)を標準で搭載しているのだ。

ジョブズ氏はギガビットイーサネットの速さをアピールするべく非圧縮のSDビデオ(標準品質のビデオ)をネットワーク経由で再生したりランダムアクセスできることを実証して見せた。

 
新Power Mac G4シリーズのすべてのマザーボード上に、ギガビットイーサネット(1000Base-T)を標準で搭載

次世代OS、Mac OS X、Office 2001:macの紹介、MSのゲーム製品の移植なども

次の機種の紹介に移る前にジョブズ氏は、話題の次世代OS、Mac OS Xに触れ、同OSがマルチCPU仕様に最適化されSMP(対象型マルチプロセッシング)仕様のOSであることも強調した。

  その際、話題の同OSの公開ベーター版が9月に配布されること、そして正式リリースが2001年のはじめになることを明らかにした。

ジョブズ氏は今回は時間がないとしながらも、簡単にMac OS Xの操作のデモンストレーションを行なった。デモの内容は5月に開催された“Worldwide Developers Conference”とほぼ同じだったが、よく見るとドック部分に(アナログ)時計のアイコンが表示されている点だけ異なっていた。

ジョブズ氏が壇上に招いたAdobe社の社長、Bruce Chizen(ブルース・チゼン氏)氏は「(Adobeでは)100人以上のエンジニアがMac OS X向けの開発に尽力している」ことを明らかにし、新しい2CPU仕様のPower Mac G4が「Photoshopを使う上で最高の環境である」ことを後押した。

続いて、Microsoft社のMacintosh Business UnitのGeneral Manager、Kevin Browne氏も壇上に招かれ、10月に発表予定の『Office 2001:mac』を大々的に発表、新たに付属する電子メールを融合したPIMソフト、『Entrouge』(アントルージュ)の機能にも触れた。

Microsoft社が登場したことに触れ、ジョブズ氏はMac界で最も人気が高かったゲームメーカーのBungie Software社がMicrosoft社に買収されたことに触れ、Microsoft社のゲーム担当副社長、Ed Fries(エド・フライズ)氏とBungie社の創設者、Alex Seropian氏(アレクス・セロピアン)を壇上に招いた。

Mac用ゲームを開発する新会社を設立し、新しいゲームをMac用にも提供する

Fries氏はアップルとマイクロソフト、そして旧Bungie社は今後、Mac用ゲームを開発する新会社を設立して、Flightsilumator 2000などを初めとするMicrosoft社のゲーム製品群をMacに移植することを約束した。またSeropian氏は、とりあえずはMicrosoft社の新ゲームプラットフォーム、X-Box向けに開発中の新ゲーム、HALOを提供することが第1目標だが、同ゲームをいずれMac用にも提供することを約束した。

――聴衆の誰もが驚いた、キューブ(立方体)に機能を凝縮したG4マシン――

ファンレス構造と低い消費電力によって、電源を切る必要がないiMac

Power Mac G4とMac OS Xを紹介し終わったスティーブ・ジョブズは、同社のもう1つのデスクトップ製品、iMacについて語りだした。iMacはこのMACWORLD EXPO/NEW YORKで2回目の誕生日を迎える(一般向け発表から2年目)。この2年の間、同機の出荷台数は370万台にのぼる超ベストセラーパソコンとなった――これは平均して1日に5068台、1時間に211台、そして18秒に1台売れている計算になる。

  iMac購買者の30%はパソコン新規購入者で、14%はWintelからの乗り換え組、つまりiMac購入者の44%がアップルにとって新しい顧客となっている。

「もっとも、この人気のiMacが最後にモデルチェンジしたのは既に9ヵ月前のことだ」ジョブズはこう語ると、「そろそろ新しいiMacを発表する時期だろう」と切り出した。

  「新しいiMacは全部で4モデルある。そのどれもがiMacをiMacたえらしめている品質を備える」

新モデルは4タイプ。ジョブズはiMacの起動が速いことを強調した

ジョブズはiMacならではの品質として以下の特徴をあげた。

数々の賞を受賞した美しいデザイン、わずか10分でインターネットにつながる簡単さ、高速なPowerPC G3プロセッサー、そしてコンシューマーパソコン用グラフィックチップとしては最速のRAGE 128 Pro、56KモデムやUSB、FireWire、ハーマンカードン社製スピーカー、スロットローディング(スロットイン方式)のCD/DVD-ROMドライブ、ファンを不要にする通気性に優れた構造。

  ジョブズが特に重点をおいたのは通気構造だ。このファンレス構造と低い消費電力のおかげでiMacは電源を切る必要がない。使わない間はスリープ状態にしておき、使う時だけ任意のキーを押してスリープから起こせばいいのだ。そして、iMacのもう1つの利点はスリープから起きるまでの動作が速いこと。ジョブズはわずか15秒で、スリープ状態から復帰すると語った。

  ジョブズはこう続ける。「まもなく登場する30秒で起動するOSを自慢しているメーカーもあるが、我々は既にわずか12秒ほどで起動するパソコンを出荷しているのだ」

これはマイクロソフトのビル・ゲイツ会長が次期OSのWindows Meの場合は(レガシーフリーPCの場合)30秒で起動することを説明した際に、“iMacが起動に1分かかることを引き合いに出したこと”への当てつけだろう。

真っ白なiMacが登場すると場内は再び喝采につつまれた

iMac品質を自慢げに語り終えると、ジョブズはすぐに新iMacの発表に移った。

「モデル1は最高の入門機であり、最高のインターネット家電でもある。350MHzのCPU、64MBのメモリー、7.5GBのハードディスク、スロットローディング式のCD-ROMドライブ、そして我々が“インディゴ”と呼ぶ新色で登場する」

ジョブズがこう語ると舞台の奥からやや濃いめの青色をまとった透明度の高い新iMacがせり出してきた。

「この美しい筐体に、新しいPro Mouse、そしてPro Keyboardが付属して、本体価格は799ドル」場内は歓声と喝采に溢れた。

「メルセデスやBMWが、フォード・トーラスの価格で手にはいるようなものだ」

歓声が笑い声に変わる。

  「モデル2はiMac DV。DVはデジタルビデオの略だ。このモデルの使命はiMovieをより多くの人に広めること。同機にはディスク類やデジタルビデオの接続に便利なFireWireポートが搭載され、人気ソフトのiMovieが標準添付する。iMovieは既に非常に高い人気を集めており、既に30%のiMacユーザーがiMovieを使ってムービー作成をしたことがあると答えており、2ヵ月以内にiMovieをつくりたいとしているユーザーは45%にものぼっている。我々はiMovieは非常に重要な製品だと思う。400MHzCPU、64MBのメモリー、10GBのハードディスク、CD-ROM、FireWire/iMovie、そしてAirPort(日本名、AirMac)を搭載したiMac DVは“Indigo”に加え、我々が“Ruby(ルビー)”と呼ぶ新しい色で発売される」

  こう語ると今度は深い赤色をした新iMacが登場した。

  「この色は女性だけでなく、男性にも強くアピールする。我々のエンジニアの多くもこの“Ruby”を気に入っている」

  「iMovieをすべての人に」――この使命を背負ったiMac DVは999ドルで発売されることになる。「より多くの人にiMovieを届けるために1000ドルの壁をうち破った。これもすべてiMovieが非常に重要な製品だと考えるからだ」

「3つめのモデルはiMac DV+。同機はiMac DVのすべての機能に加えて、スピード、ディスクスペース、DVD対応の点で強化されている。450MHzのCPU、64MBのメモリー、20GBのハードディスク、DVD-ROM、FireWire/iMovie、そしてAirPort対応。色は“Indigo”、“Ruby”、そして新色の“Sage”を用意する」

続いて登場したiMacの緑色もやはり深い色だった。「価格は1299ドル」

「4つめのモデルはiMac DV Special Edition、これは我々にとって非常に重要なモデルだ。なぜならこれこそが究極のiMacだからだ。500MHz CPU、128MBメモリー、30GBハードディスク、DVD-ROM、FireWire/iMovie、AirPort、そして価格は1499ドル」この究極のモデルはより磨きが掛かった人気色、『グラファイト』で登場する。

  「さらに我々はこの特別なモデルにも新しい色を用意した。Special Edition、2つめの色は“Snow”だ」

  奥から真っ白なiMacが登場すると場内は再び喝采につつまれた。

Whiteカラーは“Special Edition”に追加されたもの

ジョブズも思わず「このモデルはぜひ近くによってじっくりと見て欲しい。本当に美しい色だ」と念を押した。

「Indigo、Ruby、Sage、Graphite、Snow。これらの色はこれまででも最も洗練された色で、人気が高かった、かつてのGraphiteモデルにならい、いずれもより透明度を増した外観になっている。すべてのモデルにオプティカルマウスと新キーボードが付属する点も忘れて欲しくない。オプティカルマウスを標準添付しているメーカーは他にはない。これはどんなに高いパソコンを買っても付いてこないものなのだ。しかし、最も安価な799ドルのiMacでも標準で添付している」

紹介されたiMacは、799ドルのモデル1を除き、すべて講演と同時に発売が開始され(799ドルのモデルは9月に出荷予定)、講演前日に発表されたアップルの新しい販売店、Circuit Cityでは同店で発売するDVカメラとの接続を試すことも可能になる。

「iMacの色が変わるのは実に'99年の1月以来のことだ。我々は1日でも早くiMacの新しい色に親しんで欲しい。そこでいくつかのテレビコマーシャルをつくった」

ジョブズはこう語ると、“Indigo”、“Ruby”、“Sage”、“Snow”の4つの色を宣伝したTVコマーシャルを披露(このうち“Sage”を除く3つのコマーシャルは[http://www.apple.com/hardware/ads/]で見ることができる)。

テクノロジーとアートとの接点に立つアップル。iMovie2はアップルの魂を体現した製品

iMac誕生2年目の大発表を終えると、ジョブズはアップルが“iMovieをいかに重要な製品と考えているか”という説明に移り、この人気製品も新しくしたことを発表した。新バージョンの“iMovie2”は、定評のあったiMovieの使いやすさをさらに向上させ、オーディオ編集機能を大幅強化し、さらに新しいエフェクト(特殊効果)もたくさん追加したという。 ジョブズは壇の左袖に用意された液晶モニターの前に座ると、iMovie 2のデモを始めた。

iMovie 2のデモ画面。ジョブズ自らデモを行なった

iMovie2は全体的にMac OS Xに似たデザインに変更されていた。ジョブズは続いて音だけを残して他の映像に切りかえる機能やクリップを逆再生するエフェクト、早送りやスローモーションで再生する機能、セピア調に変える機能などをステップを追いながらじっくり時間をかけて紹介した。ビデオに登場していたのは、iMovie開発チームメンバーの2人の子供だった。ジョブズはこれをあたかも自分の親に宛てた本当のビデオレターのようにして(*)、親にあてたメッセージを添えながら編集していった。

ジョブズはこれをあたかも自分の親に宛てた本当のビデオレターのようにして*:あたかもビデオに登場する子供のこともジョブズが認知した私生児、リサの名前で呼んだ(筆者注)

長いデモを終えるとジョブズは立ち上がってこう語りだした。

「この製品は私にとって非常に重要なものだ。なぜならこの製品こそがアップルの魂を体現しているからだ。アップルの使命の1つは最速のコンピューターをつくることなのかも知れない。実際に我々はこの使命は果たしていると思う。表計算ソフトを世界一速く動かすこと。それも可能だし、やっている。でも、心の奥底では、アップルはテクノロジーとアートとの接点に立っているべきだと思っている。iMovieは我々の別の一面、クリエイティブな一面を表現したソフトだと思う。人々の創造性を支援する、このような素晴らしい製品を生み出せるアップル社のスタッフと仕事ができることを、私は非常に誇りに思っている」

  ジョブズの情熱のこもった語り口の後、場内は公演中もっとも静かな瞬間を迎え、その後、しばらく喝采が鳴りやまなかった。

「iMovie 2はすべての新しいデスクトップ機に標準添付(*)し、既にMacを持っているユーザーには8月後半から49ドルでダウンロードできるようにする(国内では9月から5800円でアップルストアにて販売)」

標準添付*:実際にはFireWireポート付きモデルのみ

だが、iMovieの話はこれで終わらなかった。

  ジョブズは続いて「作成したムービーをどうやって人々に公開するか」と切り出し、アップル社のインターネットサービス、iToolsの説明に移ったのだ。iToolsはこの講演にあわせて大幅に刷新されたが、ジョブズはこのうちインターネットストレージサービスのiDiskとHomePage機能に焦点を絞って実演を混ぜながらの解説を始めた。

  新しいHomePage作成機能で、特に観衆を驚かせたのは掲載した写真をWebブラウザー上でドラッグ&ドロップ操作で並べ替えできる点だった。

  ジョブズは先ほどiMovie 2で作成したムービーを自分のホームページに掲載すると、

「我々はただものをつくる道具を提供するだけでなく、それを人々に伝えるための手段も提供している。このエンド・ツー・エンド(端から端まで)のサポートこそが重要なのだ」と力説した。なお、ジョブズが作成したアルバムやムービーは彼のホームページ[http://homepage.mac.com/steve/]で今でも見ることができる。

長い講演はいよいよ終盤を迎えた。ジョブズはとにかく新発表の多かった今回の講演を振り返り、要旨をまとめ始めた。

「我々は今日の講演で、デュアルCPU構成が標準になった新Power Mac G4、魅力的な色と驚くべき価格を備えた新iMac、まもなく登場するMac OS X、マイクロソフトOffice、Bungie社のゲーム、iMovie 2とiTools。これは1日で紹介する内容にしてはちょっと多すぎたかも知れない。だが、実はもう1つ話したいことがあるんだ……」

場内は再び熱気で溢れた。

ついに真打登場!! 8インチのキューブ(立方体)に収まったG4マシン

ジョブズは大スクリーンにお馴染みの4つのマトリクスを映し出すと、「これは我々が2年半前に発表した製品戦略だ。我々はこのマトリクスのすべてを魅力的な製品で埋め、それぞれを頻繁に更新することで、常に新鮮で魅力的な製品を提供し続けてきた。今日、我々はこのマトリクスをさらに広げることにした。新しい製品はポータブル機ではない。新しいデスクトップモデルの製品だ。では、一体どんな製品なんだろう?」

スクリーンの映し出された2×2のマトリクスは3×2のマトリクスに置き換えられ、ノート型の行にはアップルのロゴマークが、そしてデスクトップの行には大きな“?”が映し出された。

「我々はPower Mac G4のパワーとiMacのエレガンス、静かさそして小型化テクノロジーと組み合わせ、まったく新しいクラスのマシンを生み出すことにした。新製品は強力なPower PC G4に、最大1.5GBのメモリー、最大40GBのハードディスク、モデム/イーサネット/USB/FireWireなどのポート類、AirPort……」。

ジョブズはこう語ると口の端に笑みを浮かべながら、「え、それじゃあ、ただのPower Mac G4のミッドレンジ(中堅)モデルに見えるって?」と語り、「いったい、どこが新しくて特別なんだ」と自問した。

「Power Mac G4の大きさに対して、新製品はこの大きさまで小型化されているのだ」スクリーンには4分の1ほどに縮小されたPower Mac G4が映し出された。

「この小型化により新製品は8インチのキューブ(立方体)に収まることになった。

噂はされていたものの、“G4 Cube”が登場すると場内は騒然となった

「こんなに小型化したのだから、よほど大きなファンを搭載しているんだろう?」ジョブズは自問自答を繰り返す。「いや、実は我々のエンジニアは、このわずか8インチのキューブをファンなしで冷却することに成功したのだ。つまり、新製品はほとんど音を立てずに動作するのだ」

「新製品の名前は“Power Mac G4 Cube”。だが、われわれはより親しみを込めて“G4 Cube”とも呼んでいる」

壇の奥からは驚くほど小さい白い立方体のマシンがせり出してきた。

「これは我々の歴史の中でももっとも美しい製品の1つかもしれない」ジョブズの声に力がこもる。

「この小さいボディーの中に、スロットローディング式のDVD-ROMドライブも備えている。でも、一体どこに?」ジョブズはこう自問すると、おもむろにDVDをキューブの上面に差し込んだ。

G4 Cubeはなんと本体上面にスロットローディング式DVD-ROMを備えており、あたかもトースターのようにDVDを出し入れできるのだ。

「さらに我々のエンジニアは、筐体内部へのアクセスを簡単にする手段も用意した。お見せしよう。」

ジョブズはこう語るとキューブを上下にひっくり返し、取っ手をつまんで中身をそのまま引き抜いてしまった。

シンプルなデザインによって、簡単に筐体を引き出せるG4 Cube

引き抜いた本体内部にはいくつかのむき出しの基板が層構造をなしながら埋め込まれていた。歓声はピークに達し、マイクを通してのジョブズの声すら聞こえなくなった。

ジョブズは続いてスクリーンに映し出された画像を使ってG4 Cubeの特徴をおさらいした。 「だが、これだけではない。我々はただ本体をデザインするだけに止まらず、システムとしての完成度を追求した」

スクリーンにはG4 Cubeに付属するハーマン/カードン社製(そしてアップルがデザインを担当した)透明の球型スピーカー、Pro MouseとPro Keyboardを映し出し、450MHzのG4、64MBのメモリー、20GBのハードディスク、DVD-ROM、FireWire/iMovieを備えた同製品がわずか1799ドルで発売されることを告げた。さらにアップルストアでは、500MHz G4、128MBメモリー、30GBハードディスク、DVD-ROM、FireWire/iMovieを採用したモデル(2299ドル)やBTOオプションも提供すると付け加えた。

斬新で音質に優れたハーマン/カードン社製のスピーカー

製品の発売は講演から数週間後の8月はじめに出荷を開始する。

G4 Cubeに最適のコンパニオンになるモニター

「G4 Cubeは完全なシステムだ……しかし、モニターは?」

ジョブズはこう語るとアップルがモニター製品も一新し、新たに3つのモニターを発売することを明かした。

最初に紹介されたのは17インチダイアモンドトロンを搭載し、ColorSync技術で正確な色再現もできるApple Studio Display 17インチ(499ドル)。ガラスのように非常に透明度の高い筐体を持ち、2つのUSBポートを備える。電源はコンピューターから供給される。

アップルは新モニターの発表にあわせて“Apple Display Connector”という新しいコネクターを開発した。このコネクターを使えば、モニター信号、USB信号、電源がたった1本のケーブルで供給できるのだ。

2つめは1024×768ドットの解像度を持つApple Studio Display 15インチ。好評のApple Cinema Displayを縮めたようなデザインを採用し、タッチセンサー式のスイッチでモニターばかりかMac本体の電源も操作。当然、Apple Display Connectorを使ってわずか1本のケーブルで本体と接続できる。価格は999ドル。

斬新なG4 Cubeとペアで使用できるディスプレーも発表

「これは特にG4 Cubeに最適のコンパニオンになるはずだ」とジョブズは付け加えた。

3つめのモニターはApple Cinema Display、見た目や基本機能は従来製品と同じだが、こちらも新しいApple Display Connectorを採用している。

ジョブズは業界の識者やアップルのスタッフが新製品について語るビデオを流した後、100分強に及んだ講演の新発表を1つ1つ振り返りながら講演を締めくくり始めた。

「今日の発表で製品出荷台数の75%を占める我々のデスクトップ製品はすべて新しくなった」と語った後、アップル社のスタッフを立ち上がらせると彼らに拍手を贈った。

ジョブズは最後に「今日はマウスの話で始めたので、最後にもう1つマウスの話をしようと思う」と切り出した。

「このマウスは今日発表した新製品のシンボルとも言える製品だ。今日、見せた全ての製品に標準で付いてくるのはもちろんだが、それ以上に我々がいかにしてよりよい方法を模索しているかを象徴しているからだ。(中略)この新しいマウスを1人でも多くの人に使ってもらいたいと思っている。だから、新製品を買った人だけでなく、今日この会場に集まった人々にも差し上げようと思う」

講演会場に用意されたイスの下にはカードが貼り付けてあり、退場するときにこのカードを渡せば新しいマウスがもらえるという演出が用意されていたのだ。

大量の新製品が発表された今世紀最後の“MACWORLD EXPO基調講演”は、来場者の熱狂の渦の中で幕を閉じた。

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