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【特別対談“インターネットとNPO活動” Vol.3】インターネットが生み出す新たな地域コミュニティーとは?

2000年07月11日 00時00分更新

文● 構成/編集 若菜麻里、編集部 井上猛雄

先ごろ来日した、米国サンフランシスコのNPO(非営利団体)--タイズ財団会長のドラモント・パイク氏。タイズ財団は、“カネ、マネジメント、場所、情報”の4つの側面からNPOを支援するインキュベーターである。米国サイドでパイク氏の来日をコーディネイトした在サンフランシスコのジャーナリスト、岡部一明氏によると、“NPOはアメリカ市民社会の活力の源”であり、パイク氏は“NPOインフラづくりの旗手”である。

パイク氏の講演を聴いて、資金集めの方法も、マネジメントも、場所も、インターネットの活用方法も、その卓越した手法に、「日本と米国は事情が違うので真似できない」と、敷居の高さを感じた日本のNPO関係者は少なくなかったようだ。

では、“日米の事情の違い”とは何なのか。米国でNPOにフォーカスして取材活動をしている岡部氏と、市民団体JCA-NETで常任理事を務めるジャーナリストの福冨忠和氏を迎えてお届けする特別対談最終回では、“地域活性化とインターネット”をテーマとして、両氏に日米間の差異について掘り下げて語っていただいた。

アメリカでは政府ではなく民間が主導で問題を解決

--今回はインターネット時代のコミュニティーのあり方についてお話いただきたいと思います。最近、地域交換取引制度(LETS)などが世界で流行っていて、アメリカではたくさんの地域が導入していると聞きます。日本でも注目されはじめており、地域通貨の導入が経済にさまざまな変化をもたらすと言われていますが、どのようにお考えでしょうか?

岡部「アメリカ国内では何百という地域で、また全世界では、1000、2000という地域で、地域通貨が用いられているようです。でもそれはまだメインストリームではなく、あくまでもそれぞれの地域で小さな試みとして始まっている段階です。20年くらい前からそういう試みはあるので、正直なところアメリカではそんなに大きな話題ではありません。ですが、ここ2、3年ぐらいで日本からの視察や取材が増えました」

福冨「でも日本では、クーポン型のマネーは流行らないという見方もあります。クーポン型マネーはどんなに信頼度を上げても(通常の)お金と等価にはならない。そして、いかがわしい人間には地域マネーを配らないということもできるし、逆に僕みたいないかがわしい人間がエコマネーみたいなものを地域に大量に持ち込んで物を買いあさったりすると、大問題になったりするわけでしょ(笑)」

岡部「アメリカでは、地域通貨というのは経済全体の流れに影響されないユニークな地域経済をつくろうという試みです。アメリカは市民活動やNPOなどによって、地域あるいは自分たちの身近なところで新しい試みをする社会なんです。その活気が今のアメリカ経済を支えていて、その試みの中のひとつが地域通貨だと思います」

「問題が起こっても解決しようという試みが常にある。それがアメリカの魅力。多様な試みがどんどん生まれてくる。つぶれていくものもあるけれど、その活力が総合的な結果として経済活力につながっている部分はありますよね。これに関しては日本も学べるのではないかと」

バークレーで利用されている地域貨幣“ブレッド”。お札にはパンの絵が描かれている。通貨単位はアワー。1アワーは12ドルの価値を持つバークレーで利用されている地域貨幣“ブレッド”。お札にはパンの絵が描かれている。通貨単位はアワー。1アワーは12ドルの価値を持つ



--日本では、通産省など省庁主導型で、こういった実験をやるケースが多い気がします

岡部「そうですね。そして、あまりうまくいかないことが多いですね。アメリカでもゴアやクリントンが情報ハイウェイ構想を打ち出しましたが、彼らは民主党系ですから政策としてある程度やっていこうという意識が強い方なんです」

「でも、“言い出すのが一番遅いのが政府だ”と言う人はずいぶんいます。政府の役割は情報弱者をなくすための活動をすることであって、産業を振興させるのは民間の役割だと。アメリカでは問題解決のためには政府の規制ではなく、民間の互助努力で解決するという方法をとります」

福冨「そうしないと停滞しますよね。富山県の山田村*の例などは『ネットワークでコミュニティを活性化させる』っていうと一見聞こえがいいですけど、それは逆にドメスティックなコミュニティーを壊すこともある。それがあまり理解されていないかもしれない。地域でインターネットを使ってなにかしようとしても、なかなかうまくいってないのが現状です」

*山田村:スキーといで湯の山村として地域おこしに尽力してきた村だったが、'96年に、希望する全ての世帯にパソコンを配布、村の内外を電子ネットワークで結ぶ“電脳村構想”を実施。地域情報化の社会実験地として注目を浴び、“情報化に挑戦する先進地域”として一躍有名になった。山田村には情報化による地域おこしに興味を持った、学生などのボランティアがあいついで来訪し、“パソコンお助け隊”や“山田村を勝手に応援する会”など様々な支援グループが地元住民と連携して地域をさらに盛り立てている。山村に未来をみる情報ユートピアとして国土庁長官賞を受賞。http://www.vill.yamada.toyama.jp/

 

福冨忠和氏。多数のコラムや書籍の執筆のほか、メディアの企画・制作から、大学講師、各種の委員、NGOメンバーまで、広範な活動を展開。その対象も、メディアコンテスト、デジタル技術、ネット規制問題、アート、ECまでに及ぶ。総じてデジタルとリアルワールドのつなぎ目が主な関心であり、ワークフィールドとなっている。NPO活動としては、市民団体JCA-NETで常任理事も務めている。NHK趣味悠々“インターネット入門”の講師としても活躍。ASCII24ではコラム“電子麺 e-noodle”を連載中
福冨忠和氏。多数のコラムや書籍の執筆のほか、メディアの企画・制作から、大学講師、各種の委員、NGOメンバーまで、広範な活動を展開。その対象も、メディアコンテスト、デジタル技術、ネット規制問題、アート、ECまでに及ぶ。総じてデジタルとリアルワールドのつなぎ目が主な関心であり、ワークフィールドとなっている。NPO活動としては、市民団体JCA-NETで常任理事も務めている。NHK趣味悠々“インターネット入門”の講師としても活躍。ASCII24ではコラム“電子麺 e-noodle”を連載中



地域の活性化とインターネット

--インターネットには地域を壊して、ネット上で新しいコミュニティーを作るといった役割については、どのようにお考えでしょうか?

福冨「『地域活性化には、インターネットが効果がある』と言った人がいましたが、それはどうかなと思います。公共インフラとしてインターネットは重要ですが、かえって地域のコミュニティー、例えば仕事や結婚や交友関係が壊れていく気がします」

岡部「むしろ、地域社会を越えてグローバル化するという側面がありますよね」

「アメリカにも地域振興にインターネットを、という考え方はあります。シリコンバレーは、大学を中心として世界で一番成功した地域開発の例かもしれません。かつてシリコンバレーでは、スタンフォードの学生がアメリカ東部にみんな就職してしまい、地元に残らなかった。それで大学側は卒業生が地元で起業することを支援した。その最初の例がヒューレットパッカードなんです」

「大学を中心に技術開発で地域産業を興していくうちに、日本や中国、アジアの国々など、全世界から人が集まるようになりました。今、シリコンバレーで新しくビジネスを興す人の約半分が中国系やインド系の人です」

岡部一明氏氏。米サンフランシスコ在住のフリージャーナリスト。'50年栃木県生まれ。'79年カリフォルニア大学自然資源保全課卒業。各種の市民団体勤務を経て独立。著書に『パソコン市民ネットワーク』(技術と人間)、『インターネット市民革命』(御茶の水書房)、『社会が育てる市民運動-アメリカのNPO制度』(社会新報ブックレット)、『多民族社会の到来』(御茶の水書房)、『日系アメリカ人:強制収容から戦後補償へ』(岩波ブックレット)などがある
岡部一明氏氏。米サンフランシスコ在住のフリージャーナリスト。'50年栃木県生まれ。'79年カリフォルニア大学自然資源保全課卒業。各種の市民団体勤務を経て独立。著書に『パソコン市民ネットワーク』(技術と人間)、『インターネット市民革命』(御茶の水書房)、『社会が育てる市民運動-アメリカのNPO制度』(社会新報ブックレット)、『多民族社会の到来』(御茶の水書房)、『日系アメリカ人:強制収容から戦後補償へ』(岩波ブックレット)などがある



福冨「シリコンバレーは、ひと昔前はぶどうと牛以外に産業がないという土地でしたよね? そういう地形的な問題があると思います。例えば大分県はどこに行くにも山を越えなければならない。そんな土地だから、インターネットとを活用できるというのはあります。もともと他の産業があれば、わざわざ新しいことはやらないですから」

岡部「そのとおりですが、シリコンバレーはそんなに辺鄙ではないです(笑)」

福冨「でもシリコンバレーは、'60年代以降、若者が戦争から戻ってきても帰る家がないからといって、スタンフォード大学あたりでボヘミアンクォーターができたり、アーティスト村のようなものができたり、退役軍人病院ではLSDが広まっちゃうとか……」

岡部「そういうリベラルさや、カウンターカルチャー的な土壌はありますね」

福冨「ええ、そういう土壌的なことです。カウンターカルチャーに限らず、何が入ってきても平気っていう土壌。'60年代は基地とか軍港しかなかったわけですから」

岡部「そうですね。その他の地域、例えばシリコンプレーンやシリコンアレイでもアメリカではうまくいっています。アメリカは20年前は財政赤字で、失業率が高く、犯罪者も多かった。今はまるで逆で、財政は黒字、失業率は日本より良いくらいです」

福冨「それが情報経済の結果で、日米の情報格差だっていう言い方もありますよね」

岡部「そうですね。アメリカは今はバブルで、以前の日本のように、いずれはじけるという見方をする日本人が結構多い。でもアメリカの活況には基礎がある。単なるバブルでなく、実際に技術開発がどんどん進んでいるし、ネットワークを基盤に全く新しい産業が生まれてきています。アメリカの好景気は単なる周期的なバブルという生易しいものではないと思います」

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