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エスター・ダイソン氏、「ネットの双方向性は社会を変える」――ニュービジネス協議会が講演会を開催

2000年07月13日 00時00分更新

文● 編集部 小林伸也

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(社)ニュービジネス協議会は13日、米ネット業界のカリスマ的オピニオンリーダーであるエスター・ダイソン(Esther Dyson)氏を招き、講演会“デジタル時代の未来:エスター・ダイソン女史と語る”を都内で開いた。ダイソン氏は、コンピューター業界のニュースレター発行人やICANN(Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)会長といったさまざまな肩書きを持ち、米国IT業界の発展を主導してきた。ダイソン氏は「双方向のネットで従来の社会が変わる」「ネットに政府の過度な規制は不必要」などと持論を展開、出席したベンチャー企業関係者らが聞き入っていた。

 エスター・ダイソン氏。父は“ダイソンスフィア”やオリオン計画で知られる物理学者のフリーマン・ダイソン氏。兄弟にはカヌーに乗って悠々自適の生活を送るナチュラリストのジョージ・ダイソン氏がいる エスター・ダイソン氏。父は“ダイソンスフィア”やオリオン計画で知られる物理学者のフリーマン・ダイソン氏。兄弟にはカヌーに乗って悠々自適の生活を送るナチュラリストのジョージ・ダイソン氏がいる



ダイソン氏は米経済誌フォーブズの記者を経て、ソフトウェア業界担当の証券アナリスト、IT関連コンサルティング会社の経営者を務め、現在はコンピューター業界専門のニュースレター“Release 1.0”を発行している。IT関連の米政府委員会のメンバーも務めた。今回は横浜で開かれるICANNの会合に出席するために来日した。

ダイソン氏は講演で、「テレビなどの従来のメディアは一方的に情報を送りつけるだけの“プロパガンダ”だった。しかしインターネットが普及し、誰でも情報を発信したりメールで質問したりできるようになった」と述べ、従来メディアや社会における情報の送り手と受け手の力関係が変わりつつあることを指摘した。

ただ誰でも情報を送れる分、「何が本当の情報か分からなくなっている面もある」とネットの負の側面にも言及しながら、「米国では権威に対して議論を挑む文化があり、ネットはこの文化にうまく合致した。日本にはどんな文化があって、ネットはどう社会を変えるのだろうか」と会場に問題を投げ返した。

 司会進行を務めたエグゼクネット社長の島本一道氏 司会進行を務めたエグゼクネット社長の島本一道氏



インターネットにおける政府の役割については、「民間のやりたいようにやらせればいい。官僚はせっかくの能力を規制のために使っている。官僚をやめて能力を新ビジネスに使った方がいい」と痛烈。インターネットは民間に任せるべきとの持論を展開した。

さらに“IT革命”が米国で始まった理由については、「ヨーロッパや日本と比べて、新しい実験を受け入れ、失敗にも寛容な文化があるから」と国民性の面から解説。赤字続きの“アマゾンドットコム”のように、ネット経済の危機が取りざたされているが、「ネット経済は継続的に成長する。仮にアマゾンが破たんしたとしても、それは一企業の問題であってネットの問題ではない」と主張した。その上で「仮にアマゾンが失敗したとしても、失敗から学ぶことは多い。みなさんもどんどん間違いを犯し、新しい発見につなげてください」と会場のベンチャー経営者を勇気づけた。

 講演後には日本のネット関係者が参加してパネルディスカッションも行なわれた。右からイーベイジャパン(株)社長の大河原愛子氏、ニフティ(株)常務の山川隆氏、(株)ファイテック研究所会長の松島利幸氏、(株)ダンクソフト代表取締役の星野晃一郎氏
講演後には日本のネット関係者が参加してパネルディスカッションも行なわれた。右からイーベイジャパン(株)社長の大河原愛子氏、ニフティ(株)常務の山川隆氏、(株)ファイテック研究所会長の松島利幸氏、(株)ダンクソフト代表取締役の星野晃一郎氏

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