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情報革命で世の中すべての効率が向上する――米サンのジョン・ゲイジ氏記者会見

2000年07月19日 00時00分更新

文● 編集部 佐々木千之

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米サン・マイクロシステムズ社の黎明期からの生え抜きとして、Java関連技術の開発に携わり、現在はチーフリサーチャーを務めているジョン・ゲイジ氏が、このほど来日し、19日に記者会見を行なった。目新しい発表はなかったが、ゲイジ氏が考えるネットワーク社会の将来像などが語られた。

ゲイジ氏来日の目的は、複数のイベントやカンファレンスでの講演に加え、政府首脳との会見など多岐に渡り、「とても何々のために来日した、とは言えないほど」(日本サン・マイクロシステムズ広報)多忙を極めている。その過密スケジュールの中、1時間ほど報道関係者との、質疑応答を中心とした会見が開催された。

ジョン・ゲイジ氏は非常にリラックスした様子で、落ち着いた口調で話し始めた
ジョン・ゲイジ氏は非常にリラックスした様子で、落ち着いた口調で話し始めた



昼前に行なわれた会見に先立ち、ゲイジ氏は、首相官邸において森総理大臣や平沼通産大臣らに、米シスコシステムズ社のジョン・チェンバース(John Chambers)CEO、ソニー(株)の出井伸之会長兼CEOなど11人と、沖縄サミットの議題であるIT革命への対応について意見を述べたという。

IT革命が産業や社会に与える影響については、「東京では夏になると電力の需要がピークに達し、供給問題が起きると聞いています。この原因の1つに空調装置で使われているモーターの電力消費があげられるでしょう」と鋭く指摘した。「モーターというデバイスは、いわゆる“ダムデバイス”であり、インテリジェンスを持たないのです。しかし、今後こうしたデバイスにネットワーク機能を持ったチップが組み込まれれば、いままでよりもずっと効率的な電力の利用が可能になるはずです」と説明し、*Jiniを利用したインテリジェントデバイスや分散処理の導入によって、「すべての効率が向上する」というビジョンを語った。

Jini(ジニー):米サン・マイクロシステムズが開発した技術で、Java技術を利用し、ネットワークに接続されたコンピューターやデバイス、ソフトウェアを連携させるというもの。分散処理システムの構築に向いており、家電への組み込みも予定されている。

また、日本国内でネットワークに接続できる小型の端末としてiモード携帯電話が普及していることに触れ、「iモードのような誰でもどこでも使える携帯電話が、1年あまりで数百万台も普及したことは非常にすばらしい。サンはNTTドコモなどの会社とパートナーシップを組んでいますし、日本からこうした動きが始まったことをうれしく思っています」と述べた。



ゲイジ氏は、(株)NTTドコモが沖縄サミットに合わせて各国参加者と一部マスコミ向けに500台配布した、英語版のカラーiモード携帯電話を手にしながら、「12月にはこれらのiモード電話にJavaが搭載されると聞いています。Javaが搭載されることで、現在はある意味で固定されている携帯電話の能力が大きく広げることができるでしょう」と語った。将来、「携帯電話を使ってホテルを予約し、そしてそのホテルに行くと、私の名前と携帯電話の名前で登録されている、ということになるかも知れないですね」と、携帯電話が単なる通信端末にとどまらない発展をする上で、Javaが重要な役割を果たすという認識を示した。

ゲイジ氏に貸与された沖縄サミット限定の英語版iモード携帯電話。英語版のはずだがメニューには一部カナも表示されている
ゲイジ氏に貸与された沖縄サミット限定の英語版iモード携帯電話。英語版のはずだがメニューには一部カナも表示されている



また、ゲイジ氏は空港でのエピソードを紹介した。「列に並んでいるとき、背の高い男の人が私の顔をじっと見ているなと思っていたら、“愛しているよ”といったんです。びっくりしたんですが、彼はイヤホンマイクをして彼女と電話をしていたというわけです」と解説し、ネットワーク社会が広がり、人々が常にネットワークに接続されるようになると、人間の行動も変わってくるという例を示した。

マイクロソフトの.NET構想についてどう思うかという質問に対しては、「まずマイクロソフトの犯罪というのは、企業をつぶしたとかそういったことではありません。一番の罪は不安定なシステムを提供しているということです。年を取ってますます貴重になっていく我々の時間を盗んだと言うことが問題なのです」と、ゲイジ氏特有の言い回しで、Windowsプラットフォームをやんわりと批判した。



その上で、「マイクロソフトには頭のいい優秀な技術者がたくさんいます。ところが経営トップ陣はあまり彼らの話を聞いていませんでした。ところが、例の裁判で有罪という判決が出ました。これで、マイクロソフトを辞めた技術者もいれば、マイクロソフトに残って、よりよい会社にしようという選択をした人もいます。なによりトップ陣が裁判で忙しくなったおかげで、彼らの意見が通り始めています」

「(サンの)マクネリ会長とゲイツ氏はケンカしていますが、両社の技術者はXMLなどのネットワーク標準技術に対して同じアプローチを取っています。(.NETに関するマイクロソフトの動きは)すべての関係者にとって楽観的に見ることができる進展だと考えています」との見通しを示した。

また、Linuxについては「サンのコンピューターに出荷時からLinuxを搭載すべきかどうかという議論も社内で起こっています。いまのところ搭載派と反対派が半々です。サンの技術者はここ何年もシステムを安く供給することよりも、安定したものにするために努力してきました。Solarisの安定性と、Linuxのイノベーションによって、まったく新しいビジネスができるのではないかと思っています。これから10年たっても、SolarisもLinuxも動いているでしょう」と、SolarisとLinuxは補完する関係であることを強調した。

非常に過密なスケジュールを縫って開催された記者会見であったが、ネットワーク社会の未来に対する確かな意見と、終了後も紳士的かつにこやかに記者に応対するゲイジ氏が印象に残った。

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