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JavaScriptを利用した地下鉄料金表など、インタラクティブPDFの試みを披露!!――PDFカンファレンスレポートより

2000年07月17日 00時00分更新

文● 山木大志

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13日、14日の2日間にわたり、PDFの活用に関する講演、報告などを行なう“PDFカンファレンス”が開催された。本稿では13日のセミナーの1つ、“インタラクティブPDF――フォームを利用したPDF”についてお伝えする。

JavaScriptを利用した地下鉄料金表

PDFは汎用ドキュメント、つまり、どんなプラットフォームの上でも開けるドキュメントとしての機能のほかに、大きな特徴を備えている。それは、インタラクティブなインターフェースを追加できることである。汎用ドキュメントとしての活用方法はかなり開拓されてきているものの、インタラクティブドキュメントとしての機能は、マニュアルにも詳しく説明されていないこともあって、あまり活用されていない。

PDFカンファレンスで13日に開催されたセミナー“インタラクティブPDF”では、インタラクティブ機能のベースとなる“フォーム”の基本機能から、その応用利用、さらにJavaScript(*)を利用したきめこまかい制御までの実演と解説があった。

講師は、福島プリント(株)デジタルサービス部の平岡良朗氏とデザイン・ウィズ・ハートの杉山久仁彦氏。平岡氏は、フォームの基礎的な構造からその利用の実際までを説明した。

(*)Acrobatには、JavaScript環境が搭載されている。JavaScriptは本来HTML上で動作するスクリプト言語で、主要なWebブラウザーにはそのインタプリタが搭載されている。Acrobatのそれも基本的にはそれらと同じだが、Acrobatの機能を利用するためにオブジェクトが拡張されている

福島プリント(株)デジタルサービス部、平岡良朗氏
福島プリント(株)デジタルサービス部、平岡良朗氏



杉村克己氏。平岡氏の紹介したサンプルの作成に協力し、セミナーではJavaScriptの説明などを行なった。PDFフリークの間では“おすぎ”の愛称で著名
杉村克己氏。平岡氏の紹介したサンプルの作成に協力し、セミナーではJavaScriptの説明などを行なった。PDFフリークの間では“おすぎ”の愛称で著名



平岡氏はまず、フォーム機能は、7つのフィールドの種類と8つの設定を組み合わせて使うことを説明(表参照)。ついで、フィールドごとの使い方を実演した。たとえば、“ボタン”を設定し、これに特定のファイルをリンクさせておくと、クリックさせることによってリンクファイルを表示させることができる。

「これによって、インタラクティブなカタログを作ることができます」(平岡氏)。さらに、4種類のより複雑なモデルを実演した。そのうち3つの概略を下記に紹介する。

表.フィールドの種類と設定



種類\設定


表示方法


オプション


アクション


フォーマット


検証


計算


選択の
変更


署名


テキスト












   


ボタン






         


ラジオボタン






         


コンボボックス












   


チェックボックス






         


リストボックス






     

 


署名


 

       



【用語の説明】 “種類”欄 テキスト…文字、数値入力欄を設定する ボタン…マウスの操作に応じて何らかのアクションを起こす ラジオボタン…排他制御のためのボタン。機能は“ボタン”と同じだが、1つのボタンをオンにすると、他のボタンが選ばれていても、他のボタンは自動的にオフになる コンボボックス…下記の“リストボックス”の機能に加えて、文字列の入力も可能にしたもの チェックボックス…あらかじめ指定した欄(ボックス)に、マウスクリックでチェックマークを入れる リストボックス…複数の選択項目から1つを選ぶようにしたもの 署名…Acroabtの“Self-Sign”署名(セキュリティー機能)を利用できる欄を作成する。 “設定”欄 表示方法…文字サイズ、画面サイズなどを指定する オプション…“種類”で“テキスト”を選んだ場合に「ここに名前を入力してください」などとデフォルトで表示する文字列を指定する、あるいは“リストボックス”で選択項目を入力するなど、“種類”によって機能が異なる アクション…ムービーの再生など11種類のAcrobatの動作が利用できるほか、JavaScriptを記述することによって、広範な動作を指定できる フォーマット…入力できる数値、文字列などの定義を行なう 検証…入力された数値などが許容範囲内にあるかなどの検証を行なう 計算…計算を行なう。デフォルトでは加算、合計、平均、最小値、最大値5種類が選択できるが、JavaScriptを使えばより複雑な計算も可能 選択の変更…これは“種類”で“リストボックス”を選択した場合のみ利用できる機能。項目を選択したときにJavaScriptで動作を指定できる 署名…これは“種類”で“署名”を選択した場合のみに利用できる機能。署名の変更を禁ずる

クリックすると拡大されますこの伝票には算式が埋め込まれている。各欄に数字を記入し、“計算”ボタンをクリックすると合計計算が行なわれ、金額が表示される



このカレンダーはPDFで作成されている。月を示す数字はユーザーが書き込みができるようになっており、入力された数字(月)によって、下欄の月カレンダーが該当月のものに変化する。カレンダーのデータはPDFに内蔵され、JavaScriptが入力された月数字に応じて、必要な月のデータを呼び出すようになっているこのカレンダーはPDFで作成されている。月を示す数字はユーザーが書き込みができるようになっており、入力された数字(月)によって、下欄の月カレンダーが該当月のものに変化する。カレンダーのデータはPDFに内蔵され、JavaScriptが入力された月数字に応じて、必要な月のデータを呼び出すようになっている





クリックすると拡大されます
これは札幌市の地下鉄地図である。地図上で利用できる料金表になっている。駅名をクリックすると、クリックした駅から他のすべて駅までの料金が表示される。料金はデータベース化されており、JavaScriptで呼び出される。また、時刻表もメニューとして表示される



マルチメディア・オーサリングツールとしてのAcrobat

デザインウィズハートの杉山氏は、「Acrobatのリンクとフォームの機能を利用すれば、オーサリングツールとしても使えます。しかし、マルチメディア・オーサリングツールの定番、“Macromedia Director”などに比べると非力であり、さらにその使い方についての情報が乏しい」などの問題点を指摘した。  

デザイン・ウィズ・ハート、杉山久仁彦氏
デザイン・ウィズ・ハート、杉山久仁彦氏



作成上のテクニックでは、インタラクティブドキュメントで多用されるボタンについて「標準機能でも一応のものができるので活用したい。具体的には“表示方法”で“ベベル”を選ぶと、一般的なボタンのデザインになります」

インタラクティブ・コンテンツの作成上の重要なムービーについては、「要するにQuickTimeムービーをうまく作ることが大切。作成に当たっては、DirectorやWebムービー作成ツール、Flashで作成されたものを参考にできます」

杉山氏がプレゼンテーションで使ったPDFの一部。ムービーの使い方を説明している
杉山氏がプレゼンテーションで使ったPDFの一部。ムービーの使い方を説明している



Acrobatのダイアログ。「編集」メニュー→「フィールドのプロパティ」で「種類」を「ボタン」とした場合に表示される。「表示方法」-「境界線」-「スタイル」で「ベベル」を選ぶ
Acrobatのダイアログ。「編集」メニュー→「フィールドのプロパティ」で「種類」を「ボタン」とした場合に表示される。「表示方法」-「境界線」-「スタイル」で「ベベル」を選ぶ





ベベルの例。左図が初期状態で、手前に膨らんだ感じになっている。右図がクリックしたときの状態で、後方にへこむ感じになる
ベベルの例。左図が初期状態で、手前に膨らんだ感じになっている。右図がクリックしたときの状態で、後方にへこむ感じになる



杉山氏も語ったとおり、Acrobatのフォーム機能とそのうえで機能するJavaScriptに関しては情報が少ない。公式なものとしては、Acrobat 4.0に付属する“Acrobat Forms JavaScript Object Specification”(英文)のみである。このドキュメントの日本語化が行なわれることがまず第一歩だろう。フォーム、JavaScriptについては、前述杉村氏が以下のURLで詳しい情報を提供している。興味のある方は参照されたい。

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